4話 最強彼女登場……なのか?
「ぐえっ!」
多分、踏み潰してしまったカエルの声だ。
ここは天国か?
それとも地獄か?
「いい加減、起きんかーい!!」
ドスッ!
答えは地獄でした。
鳩尾の痛みに目を開けると、そこには荒野が広がっていた。
何もない。果てしなく殺風景。
大きいクレーターがあるようにも見えるが、きっと気のせいだ。ここは荒野なのだから、そうに違いない。
「ちょっと、さっさと名前付けてよね」
「は?」
と、さっきから乱暴だったりの彼女を見る。
セルミーかケルミーの兵士…………ではない、な。
茶髪のポニーテール。ロングコートで、ミニスカ(だけど、スパッツ着用)な服装。なのに、手には重そうな大きな剣。
ふと、以前読んだ小説のヒロインが浮かんだ。
そういえば、こんな服装の女の子が挿絵にあったな、と。
「は? じゃないわよ。名前よ、な・ま・え!
呼び出したアンタが名づけてくれないと、この世界に固定されないじゃない!」
ずずっと詰め寄られ、勢いに圧される。
呼び出した?
名前?
彼女はじっと睨みつけている。
状況が飲み込めず説明を求めようにも、彼女がこんな調子じゃ話してはくれないだろう。
とりあえず、要望通り名前を考えてみる。
「えーっと…………は、春歌。春に歌うで、春歌」
オレが夏芽。彼が冬生。
その間、春か秋かの二つだが、春が相応しいと思った。
冬を生きた種子は、春の歌で目覚め、夏に芽吹く。
「……ま、いいわ。わたしは春歌。アンタの想像から生まれた存在よ」
「は?」
「アンタはそれしか言えないのかい。まあ、確かに……アンタの貧弱な魔力じゃ、人一人どころか銃一丁がやっとよね。
わたしが現れたのは、偶然の産物。ようは、火事場のバカ力よ」
「はあ……」
名づけた途端、お喋りになった。
小説のヒロインはこんな性格ではなかった。が、嫌いではないタイプだ。
「ってか、冬生は?」
「ん? ああ、あの最凶魔法使いね。冬生って言うんだ。わたしにアンタの面倒押し付けて、兵士たちに説教してる。右手に魔力集わせて」
「それ……脅すって言わないか?」
「言わない言わない」
笑ってパタパタと手を振る。
そんな彼女は、冬生と同種の存在なのかもしれない。
「――ところでアンタ。力って今どれくらいまでいける?」
「唐突だな。
どんくらいって…………………………………………………………………………っつーか、ホントに銃一丁しか出ないぞ?!」
「じゃあ、祝☆弱体化ね」
「ね、じゃないだろーが!! 何でだ?!」
「多分、火事場のバカ力のせいよ。能力以上を出したから、負担と言うか代償が弱体化なのね。
喜べ。アンタがピンチに陥れば陥るほど、バカ力を発揮し続ければ弱体化の一方よ!」
「喜べるかーーー!!」
ただでさえ体力面で最弱なのに、その上予想外の力を出せば弱体化だと?!
回数制限のつけられた武器か何かか。
本格的に役立たずの道を歩み始めたらしい。
城を破壊した頃が、酷く懐かしかった。
「だーいじょーぶよ。不本意だけど、わたしが守ってあげるから」
「…………オレも不本意だ」
どこぞのヒロインか、オレは。