第二話 ”かんばん”や”え”
「まただ」
轟く音がピヨに聞こえたのは、その日だけで5回目だった。
あの血の様に赤い夕焼けを見た後、5匹は身を隠すように木の洞で寝た。何か怖いものが近くにいると思うと、ピヨも他の4匹もなかなか寝ることのできない夜だった。それから起きて、もうこの森で3日目の朝を迎えていた。
「この森にはいってからじゃない?」
ふと、アデリーがピヨへ言う。ピヨ達について行きながら、後ろでずっと彼女は考え込んでいたのだ。
「確かに。かんばん、と関係あるのかな?」
ルヴナンが振り向いて足を止め、頷いて考えた後言った。
「急に止まらないでよ」
つられて止まったレアールが、怪訝そうな顔でルヴナンに突っかかった。
「この音、お腹すいちゃうよ~~」
ポポが緊張感でやせた気分なのか、目を細めてぼそぼそと言った。
「本当に縮みそうだよね。ピヨ、このままだとこの森で気苦労が耐えない気がする。一回出た方が良いんじゃないかな?」
からかい半分、真面目半分で、レアールはピヨへ言う。
ピヨはみんなの意見を聞いて考え込んだ。
ここに来たのは、自由の谷の情報を亀のおじさんから聞いたからだった。老年で何年間生きているか分からない亀のおじさんは、ピヨ達に”かんばん”とか”え”の話をし、それが自由の谷の目印であることを教えてくれた。
しかし、まあ、ピヨにとってはその”かんばん”や”え”が具体的にどんなものかはわからなかった。ちんぷんかんぷんでぷんぷん怒りたくもあったのだが。とりあえず、ルヴナンもうなずいていたものだから、納得した気分で進むことにしたのだ。
そんなこんなで、その”かんばん”や”え”があるのが、この広葉樹の森らしく、ピヨ達は入ってからそれを探し回っていた。
そして、入ってから2日目に、恐ろしい轟く音を聞いたのだ。
「うん、そうだ。一回戻ろうか」
ピヨは帰ることを決定した。
それを聞いて、ホッとする息をつく他4匹がいた。みんな緊張していたのだ。
「時間はたっぷりあるしね」
レアールがひょうひょうと楽し気に言う。
「川でおさかなとってよ~~」
ポポが嬉しそうに、アデリーに頼み込んだ。
「ふぅー、また潜らないといけないのね」
やれやれとアデリーが笑っていう。
その全員が安心しきった様子をみて、ルヴナンが先を行こうと方向を変えた。
しかし、全員が踵を返した瞬間。
ガサガサガサッとピヨの後ろで、大きな音がしたのだった。




