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【完結】今日から神様。〜神の指で世界繁栄実況中!〜  作者: 遠野 周


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9/11

ただいま、上から呼び戻されました

 その夜、空がひときわ明るかった。

 星ではない。もっと人工的な、冷たい光。

 わたしはすぐに気づいた。――呼ばれている。


 《通知:新任神プロトコル・β終了。お疲れさまでした》


 ……え?

 “お疲れさまでした”?

 いや、まだ繁栄91%ですけど?


 《世界シミュレーション結果:安定化確認。データ収集完了》

 《管理サーバーへ帰還してください》


 え、サーバー? 帰還?

 まさか――わたし、そういう仕組みだったの?


 光が降ってくる。

 空の上から、まっすぐに。

 世界が白く染まり、データのような粒子がわたしの体を包む。


 ああ、温かい。けれど、どこか懐かしい。

 目を閉じると、聞き慣れた声がした。


 光の層の中に、見覚えのある音がした。

 カチ、カチ、とキーボードを打つ音。


 《ようこそ、神管理センターへ。あなたの勤務は優秀でした》


 ああ、この“声”の形、知ってる。

 たぶん、わたしがかつて人間だったころに使っていた言葉だ。

 本当はこんな機械なんてないのかもしれない。

 でも、わたしの脳が、“理解できるように”翻訳してるだけ。


 神様の頭の中って、案外アナログなんです。


 私にとっては、無数の光のモニターが重なる空間。

 いくつもの神が、データとして浮かんでいる。

 わたしと同じように“徳を積みすぎた元人間”たち。

 それぞれが、小さな世界を担当しているらしい。


 《あなたの世界:第367区。評価:A−》

 《特徴:情緒的干渉率高。奇跡発動回数:過多。信仰再起度:極めて良好》


 ……なんか、褒められてるのか怒られてるのかわからない。

 でも、Aマイナスか。がんばったほうかな。


「えっと、わたし、どうすればいいんですか?」


 《次のテスト環境への派遣が決定しています》

 《より高度な世界での管理業務をお願いします》


 ……あの、すみません。

 “派遣”って、神様の扱い、軽くないですか?


 《では、次の世界の仕様を説明します》

 《初期設定:惑星スケール/知的生命体2名/環境難易度:やや過酷》


 あっ。

 それ、知ってる。

 最初の世界と、まったく同じ条件。


「ねえ、これ……ループしてません?」

 《学習型アルゴリズムのため、同条件テストが最適です》

 ……ですよね。


 思わずため息が出た。

 でも、ふと下を見ると、さっきまでいた世界が見える。

 草原の上で、あの少女が風に向かって手を振っていた。

 ――「ねえ神様、見ててね!」


 ……うん。ちゃんと見てるよ。

 だから今度は、もう少し上手にやるね。


 《次の転送を開始します。三、二、一……》


 光が強くなる。

 景色が溶けて、色と音が混ざる。

 でも、怖くなかった。

 だって、今度は知っている。

 “世界は壊れても、祈りは残る”ってことを。


 《転送完了。新任世界へようこそ》


 わたしはそっと目を開けた。

 そこには――また、小さな土地が広がっていた。

 山が三つ。川が一本。森がちょこっと。

 ……デジャヴ。


 そして、そこに立つ二人。

 男の人と、女の人。

 裸足で、木の葉をまとっている。


 マニュアルがぽん、と目の前に浮かんだ。

 《ミッション:この二人で子孫繁栄、村を作り、国を興そう》


 ……また、これかぁ。

 でも、今度は押し付けられたとは思わない。

 だって、あの世界で学んだから。


 “神の仕事は、救うことじゃない。見守ることだ。”


「ようこそ、二人とも。今日からよろしくね」


 わたしは指を鳴らした。

 風が吹き、花が一輪、咲いた。

 それはあの白い花――聖涙花。


 新しい世界の始まりの印。

 神は笑って、静かに風へ溶けた。


 ――世界の繁栄、0%(再起動)です。

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