表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】今日から神様。〜神の指で世界繁栄実況中!〜  作者: 遠野 周


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/11

しゃべるのやめてみた。案外うまくいってる。

 ――音が消えた。

 嵐のあと、世界は嘘みたいに静かでした。

 風の音も、祈りの声も、もう聞こえない。


 わたしは空の上で膝を抱えていました。

 世界は半分、水と泥に沈み、村の痕跡はほとんど消えていた。

 それでも、煙がひとすじ立っている。

 生き残った人たちが、火を焚いていた。


「神様……」

 その声は、もう叫びではなく、呟きのようだった。

 悲しみも、恐れも混ざっていない。

 ただ、祈るという習慣だけがそこに残っている。


 わたしは答えようとしたけれど――やめた。


 《奇跡発動確認:天候調整? はい/いいえ》

 ……いいえ。


 もう、わたしは何も触らない。

 助けることが、時に壊すことになると知ったから。

 奇跡を止めた神は、ほとんど無力。

 けれど、初めて“人の時間”を感じるようになった。


 夜。

 生き残った家族たちが、小さな火を囲んでいます。

「昔、神様が涙を流したんだって」

「その花がまだ、川の底に咲いてるらしいよ」

「じゃあ、きっと怒ってないね」


 そう。怒ってなんかいないよ。

 泣いただけ。ただ、悲しかっただけ。


 マップを拡大すると、あちこちに小さな光。

 それは焚き火ではなく、村の跡で生まれた“種”。

 荒れた土地から、緑がぽつぽつ芽吹いていた。


 《自律再生プログラム起動》

 《自然環境:回復中》


 人が手放した場所を、自然が静かに取り戻していく。

 人の声が減るほど、世界の音が増えていく。

 虫の声、風の音、土の息。


 ……ああ、これ、前世でも聞いた音だ。

 夏の夕方、窓を開けたときの、あの静けさ。

 なんにもしてないのに、世界がちゃんと回っている感じ。


 ――神の沈黙は、罰じゃない。

 人が立ち上がるための、余白なんだ。


 そう気づいたとき、胸の奥が少しだけ温かくなった。

 信仰の味が、また“甘い”に戻った気がした。


 《信仰値+8(静寂信仰)》

 ……あ、こんな項目あったんだ。


 日が経つごとに、人々は小さな集落を作り始めた。

 壊れた神殿の石を積み直して、今度は中央を空けた。

「神様はここにはいない。でも、見てくれてる」

 ――すごい。まさか、“不在の祭壇”を作るなんて。


 誰もわたしを形にしない。

 誰も、願いを取引にしない。

 ただ「ありがとう」を、風に乗せるだけ。


 《文明ランク:6(再生期)》

 《人類自律進行度:21%》


 ……あ、上がってる。

 わたし、何もしてないのに。

 むしろ“何もしなかった”からこそ、上がったのかもしれない。


 夜、ひとりの老人が星を見上げてつぶやいた。

「神様は、遠くへ行ったんじゃなくて、見守ってくださってるんだろう」

 それを聞いていた子どもが、笑って言った。

「じゃあ、神様、ちゃんと見ててね!」


 うん。見てるよ。

 ちゃんと。

 わたしは、その声を聞きながら、久しぶりに笑った。


 《システムメッセージ:世界安定率73%》

 《呪詛レベル:鎮静化》


 静かな夜。

 奇跡は止まり、祈りも小さくなった。

 けれど、この世界の呼吸がようやく穏やかになった。


 神、今日も奇跡を封印中。

 ――世界の繁栄、21%です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ