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【完結】今日から神様。〜神の指で世界繁栄実況中!〜  作者: 遠野 周


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2/11

目を離すとすぐに死ぬ

世界、静かです。

 夜明け。空がうす桃色になって、風がそよそよ吹いています。

 火のそばで寄り添って眠る二人。アリオスとリネア。

 見てるだけで、なんか幸せ。ほんわかしますね。


 でも、問題がひとつ。

 ……食料が、ない。


 果実は昨日全部、供物にされてしまいました。

 いや、気持ちはうれしかったんですけど。あれ、あなたたちの晩ごはんでもあったのでは。


 《環境メモ:現在、狩猟・採集チュートリアル段階です》

 あ、はい。チュートリアルね。なるほど。

 でも、この辺、草原と沼地ばかりで動物いないんですよ。どうすんのこれ。


 アリオスが立ち上がりました。木の枝を拾って、先を尖らせています。

 おお、槍作った。えらい! 原始人、優秀!

 「神様、見ててください」

 ……あ、しゃべった。ちょっと感動。


 リネアは後ろで祈っています。

 「アリオス、気をつけて」

 うんうん、夫婦っぽいなぁ。かわいい。

 ……いや、まだ夫婦じゃないけど。いや、その、初期ペアだからいずれは、ね。


 アリオス、森へ。

 リネア、手を合わせて祈る。

 わたしは雲の上から、そっと見守ります。


 ……三十分後。


 《ログ:捕食者イベント発生》


 えっ。

 やな予感。

 マップを拡大すると――いました。でっかい狼みたいなの。

 アリオス、全力で走ってる! やめてー! そっちは沼ーっ!


 ――ばしゃ。


 ……沈みました。

沈んでいきました。

 え、ちょっと待って、また!? まだ二日目だよ!?


 《死亡確認:アリオス》


 神、頭を抱える。

 ほんとごめん。見守るの、遅れた。

 リネア、崩れ落ちる。泣いてる。叫んでる。

 ごめん……ほんとごめん……。


 ――だがここで学んだ。

 「祈り」は、悲しみの中で一番強く光る。


 リネアの祈りが空を貫いてくる。

 信仰値、ドカーン。

 《信仰値+48》

 え、48!? これ、何日分!?

 泣かせちゃってるのに、ポイント入るの、なんか罪悪感すごい。


 でも……助けられるかもしれない。

 また、復活のボタンを見つめて、わたしは指を伸ばした。


 《注意:死者の蘇生は推奨されません》

 《警告:世界構造に矛盾が生じる恐れがあります》


 知ってるよ。でも。


 「お願い、帰ってきて」


 わたしがそう祈ると、光が走りました。

 アリオスが、息を吹き返しました。

 水の中から、ゆっくりと浮かび上がる。

 リネアが泣きながら抱きつく。

 ……よかった。


 よかったけど、マップの端がちょっと黒くなってる。

 あれ、バグ?


 《システム警告:蘇生により時空構造が歪みました》

 《修復を試みますか?》


 うわ、出た。ゲームあるあるのエラー文。

 どうするのが正解なのこれ。

 「はい」と押したら多分地面ごとリセットされるし、「いいえ」なら放置バグ化。

 うう、嫌な選択肢。


 ――とりあえず、「いいえ」。

 

ついでに、近付いてきた雷雲をちょっと動かす。

 リネアの髪が風でなびく。

 アリオスが空を見上げる。

 ……あれ、こっち見てる?


 「神様……今のは……あなたが?」


 う、バレた。

 どうしよう。干渉しすぎた。

 マニュアルに書いてあったのに。“過干渉は人の意志を腐らせます”って。


 「ありがとう……」


 リネアが笑いました。

 ……あ、なんか、胸がチクリとした。

 ありがとうって言われたけど、それ、たぶん違う。

 ほんとは、自分たちの力でどうにかするべきだった。

 わたし、ちょっとズルしちゃった。


 その夜、焚き火のそばで、アリオスとリネアが話しています。

 「神様は、きっと僕たちを試しているんだ」

 「そうね……きっと、善いことをすれば守ってくださる」

 ……えっ、なんか宗教できてる!? 早くない!?


 翌日、二人は石を積み始めました。

 「神様に感謝の場所を作ろう」

 ――小さな円形の石組み。世界で最初の“祭壇”です。


 あ、でもそれは、悪くないかも。

 神様の存在を忘れずにいられるのは、優しいこと。

 リネアが花を飾って、アリオスが火を灯す。

 空へ煙が上がる。

 それだけで、世界が少しだけ生きている気がした。


 「神様、いつもありがとうございます」

 ……うん。こちらこそ。ありがとう。


 《システムメッセージ:人類の自律進行度 2%》


 ……2%か。

 奇跡に頼りすぎて、やっと2%。

 でも、昨日より少しだけ、夜が明るい気がした。

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