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【完結】今日から神様。〜神の指で世界繁栄実況中!〜  作者: 遠野 周


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10/11

神、また間違える。でも、たぶん前よりマシ。

 風が、やわらかく吹いていた。

 空気の匂い。草の色。鳥の影。

 ――懐かしい、でも新しい世界。


 わたしはふたりを見下ろしていました。

 男と女。

 前の世界と同じように、裸足で、木の葉をまとう。

 彼らはおそるおそる手をつないでいました。


 マニュアルがぽん、と現れる。

 《ミッション:この二人で子孫繁栄、村を作り、国を興そう》


 はいはい、覚えてます。

 わたし、もう二度目ですから。

 今度こそ、ちゃんと“見守る”神でいきます。

 干渉しない。焦らない。落とさない。


 「……神様、誰かいるの?」

 女がぽつりとつぶやいた。

 あ、聞こえてる。

 でも、まだ答えない。

 前回の学びを思い出して、ぐっと我慢。


 《環境メモ:初期ブースト期間開始》

 《倫理フィルタ:無効》


 ……うん、知ってる。

 でも今回は落ち着いていこう。


 男――名前は……アリス、にしよう。

 女は、リナ。

 なんか前と似てるけど、ちょっとだけ違う。


 二人は、はじめての夜に焚き火を囲んだ。

 炎の明かりに照らされて、お互いの顔を見つめている。

 世界はまだ静かで、わたしの指先一つで何もかも変わる。

 けれど、今度は、触れない。


 ……と、思っていたら。


 「いたっ!」

 アリスが足を滑らせて転びました。

 小さな岩で足を切って、血がにじむ。


 うわっ、びっくりした。

 けど、まあ、これくらい……我慢……できる……はず……。


 リナが慌てて葉を巻きつけている。

 よし、ちゃんと手当てできてる。

 うん、大丈夫。奇跡発動しなくても――


 《奇跡発動:自動止血(反射)》


 ……あっ。


 傷がみるみる塞がる。

 リナが目を見開いて、空に手を合わせた。

 「神様が助けてくれた……!」


 うわああああ、やっちゃったぁ!

 ちょっと目を離したらこれ! 反射スキル切ってなかった!

 やばい、また最初から神バレした!


 《信仰値+3》


 うわ、もう信仰貯まり始めた。

 ほんとに、何もしなくても信仰って増えるんですね……。


 「神様、ありがとう!」

 ああもう、かわいいけど、はやいよ!

 まだ文明レベル0だよ!?


 でも、笑ってる。

 手を取り合って、安心して、

 夜空を見上げて、「きれいだね」って。


 ……いいか。

 今回は、それでいいや。

 間違えたけど、誰も泣いてない。


 《システムメッセージ:再起動環境 正常稼働中》

 《前任神データ統合完了》


 わたしの中で、遠い世界の記憶が少しずつ混ざっていく。

 黒い霧の呪い。奇跡の暴走。沈黙の修行。

 どれも、きっと意味があった。


 人が祈るから、神が生まれる。

 神が沈黙するから、人が強くなる。

 そして、また誰かが風の中で笑う。


 ――そうして、世界は回るんだ。


 アリスが火に枝をくべる。

 リナがその隣で歌う。

 その声は風に乗って、空の上まで届いてきた。


 「ねえ神様、私たち、幸せになれるかな」


 ……うん。たぶん、少し間違えながらなら。

 きっと、なれる。


 夜空が広がる。

 星々が瞬き、白い花がひとつ咲く。

 あの“聖涙花”が、また新しい世界に根を下ろした。


 《自律進行度:1%》

 《信仰値:+5》


 神、今日も反射でバレるタイプ。

 ――世界の繁栄、また1%からです。

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