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夢遊の環(ゆめゆのわ)

作者: なるひな

障子がピラピラとはためいている。

ほぼ全部の障子紙が破けてピラピラしているせいで、すきま風がひどかった。なのに、どうしてこの女はこんなボロ家を乗っ取ろうとするのだろう?

「りの」と呼ばれるその女は、学校帰りにやってきて突然「ここは私の部屋!」と言い放ったのだった。ただでさえ家がボロ家で、両親の顔色をうかがいながら生きなくてはいけない中で、自室まで奪われるとは。

「りの!」

と怒りの声を上げたところで目が覚めた。


また、夢を見た。またおんなじ家だった。障子紙がピラピラとはためく、あのボロ家だ。窓は閉めているはずなのに、なぜか障子紙ははためいていた。

私はストーカーに追われていた。なぜ追ってくるのか分からない。家のそばでじっと見ていればいいじゃないか。逃げた私の入ったところは、大きなお城のような場所だった。西洋風のお城だ。そこではたくさん逃げ回り、駆け回り、いろいろな部屋に入った。色とりどりのケーキもあった。だがここで食べてはだめだ。夢の中でものを食べると、夢から出られなくなる。一般常識ではないか。

お城の中を駆けずり回っていると、周囲ではたくさんの人がセックスをしていた。廊下の窓際に備え付けられたソファーの上、白いクロスをかけられたテーブルの上、ベッド、調理台の上、ピアノの椅子…。私もした。相手は白髪の美しい老執事だった。にこやかで、礼儀正しい人だった。

ストーカーから逃げなければならないので、スケートボードの上に背中を預けて、そこに寝て滑りながらした。意外と早いスピードが出た。終わった後は老執事は何事もなかったかのように奥様の手を取り、去っていった。

またストーカーから逃げているうちに、結婚式に紛れ込んでしまった。しかも新郎新婦の入場の時だった。慌ててかがみ込んで、四つん這いになりながら陰の部分を歩く。するとちょうどよく真四角のドアがあった。開けると大きな階段があった。横幅が広く、一度に何人も通れそうだった。階段を降りると広い部屋に出た。

そこで目が覚めた。


次に夢を見た時、私は広い部屋にいた。部屋に入った瞬間、巨大な赤いゴムボールの上にいた。訳がわからない。たくさんの巨大なゴムボールと、その上で飛び跳ねて遊んでいる人たち。でも、ボヨンボヨンと大きなボールの上を飛び跳ねているのはなんだか楽しかった。ボールは全て赤だった。

そうしているうちに水に流されてまるでウォータースライダーのように他の人たちと一緒に流されていった。そうしてたどり着いた次の部屋は、とても暗くて怪しい雰囲気だった。突然、他の女性たちと裸でステージに立たされた。フラフラしていた私はとなりの女性にぶつかり、「すみません。」と謝った。

ステージからは早々に立ち去るものの、男性たちがやってくる。ステージのところには私たちを模してボンテージを着た人形がたくさん吊るしてあり、「殴る」とか「鞭打ち」とか色々書いてある。けれど、とても楽しいふわふわとした気分だった。

そうして目が覚めた。


次に夢を見た時、あの広い部屋で赤い巨大なゴムボールの上でボヨンボヨンと楽しんでいる最中だった。何が何かもわからぬまま楽しんでいると、また水に流されてウォータースライダーのようなイベントが始まった。そして次の部屋はまた暗い部屋。

そこで突然身長が伸びた。何メートルも。周りの人も同じように伸びている。足元が見えなくなっていく。足に力ってどうやって入れるんだっけ。バランスが取れなくてフラフラする。「ああ、だから前回ステージのところであんなにフラフラしてたんだ。」

そしてまたステージに他の女性たちと裸で上がり、降りる。いや、ボンテージを着ていた。ステージには、ボンテージ人形たちが吊るしてあった。男性たちに声をかけられて、また楽しくなった。

そこで次の部屋に行くと、フラフープがたくさんあった。人それぞれ、手渡されたフラフープを見るとどれも少しずつ色の配分が違うことに気付いた。白と赤と青の割合が少しずつ違うのだ。


私は気付いた。みんな同じ夢を見ているんだ、と。

そしてこのフラフープを通ることによって夢の中に入り、それぞれの夢の中で楽しむ時間配分が違うんだ、と。おそらく料金が発生しているんだろう。2色だけの人もいた。赤と白、赤と青、白と青。けれど私は3色だった。白の割合がとても多かった。予想だけれど、白はお城で遊ぶ時間。赤はゴムボールのところで遊ぶ時間。青は身長が高くなりボンテージを着てステージに上がり、男性と戯れる時間。

私はそれを繰り返していたわけだ。何度も何度も。

はじめはただの夢だと思っていたのが、自発的に遊んでいたテーマパークだった。夢だと錯覚するくらいに楽しかった。

フラフープをくぐろうとした時、スタッフの人から薬を渡された。そうか、いつもこれを飲んでフラフープをくぐると、あのボロ家にたどり着いて、そこから始まっていたわけか。


私はふと、料金のことが気になった。薬を捨ててフラフープをくぐらずに一度更衣室に戻った。私は裸だった。きっと、裸での参加が義務だったのだろう。

更衣室に戻った私はロッカーの鍵が合わないことに気が付いた。スタッフさんに伝えていると、別のスタッフさんが慌ててやってきて、「包帯をぐるぐる巻きにした男が何かの鍵を乱暴に投げ捨てていきましたよ!」と入ってきた。その鍵を入れると、ぴったり。私の更衣室のロッカーの鍵だった。

すると、外の方から大きな爆発音と共に煙がもうもうと湧き上がってきた。「バイクが爆発したぞー!」と誰かが叫んだ。直感で、ぐるぐる包帯のストーカーだと思った。包帯で顔を隠していたんだろう。

私の更衣室のちょうど真上に放水用のホースがあった。みるみるうちにホースがのびていき、今まで遊びに使われていた大量の水が煙を上げたバイクに向かって放水されていく。

私は目が覚めた。

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