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叩いて被ってじゃんけんぽん

タクミは覚悟を決め、目の前に立つ謎の青年と視線を交わしていた。整った顔立ちに、冷酷な眼差しをたたえたその青年は、不敵な笑みを浮かべ、名乗りを上げる。


「佐々木ショウヤ。よろしく頼むよ、タクミ君。」青年は親しげな口調で語りかけてきたが、瞳の奥にはどこか得体の知れない狂気が宿っていた。


タクミは一瞬、彼の挑発的な雰囲気に戸惑いを感じたが、心を奮い立たせて視線を真っ直ぐに返す。ここで怯むわけにはいかない。「…島田タクミだ。こっちこそよろしくな。」


合図とともに、試合が始まった。二人は互いに構え、にらみ合いながら静かに手を動かす。そして、最初のジャンケンが始まる。


「じゃんけん……ぽん!」


タクミの出した手はグー、ショウヤの手はチョキ。最初の勝負はタクミの勝ちだった。


「よし!」とタクミは素早くハンマーを掴み、目の前に立つショウヤに向かって一気に振り下ろす。だが、タクミのハンマーがショウヤに届く寸前で、ショウヤはすでにヘルメットをかぶり終えていた。


「くそっ、あと少し速ければ…!」悔しさが口を突いて出るタクミに対し、ショウヤは余裕たっぷりに薄笑いを浮かべている。


「フッ。君は僕には勝てないよ。何をしても無駄だ。」


その言葉に、タクミは胸に不安が湧き上がるのを感じた。だが、振り払うように顔を上げる。この試練に勝たなければ生き残ることはできない。そして今は、負けられない相手が目の前にいる。


次のじゃんけんに向けて二人が構え直す。


「じゃんけん……ぽん!」


今回はショウヤが勝利した。ショウヤは即座にハンマーを掴み、タクミに向かって力強く振り下ろす。しかし、タクミも必死で動き、ギリギリでヘルメットをかぶることができた。ゴンッと鈍い音が響き、タクミの頭上でハンマーがヘルメットにぶつかって止まる。タクミはショウヤの攻撃を防ぎきったものの、その衝撃で身体が揺れ、恐怖に冷や汗が滲む。


視界の端には、既に死亡者が出ているのが見える。叩いて被ってジャンケンポンというゲームに潜む残酷な現実が、周囲に緊張感を漂わせ、タクミの心臓を激しく鼓動させていた。


「次で決める。」とショウヤは冷たく言い放ち、目を鋭く光らせた。まるで勝負の結末を確信しているかのような、油断のない姿勢を崩さない。


タクミは震えそうになる膝を押さえ、次のジャンケンに臨むべく拳を握りしめる。そして、二人の三度目のじゃんけんが始まった。


「じゃんけん……ぽん!」


今度もショウヤが勝利する。勝ち名乗りをあげたショウヤは、目に見えるほどの勢いでハンマーを手に取ると、タクミに向かって渾身の力で振り下ろそうとする。タクミも必死にヘルメットをかぶり直すが、ショウヤは確信を持った表情で、ハンマーを横に向けもう一段階速い動きでタクミの顔へとハンマーを向ける。


「もらったぜ!!!」


勝ち誇ったように叫ぶショウヤの声が響く。そして、彼のハンマーはタクミの頬に向かって一直線に迫っていた。


その瞬間――


「ボンッ!」


突如、ショウヤのハンマーを持っていた手が激しい爆発音と共に吹き飛んだ。ショウヤの体は後方に飛ばされ、床に叩きつけられる。ショウヤの手元から血が噴き出し、彼は痛みと驚愕で悲鳴を上げる。


「ぐっ…!な、何が…!?」


床に倒れ込みながら、ショウヤは顔を歪め、手首を押さえつける。激しい痛みが全身を襲い、彼の冷静さは崩れ去っていた。タクミも突然の出来事に驚き、目の前の状況を理解するのに数秒を要したが、冷や汗が背中を伝うのを感じた。


「ハンマーが…爆発したのか…?」


タクミが呆然と呟いたその瞬間、目の前にウィンドウが表示された。


「注意:ターゲット箇所以外の攻撃姿勢により、警告処置を実行しました。以降も不適切な行為を繰り返す場合、即刻排除処分となります。」


システムの冷淡なメッセージが浮かび、ショウヤの表情が青ざめた。「排除…だと…?」ショウヤはその場でうずくまり、血に染まった手を見つめている。


タクミは思わず大きく息を吐いた。命を賭けた試練の残酷さ、そしてシステムの無情さを改めて実感する。だが、彼はショウヤの苦しむ姿に一抹の同情すら覚えない。これがこのデスゲームの現実なのだ。


冷たい視線をショウヤに向け、タクミは静かに口を開いた。「…君の勝ち誇る顔は見飽きたよ。」そして、タクミはそっと立ち上がり、次のジャンケンの構えを取るのだった

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