戦場と化した街
島田タクミは、自宅のドアを開けると、静寂が広がる部屋に入った。普段は家族の賑やかな声が聞こえるはずの場所が、まるで忘れ去られた空間のように無音だった。家には誰もいない。不安が胸を締め付ける。まさか、家族もこのデスゲームに巻き込まれたのか? そんな考えが頭をよぎるが、今はそのことを考えている場合ではない。彼は、ゲームを終わらせるために動かなければならなかった。
タクミは、街へ出ることを決意した。このゲームに参加している者たちを説得し、共に立ち向かう仲間を探すために。だが、街に足を踏み入れると、その光景に目を疑った。街は戦場と化していた。人々が争い、無関係な者たちさえもが互いに命を奪い合っていた。恐怖に駆られた者が殺しに走り、次にまた恐怖を覚えた者が殺人を犯すという負の連鎖が続いている。警察ですらこのゲームに加わり、秩序は崩壊していた。
「こんなの……どうなってるんだ?」タクミは目の前の惨劇に困惑する。彼の心の中では、恐怖と戸惑いが交錯していた。
その時、タクミは一人の少年が襲われているのを見かけた。彼は本能的に駆け寄り、近くにあったバットを手に取ると、襲っている男に向かって振り下ろした。男はたちまち倒れ、タクミは少年の元に駆け寄る。
「大丈夫か?」タクミは声を掛けた。
少年は少し驚いた様子で、タクミを見上げた。「ありがとう。何も知らずに僕に近づいて来てくれて。」
だが、その瞬間、タクミの腹に鋭い痛みが走った。「な、ん、で、」と呆然としたまま少年を見ると、彼の手にはナイフが握られていた。
「僕の特技は猫騙しなんだよ。」少年はニヤリと笑い、タクミにトドメを刺そうとする。絶望的な状況に追い込まれたタクミは、ただ呆然と立ち尽くしていた。
しかし、突如、後ろから影が現れ、タクミを救った。先ほどタクミが倒した男だった。「このバット、落ちてたから使わせてもらうな。」と男は言いながら、少年に向かってバットを振り下ろした。重い一撃が少年の頭に直撃し、彼はその場で動かなくなった。
男はタクミを振り返り、笑顔を見せた。「俺は剛力ジュンだ。お前は?」
タクミは何が起きたのか分からず、ただ自分の名前を答えた。「島田タクミです。」
ジュンは続ける。「俺もさっきの少年に猫騙しを食らって、殺されかけたんだ。けど逆に俺が少年に襲いかかったら、君が勘違いして俺が殴られたってわけさ。ハッハッハ」と冗談半分に笑った。
タクミは驚きつつも、その冗談に少し安心する。ジュンの豪快な性格に、少し心が和んだ。だが、話は続く。「俺はこのミッション、もう3分の2まで終わっている。タクミは?」
タクミは自分の進行状況を話す。まだ3分の1で、ゲームに乗り気ではないことを伝えると、ジュンは真剣な表情になった。
「乗り気じゃないのは分かるが、恐らくこのゲームをクリアしないと死ぬ。少なからず非現実的なことが起こっているんだ。タクミ一人が抵抗したところで何も起きない。だから、俺は悪人を倒して平和的にゲームをクリアする!」ジュンの言葉には、決意が感じられた。
タクミは少し戸惑った。いくら悪人でも、人を殺すことはしたくない。だが、このまま何もしなければ、死ぬのは確実だ。彼は言った。「俺がするのは正当防衛だけだ。それ以外で人は殺さない。」
ジュンはニヤリと笑い、手を差し出す。「じゃあ今から同盟を組もう! 二人で協力した方がゲームクリアは楽だろ?」
タクミは一瞬迷ったが、彼の真剣な目を見て決心した。自分が一人ではどうにもならないことは分かっていた。彼はジュンと手を握り、共に立ち向かうことを決めた。
「よろしく、ジュン。」
二人はそれぞれの思いを胸に、デスゲームに立ち向かう新たな同盟を結成した。果たして、彼らはこの残酷な運命にどう立ち向かっていくのか――。