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防犯カメラの少年

作者: モモモタ

 スーパーで働いていた時の事だ。私が働いていたスーパーの正面はガラス張りで、入り口は正面右側にある。入ると風除室というカートやかご置き場があり、自動ドアを挟んで店内に通じている。つまり、店に入るにはまず右側の入り口から風除室に入り、風除室を進んでいく必要がある。また、店の左側には従業員用の通用口があり、そこは店内に直に通じているので、従業員はそこから出入りしている。以上の事を前提に、話を始めたい。



「あれ?」



 時刻は17時。ごみを捨てるために従業員用通用口から外に出て、店内に戻ろうとした時だ。季節は冬のためもう暗く、車も少ない。そんな中、ライトで照らし出された駐車場を、走り回る少年がいた。小学校低学年くらいだろうか。親はどうしたんだろうと思い声をかけようとしたが、少年は入口に向かっていき、扉を開いて風除室に入る。私は声をかけるためにすぐに通用口から店内に入り、回りこんだ。だが。



「え?」



 私が店内に入った時。少年が、店の奥に向かって駆けていた。そこは入口の自動ドアから5メートル以上離れている。始めは足が速い子だと思ったが……おかしい。私が店内に入るのに要した時間は本当に一瞬だ。その僅かな間に風除室を抜け、自動ドアを抜け、店内にいるなんて不可能だ。レジに立っていた従業員に聞こうにも、しゃがんで作業していたため少年の存在にすら気づいていなかった。



「うーん……」



 深く考えても仕方がないので、少年を探すため店内をうろつくが。



「あれ?」



 少年がいない。どこかに隠れているのかとも思い全通路確認したが、いない。レジの従業員も、今度ばかりはちゃんと見ていたので来ていないと断言する。気になった私はカメラで確認する。すると……少年は、映っていた。でも……足が透けて、滑るように店内を走り回り、店の奥で煙のように消えていた。そういえば、あれだけ走り回っていたのに足音が聞こえなかった。レジの従業員も、足音がすれば作業を止めるだろうし、気づかなかったという事は、始めから音がしていなかったんだろう。



「うう……」



 怖くなり、それ以上の調査を断念する。結局少年は見つかることなく、閉店を迎え、セキュリティをセットして施錠する。さぁ帰ろうと思ったその時。



「ん?」



 突然、電話がかかってくる。セキュリティ会社からだ。



「もしもし?」


『すみません。店内にまだ誰かがいるようなのですが』


「え?」



 セキュリティ会社は監視カメラの映像に子供が映っているというのだ。嫌な予感がしたが、私はもう一度店内に入り、誰もいないかを確認する。やはり、誰もいない。セキュリティ会社に電話をかけ、その旨を伝えると。



『やっぱりですか……わかりました』


「やっぱり?」


『たまにあるんですよ。こういう事。だから、気にせず帰られてください』



 なんとなく事情を察し、私は走って店を後にする。そして、翌日。やめた方がいいと思いながらも、昨夜の防犯カメラを確認する。そこに映っていたのは……



「嘘だろ……!」



 閉店後。店内を確認して回る私の後ろを、ついて回る足のない少年の姿があった。少年は、店を出た後も私についてきて、車に乗り……翌朝。店を開けてカメラを確認するまでの映像にも映っており、今この瞬間も……



                         完

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