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7 ここはカフェ。

案の定、お茶だしの仕事をみんなしたがらなかった。

それもそのはず、隣の領主の見た目がひどく残念。そして性格も傲慢で卑劣と悪辣で有名な領主だからだ。


私もすこし緊張している。お茶は、サリ様の協力を仰いで、それなりに目新しくできたけれど。粗相があれば、ここでは、平民なんてすぐに罰せられる。震える手でお茶出しをした。


応接室には、領主様の背後に従者のサリとハロルドが立っている。領主様と隣の領主様が向かい合って、ソファに座り、隣の領主様の横には、妙齢のお嬢様。豪華なドレスで着飾っている。そして、隣の領主の従者も2名側に控えている様子だ。


わが領主アルスレット様が

「ご挨拶が遅くなり、申し訳ありません。この領地に任じられたアルスレットと申します。若輩ながら、末永きお見知りおきを。」と普段では、ありえない微笑を浮かべてあいさつされた。

これが、かずたの女性を射止めたといわれる領主様の本領なのね。どんな女性もいちころよ!とミーハーな気分で横に控えた。見て!お嬢様の目にハートが浮かんでるわ。

「こちらこそ、遅くなって申し訳ない。まぁ、ここにも色々ありまして、、、、。アルスレット様とは、隣の領地同志、親睦を深めたいと思いまして。ぁあ、挨拶がおくれました。私は、ガドン、そして、こちらにいるのは、わが娘、アゼリア。」

「アゼリアと申します。ごきげんよう」と腰をかがめてカーテシーをした。

「どうぞ、お座りください。サリ、お茶を」


アルスレット様のお声がけで、サリ様とお茶をだした。サリ様に事前打ち合わせをして、説明もサリ様に任せた形だ。高貴な人の前では、私のようなものは声をだすことさえ許されないから。


「今年の初摘みのお茶です。今日は、暑いので、魔術で氷を作り、冷やしました。お皿に添えてあるのは、こちらの領地でとれる野生のベリーとハーブです。お嬢様には、ベリーをグラスに入れてぜひお召し上がりください。香りがよく甘めで柔らかな風味となります。領主様には、このハーブをおすすめします。すっきりとした味わいで、涼を感じられると思います。」


隣の領主付き従者が説明を聞き、初めてのことにおっかなびっくり給仕している。


うん!お嬢様のグラスにベリーと氷が浮かび、見た目にも華やかになっているわ。

「まぁ、なんて美しいお茶。ここでこんな新しいものを頂けるなんて、すばらしいわ」

「そうだな。このハーブもすっきりとした味わいなって、暑さが収まるようだ。それにしても、氷を入れるなんて、珍しい発想だな。いままで冷やすことはしても、氷で間接的に冷やすとは考えたことがなかった。最近の王都では、このようなものが流行っているのか?」


サリ様の目がきらっと光った。

「いえ、これは、こちらでの特産です。飲み物自体を冷やすより、長時間冷たいのですよ。このようなゆっくりとしたお茶会にぴったりだと思いまして。」


ええっと、隣の領主様達の反応は、まずまずね。わが領主様は、

難しい顔をされているわ。おきに召さなかったのかしら、、、、。



面会の話、終始、隣の領地がここより如何に優れているかの自慢とアルスレット様への媚びに徹した。

そして、今度は隣の領地に遊びにきてほしいとの話だった。


お茶会の後、私は、執務室でお茶を出しなおしていた。

「サリ。このお茶は、お前の手配か?」

「いえ、レティシアが作ったのですよ。私は、魔力を貸しただけです。なかなか、面白い発想だったので採用しました。隣の領地に見くびられては、いけませんからね。」


「そうか。」

アルスレット様は机の端をコンコンと指先で鳴らし、私を不穏な目でみつめた。


「君は、なぜこのような発想を思いついた。」


ええっ。。。。そんなこと聞かれると思わなかった。珍しい発想と思われるかもしれないけど、そこまで追求されるとは、さすが頭脳明晰の領主様。ほかの人と視点が違う。どうしよう。日本のカフェのフルーツティとミントティーを真似したなんて、言えないし。


「それは、その。。。。神の思し召しというか、急に思いついたのですわ。今日は茶葉を求めて城下に下ったときに、暑くて、さっぱりとしたくなったので、偶然、薬屋の前を通りかかって、、、ハーブを、、、」。


「そうか。」

アルスレット様はゆっくりと目を閉じた。

「君は有能だな。」


最後の言葉は、私を夢見心地にした。とても、うれしい。


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