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6 身分とはばからしい

私の願い通り、天気は回復した。

ここは、神への祈りが届きやすいせかいなのかしら?

確か王家も神の末裔とか言われている。神と民が近い世界なのかも。


魔法が使える魔力を持つものは、王家を始祖に持つともいわれている。だから強い魔力を持つ者はほとんど貴族。まれに平民にも魔力を持つものがいるが、その力は弱い。

それゆえ魔力をもつ貴族の生活は豊かになるが、魔力をほとんどもたない平民は、不便な生活の中

、暮らしている。


「レティシア。私の負けね。雨は遠のいたわ。」

「よかったです。洗濯物はお日様のにおいがして、とってもいい気持ちです。領主様もゆっくりお休みになられるでしょう。」

「あなたは、いつもそんなことを考えているの?」

「そんなこと?」

「ここの召使は仕事を、終わらせることばかりで、仕事の完成度など気にしないわ。さっきのことをいうなら、雨に降られることを考えれば、湿ったにおいがしようと、地下に干すでしょう。でも、あなたの仕事は、その仕事の後のことを見ている。洗濯物がそのあと使われるときのことね。」

「そういうことを考えると、どんな仕事も楽しいんですよ。世の中に無駄な仕事など何もない。どんな仕事も大切なんだなと感じます。」

女官長は、目を白黒させていた。そうだ、ここは、身分のある世界。日本じゃない。職業に貴賤があるのも当然。特に洗濯は下女の仕事だ。領主様について来た女官長だから、その驚きは、ひとしおだろう。


「あなたは、不思議な考え方をするのね。教育を受けていない平民だからかしら?」

そういって、女官長は去っていった。


本当は、この世界の理不尽なことについて、もっと話したかった。この世界は、本当に遅れている。身分があり、生まれだけで差別される。人の評価は、その人の評価でなく、生まれなのだ。だから、この世界は発展しないのだろう。どんなに才能のある人が生まれても、平民というだけで、その能力を生かすことができない。


でも、私の意見は、ここでは異端だ、そしてなんの身分もない辺境の平民。毎日、目にする不条理に心が痛むが、何もできない自分が嘆かわしい。

この世界は、何を望んで私を遣わしたのだろう。ちっぽけな私に、いったい何ができるのだろう。


「あ~、よかった。レティシア。ちょっとおつかいを頼みたいのだけど。城下町で茶葉を買ってきてくれる?」急に側仕えの一人に声をかけられた。今日は、忙しい日だ。

「はい。すぐに行ってきます。どんな茶葉が必要ですか?」

「そうね。隣の領主様がご息女を連れてこられるそうだから、新しいものとか、女性に好まれるものをお願いするわ。」


「う~ん。新しいものといっても、この辺境の地では、難しいわ。」と考えながら、大きなお茶問屋を訪れた。

「いらっしゃいませ。」

「なんだ、じょうちゃんか。城の使いか?」

「そうなんです。お客様が来られるらしく、何か目新しいものは、ないですか?」

「こんな辺境に目新しいものなんか来ねえよ。ここでは、慣れ親しんだものしかうれねぇし。そんなもの仕入れても商売あがったりだ。新しいものはねぇが、ほら、これなんかどうだ?ファーストフレッシュの今年の初物の茶葉だ。」

「う~ん。とりあえず、それを頂くわ。」


両脇に店が立ち並ぶ店舗の大通りを歩きながら、考えていた。隣の領主は悪評高い。ご機嫌を損なえることは、まずい。だからレティシアが、おつかいに選ばれたのだろう。失敗すれば、彼女の責任に。

買ったのは、今年の最高級の茶。だが、この春の陽気に遠くからきた領主。

と考えて、レティシアは、まっすぐ帰らず、隣接する森まで足を延ばした。



急いで走りながら帰ったレティシア」だったが、開口一番女官長に叱られた。

「遅い。何をしていたの?」

「よい茶葉を探して、えっと・・・・」

「まぁ、いいわ。とりあえず、城主様がもう着くころだわ。お茶の準備だけすくに出せるよう用意をしておきなさい。」

「あ、あの、サリ様は、どちらですか?」

「?来客室を整えていらっしゃるわ」

「ありがとうございます。行ってきます。」


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