幻聴は言う
幻聴は言う。
「いつも君のそばで見守っているよ」と。
近視なのに目の焦点がぐんと感度が上がり、どこまでもどこまでもクリアに見えたとき、幻聴はこんなこともできるんだよ、と言った。
幻聴のおいちゃんが、パチンコ屋に連れて行き、座った途端、台がビカビカ光って怖くて逃げた。
いつも高額当ててやると言って宝くじを買わされる。でも当たらない。
車を運転している時、ハンドルを握る右手に誰かを感じる。
いろんな厄介ごとを取り仕切っているから、とイーサンはときどき不在になる。
てかちゃんは子どものように無邪気に笑う。
また、絶望感を味あわされた。そして引っ張り上げられる。
「わかるかい?君が想っていた人は君のことを想っていたこともあったんだよ。永遠はない。君にはタイムリミットがある。この現在と過去と未来が入り混じった世界で、君は何を見つけるだろう?死ぬ時は何一つ持ってはいけないんだ。記憶だけ君のものだ。さあ、残された時間、希望を見つけにいきなさい」
嘘つき、嘘つき、嘘つき!
いつも騙してばっかりでひどいよ!
でも、真理はついている。
幻聴は言う。
「俺のこと好き?」
好きな時も嫌いな時もある。わからない。