第二話 甘いブラックコーヒー
宮内さんのことを好きだと自覚してからというもの、なんだかとても調子が良い。
仕事もイメージ通りに進むし、どこからともなく活力が湧いてくる感じだ。
今まで人並みに色事は経験してきたが、ここまで影響されるとは自分でも驚いた。
そんな今日は家から直行で社外打ち合わせに向かっている。
会社へ戻れるのは夕方くらいか…
はやく会いたい。
ー 無事に打ち合わせを終え、予定より少し早めに会社へ到着。
…あれ、宮内さんがいない。
「ただいま。おっ柏木、戻ってたのか。」
「うん、さっき帰ってきたところ!」
このオフィスには俺と宮内さんの他に、営業部長の柏木拓海という男がいるんだが、よく外出していることが多い為、レアキャラだ。
柏木とは同い年で、元職場の同期。
会社の立ち上げメンバーとして、ずっと一緒にやってきた仲間だ。
「あっ峯田さん、おかえりなさい。」
宮内さんがコーヒーを持って戻ってきた。
「ただいま。」
「あの…ちょうど柏木さんにコーヒーを頼まれたんですけど、峯田さんも飲みますか?」
「じゃあお願いしようかな。」
「すぐお持ちします。」
気が効くなぁ…
「あっ、そういえばさぁ!」
宮内さんが入れてくれたブラックコーヒーをありがたくいただいていると、柏木が何か思い出したようだった。
「宮ちゃんの歓迎会まだやってなかったよね?今日もう仕事切り上げちゃって、今からやらない?」
「いや…俺はいいんだけど、今からって流石に急すぎないか。宮内さんの都合もあるだろうし…」
歓迎会…新メンバーを迎えるのは初めてだからすっかり忘れていた。
俺としたことが…!!
「ちょっと聞いてみるわ。」
そう言って、柏木はコピー機の前にいる宮内さんのところまで駆け寄って行った。
俺も気になってゆっくり後を追う。
「宮ちゃん、今日この後予定ある?」
「特にないです。」
「本当?もしよかったら、今から宮ちゃんの歓迎会したいなって話してたんだけど、どうかな?」
一瞬フリーズ状態になる宮内さん…俺は慌ててフォローする。
「あ…いきなりでごめんね。無理しなくていいからね。」
「いえ、嬉しいです。ありがとうございます。」
…この時見せてくれた笑顔は、本気で喜んでくれているのだと、俺にとって都合良く認識させるくらい完璧だった。
「よし、決まり!宮ちゃんは何が食べたい?」
「わたし苦手なものないので、お二人に合わせます。」
「じゃあ俺イチオシのイタリアンはいかが?峯とも一回行ったことあるよな、ほらあの角のとこ!」
「あー、あそこか。いいんじゃないか。」
「そこにしましょう。」
なんかトントン拍子に決まっちゃったけど、よく考えたら距離を縮めるチャンスだもんな…
頑張れ、俺!!