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 学院を休んでいる間に来た週末。ロン様と街へ出かける約束をしていたのだったわ。


もう、ロン様は来る事は無いのね。



 自室で静かに本を読んでいると、玄関が騒がしくなる。


「シャナ、どうしたの?」


「いえ、ちょっと来客が騒いでいるだけです。ファナスタ様の気にする事はありません。」


けれど、騒ぐ声がどんどん大きくなり、ドンッ。と扉が開かれる。シャナは私の前に立ち来客を追い出そうとする。私はシャナの後ろからそっと覗く。


「・・・ロン様。どうされたのですか?」


「ファナスタ!君に話がある!七海様を虐める君に失望した!今日は婚約破棄を伝えにきた!それだけだ!!」


真っ赤な顔をして怒鳴り込んで来たと思えば。私はシャナに避けるように指示をする。


「シャナ。いいわ。ロン様、聖女様は登校を始めて日も浅く、虐める理由が分かりません。私はロン様にとって婚約者では無く、雑草でしか無いと言われた時は苦しくて気付けば倒れてしまいました。


ロン様、お慕いしております。ですが、ロン様が望むのであれば婚約破棄をお受け致します。」


「ロン君。玄関から騒がしい声が聞こえたと思って来てみれば。考え直した方がいい。君の父からも婚約破棄の件は聞いている。さぁ、帰りたまえ。ポール、少しばかりロン君を楽にしてやれ。」


「父上。不本意ですが、分かりました。ロン義兄さんこっちに来て。姉上、ゆっくり休んで下さい。では。」


扉が閉められると邸は元の静けさに戻った。


ロン様は大丈夫なのでしょうか。


 私はロン様の突然の訪問に驚きましたが、それから数日間ゆっくり休み、学院へ登校する事が出来るまでになりました。


「姉上、大丈夫?俺が付いているからね。何かあったら呼んでね。」


「有難う。でも、大丈夫よ。」


 久々の登校で令嬢達からは笑われると思っていたけれど、反対に心配されてしまったわ。


どうやら私が休んでいる間に私とロン様のような事が何人も起こっていたみたい。聖女様の取り巻きが出来ていると話していたわ。



「ファナスタ様、お久しぶりね。元気になったかしら?貴方に少しばかりお時間をいただきたいの。」


声を掛けて下さったのはリチャード殿下の婚約者のサンドラ様。相変わらず美しいわ。


「は、はい。私で良ければ、喜んで。」




 学院も卒業前なので特に勉強の必要もない為、私はサンドラ様に付いて食堂のテラス席の一角の個室に入った。


サンドラ様の侍女の淹れてくれた紅茶は美味しくて感動しちゃったわ。


「ふふっ。ファナスタ様に紅茶を気に入ってもらえて良かったですわ。」


「とても美味しくて感動しましたわ。」


「ところで、ファナスタ様、最近、学院内での出来事が気になりませんか?」


「私、数日間お休みをしていたので上手くは言えませんが、クラスのお友達から教えて頂きましたわ。聖女様の周りに日に日に取り巻き達が増えていると。」


「そうですわね。その事をお聞きしたかったのですわ。ファナスタ様とロン・ウッド様は仲睦まじくて有名でしたのに、ああなってしまった。」


「はい。」


ロン様はやはり聖女様が好きなのでしょう。暗い気持ちに表情も連動してしまいます。


「責めている訳では無いのです。教えて頂きたいのですわ。ロン様が急に変わるきっかけとなった話を。」


私は少し考える。


「そうですね。聖女様が騎士科の訓練を見学された時の話ですが、私とクラスメイトで練習を見ていたのです。手を振る私にロン様は気づいて私の方へ向かって来たのです。


しかし、私の目の前で聖女様がロン様を気に入り、ロン様の胸元に手を当てたらロン様がかがむように跪きました。私は心配して駆け寄ろうとした時に聖女様はロン様の肩に触れて大丈夫かと聞かれていました。


その時に私はロン様に突き飛ばされたのです。そこから彼は変わったと思います。」


あぁ。

思い出すと涙が出てしまいます。


 泣くつもりなんて無かったのに涙は止まってくれません。ハンカチで押さえて、あの日の出来事を思い出さないように別の事を必死で考える。


「すみません。泣くつもりは無かったのですが。」


「良いのです。仕方ありませんわ。仲睦まじいお二人でしたもの。実は殿下も聖女様に会ってから変わられたのです。


私を嫌悪するようになったと言うか、聖女様以外は目に入らないようになったようなのです。それに学院で一人、また一人と聖女様の取り巻きが増えるにつれて、婚約破棄をされる御令嬢も出てきているのです。


殿下はどうやら卒業パーティーで私との婚約を破棄して聖女様と婚約するつもりのようです。ですので、それまでに色々と調べておきたいと思いましたの。」


「私にお手伝いできる事は有りますか?」


「大丈夫でしてよ。ただ、卒業パーティーには出席して下さいな。」


「分かりました。サンドラ様、お手伝いする事が有ればいつでも言って下さい。」


「有難う。助かるわ。」


そう言って私は個室を出る。みんな聖女様に婚約を持って行かれているのね。私だけではなかったのね。


 私は卒業パーティーまでの間、出来るだけクラス内から出ないようにして聖女様やロン様達に会わないように務めた。


私の耳に入ってくるのは聖女様を慕う殿下達や取り巻き達の行動。聞く度に憂鬱になるわ。



そして、卒業パーティーのドレスはロン様から贈られてくる事はなかった。

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