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「ねぇねぇ、知ってます?この間教会で召喚された聖女様の希望でこの学院に通うそうですわ。」


「それは大丈夫なのですか?別の世界から来たのに授業に付いていけるのかしら。」


「あと3ヶ月で卒業だから学院の勉強もほぼない魔法科のSクラスへの編入だそうですわ。」


「まぁ。それと殿下達と同じクラスで有れば大丈夫でしょうね。」


クラスの令嬢達と今、国中から注目を集めている聖女様の話で盛り上がる。



 私の名はファナスタ・ジョンソン。父はカイン・ジョンソン子爵、母はマール。そして2つ下の義弟ポール。


家族仲は大変良くて父も母も政略結婚なのだが恋愛結婚のように夫婦仲も良い。義弟は私が10歳の時に親戚家族から売られるようにやってきた。


 ポールは魔法の才能が有りながらも家族から冷遇されていたようで、邸に来た当初はビクビクし、目を泳がせ、落ち着きのない感じだったわ。私はポールを心配していつも何処へ行くにもポールの手を繋いで一緒に行動していたの。


そんな日が続き、ようやくポールも落ち着きをみせるようになると同時に家族にも馴染むようになっていった。私はか弱いポールが心配で仕方がないのだが、ポールに言わせれば、心配なのはおっちょこちょいの姉様の方だと私を心配してくれる。




 それにしても聖女様が学院に来るなんて凄いわ。Sクラスには殿下と、その婚約者のサンドラ様が居るの。


雲の上の人達が集まっているわ。私はAクラスなのでお近づきになる事も無いし、平和よね。


あぁ、でも我が家はサンドラ様の家、公爵家の派閥に入っているので学院内外で一緒にお茶をさせて貰っている。サンドラ様はとても美人で見ているだけで私はうっとり幸せになってしまうほど。


サンドラ様は私達には優しいけれど、自分に厳しい人。殿下との仲は良いみたい。素直に応援したいと思っているの。


「ファナ、お昼だよ。一緒に中庭で食べよう。」


振り向くと、そこに居たのは私の婚約者のロン・ウッド様。彼は伯爵家の嫡男で私達は卒業後、婚姻する予定になっている。


「ロン様。今日の食堂のランチは何になさいますか?私、サンドイッチにしようかと思っています。」


「俺はステーキランチにしようかな。あー。でもファナがあーんしてくれるならサンドイッチでもいいかな。」


「ふふっ。ロン様、それは卒業した後いくらでもしますわ。」


「ファナ、卒業が待ち遠しいよ。」


私とロン様はこうしていつも食事を一緒に食べるほど仲は良く、お互い想いあっている方だと思う。


 ロン様は伯爵家を継ぐ事にはなっているけれど、まだ伯爵様は現役バリバリなので当面は伯爵様のお手伝いをしながら騎士として王宮勤めをする事になっている。


「ロン様、私心配ですわ。ロン様はハンサムですもの。王宮で他の令嬢達に心奪われてしまうのでは無いかと。」


「ファナは心配性だなぁ。俺はファナが好きなの。例え聖女様が声を掛けられても知らん顔だね。」


「ロン様、有難う。」


こうして毎日の昼食を中庭で雑談しながら食べているの。ロン様はハンサムで結婚が決まっているのにも関わらず、令嬢達からのお誘いが絶えないみたい。


それでも私だけを見てくれているのは嬉しい。そしていつも休みの日は2人でお出かけするのを楽しみにしている。今週末は街に行って伯爵家の私の部屋に置く物を探す予定なの。


 私は今、一番幸せかもしれないわ。



 翌日、聖女様はリチャード殿下にエスコートされ、Sクラスへと登校してきた。聖女様の護衛には勿論教会関係者の聖騎士が後に付いて歩いており、とても物々しい雰囲気だったわ。


聖女様はSクラスで授業を受けたり、放課後の騎士科の訓練を見学したりするみたい。聖女様が来る事もあり、私はクラスメイトと一緒に放課後、ロン様の鍛錬を見学しに行く事にした。


「ファナスタ様、あちらにいるのはロン様ではございませんか?」


「そうですわ。」


私は遠くから声を掛けるのは迷惑だと思い、そっとロン様に手を振る事にした。


「ファナスタ様、ロン様が気づいて良かったですわね!」


私は顔を真っ赤にしつつ、クラスメイトにお礼を言う。ロン様は私に気づいて訓練の手を止めて私に向かって来てくれている。が、


「わ、わたしの為に来てくれたの!?凄い胸板ねっ。抱きしめられてみたいわ!」


私とロンの前に出て来たのは聖女様。


えっ、初対面でロンの胸元を触っているわ。


クラスメイトも私も動けなくなってしまった。ロン様は何故か表情を無くし、動かなくなってしまった。


「失礼します。聖女様、その騎士は後に居る婚約者に向かって来たのです。触れる事はお止め下さい。」


横から聞き慣れた声。振り向くとポールが聖女様に声を掛けていた。


「あっ。気づかなくてごめんなさいっ。えっ、こっちもイケメンっ!」


ロン様は何か苦しい表情をすると聖女様に跪いてしまいました。どうしたのかしら。心配していると、聖女様はまたロン様に大丈夫?と肩に手を当てて聞いています。


「ロン様。大丈夫ですか。」


私はたまらずに駆け寄ると、ロン様にドンッと突き飛ばされ、その勢い後ろに倒れるがポールが受け止めてくれた。


「・・・えっ。」


「聖女様に近づくな!」


冷たい視線が私を射抜く。


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