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悪魔狩りの魔女  作者: 華井夏目
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55.魔女を排する声

 高い橙色の空、薄っすらと架かる黄金色(こがねいろ)の雲、吹き抜ける冷たい秋風。暗くなった演習場にフレンダがフヨフヨと浮かぶ。そんな奇怪な光景を眺めながら(カチューシャ)は息を吐く。


 あかりが席を外してから一時間弱。気が滅入りそうな私の指導(どりょく)の結果、フレンダは浮遊魔術を大分安定して制御できる様になっていた。


 あとは、これを反復練習して身体に魔術をなじませていく。———のだが、時折体勢を崩してバタバタと暴れている彼女の姿を見て、まだまだ練習に付き合う必要があると感じ、私は肩を落とした。


 そんな最中、用事を終えたあかりが呑気に演習場に帰ってくる。


「ただいまー。あれ?クロエは?」


 開口一番にそう尋ねる彼女に対して、膝を抱えながら浮かぶフレンダが即座に答えた。


「お帰り。クロエなら先に帰ったよ。それで?話って何だったの?」


「何って、前にあった事件の事で少し話を聞かれただけよ。」


「前・・・・前ってどの事件ですの?」


 平然とした様子で返したあかりの言葉に私がそう尋ねる。すると、背後でエレナが噴き出した。


 その音に私が振り返ると、彼女は今まさにジュースを口に含んでいた様で、びしょびしょになったヘレンが不機嫌そうな顔して横に立っている。


「今更だけど、あかりって事件起こし過ぎだよね。」


 ずぶ濡れになったヘレンを気遣いながらエレナはそう言いお腹を抱えて悶えている。その何とも間抜けな二人の様子に私は呆れて目も当てられない。


 しかし、彼女が言った事も尤もですわ。修道院入学からおおよそ半年、その短い期間中にあかりが関わった事件の数は四件にも上り、その全てがイギリスの新聞紙に掲載されている。


 他にも、事件とは言わずともシスター同士のいざこざにもそれなりに関わっていた彼女だ。エレナがそういう反応になるのも当然と言えるでしょう。


 そんな彼女の様子にあかりは不服そうな表情を浮かべて言葉を返した。


「そんな人を不良娘みたいに・・・・」


「違うんですの?」


「・・・・・・」


「それで?実際何の話だったの?」


 未だ笑いが冷めやらない様子のエレナが気を取り直してあかりに尋ね返した。だが、内容が捜査に抵触する事なだけに流石に私が止めに掛かる。


「エレナ。捜査情報ですわよ。気安く訊くものではありませんわ。」


「えー、カチューシャは気になんないの?」


 しかし、彼女は気にも留めず逆に私をからかう様にそう言う。私は思わずエレナを睨みつけて強い口調で彼女を叱りつける。


「そういう話ではありませんわ。」


「わぁ、怖い。」


「まあまあ、貴女達なら話してもいいでしょ。口は堅そうだし。」


 そんなやり取りも私の気遣いも構わずあかりが軽い口調でテキトーな事を漏らす。その無神経な彼女の答えに私はすぐに異議を唱えた。捜査情報を軽々しく話すべきではないと。


 だが、怪訝な顔をしたあかりに「聞きたくないの?」と逆に訊かれ、正しさと欲の狭間で私は何も言えなくなってしまった。


「———・・・通り魔事件の魔導兵器に、デモ集団から複数丁の魔導兵器・・・」


 流されるままに粗方の事情をあかりから聞き終え、私が不意にそう漏らした。傍らであかりが静かに相槌を打つ。


 あの通り魔事件からおよそ四か月、反魔女派のデモが活発になっているのは知っていた。だが、まさかそんな事になっているとは思いも寄らなかった。


 私達が思った以上の深刻な状況にフレンダが明らかに動揺した様子で声を上げる。


「えっ、えっ、それヤバくない?———うわわわっ!」


 動揺のあまり体制を崩す彼女に対してエレナが冷静に話した。


「実際、相当ヤバいよ。そもそも非魔女の魔導兵器所持ってだけでも大問題なのに、違法製造された魔導兵器が何丁も押収されてるなんて。」


 彼女の言う通り、厳正に管理されているはずの魔導兵器が非認可の非魔女の手に渡っている。その事実だけで国際問題になりかねない重大事件だ。にも拘らず、それが何丁にも亘って違法に製造され、過激派活動家組織に流れているともなれば———


「政府関係者が聞いたら泡を吹いて卒倒するかもね。」


「笑い話にもならないわよ。」


 危機感の無いあかりが呑気に零す言葉にエレナが顔を歪めて呆れた声を返した。


 実際、それが冗談で済まない状況ではありますわ。これが単にデモ集団の一集会の内で留まっている話ならまだしも、入手経路が分かっていないのであれば、それは恐らく———


「・・・じゃあこれがもし、反魔女派のデモ集団の全体に出回ってたら・・・・」


 私が考えていた懸念をフレンダが杖を握りしめて恐る恐る代弁する。


 そう。他の集会にそれらが出回っていても何らおかしいお話ではない。むしろ、出回っていると考えた方がいいでしょう。


 そんな見るからに不安そうな彼女とは対照的に落ち着いた様子のあかりは変わらず軽い口調で答えた。


「そのうち必ず良くない事が起こるでしょうね。ほぼ間違いなく、デモの範疇には収まらないわ。」


「さらっと不吉な事をおっしゃらないでくださる?」


「そうだけど、実際そうでしょう?事実として、通り魔事件がその典型例だし。」


「そうかもだけど・・・・」


 あかりの真っ当な返答に私もエレナも素直に納得するしかなかった。あの時は軽い暴行事件に留まったが、今度はそうはいかない。多数の魔導兵器が確認されている以上、想定されるその規模は甚大なものになるだろう。


 重く暗い空気を漂わせるフレンダ達を気にしつつもあかりはこうも続ける。


「ともあれ、魔導兵器による魔力汚染の危険もある。真偽はどうであれ教団は迅速な対応を迫られるでしょうね。」


「で、でも、どうして魔導兵器を使うの?使ったら汚染されちゃうんだよ?」


「それすら厭わないって事でしょ。自分の主義主張の為なら命さえ惜しまない、はっきり言って馬鹿らしいわ。」


 困惑するフレンダの言葉にエレナが勝手な憶測を語る。彼らの行動原理を探るのは不毛だ。一様にその全てが偽善であり自己満足に等しいものなのだから、私達が理解できるものではない。


 呆れた様に肩を竦めるエレナの横で私はこの話題を終わらせる様に彼女の話を遮った。


「はいはい、そこまでですわ。捜査がどう転ぼうとも、あとは教団の仕事ですわ。私達が気にしたって仕方がないでしょう。」


 憶測はあくまで憶測。ここでいくら考えたところで意味は無いでしょう。


「・・・それもそうだね。もう遅いし、そろそろ帰ろうか。」


 それに同意する様にあかりもそう言って肩を落とした。そして、彼女の言葉に促されるまま私達は徐に帰り支度を始める。


「ところで、さ。」


「・・・・・ん?」


「いつまで浮いてるの?フレンダ。」


「え?」




 あかり達とそんな会話をしたのが、ほんの数日前の事。あの時は憶測の範疇を出なかったというのに、それからさほど月日も経たずにその事件は起きた。


「あかりの予感が見事に的中しましたわね。」


 そう口にした私の手元には事件の事が掲載された新聞が置かれている。そこには見出しに大きな文字で『ロンドン教会支部 襲撃』と書かれ、次いでその詳細が事細かに書かれている。


 魔女反対を主張する組織がロンドン教会支部の襲撃、教会支部庁舎の壁が一部破壊され火災も発生する事態に。使用されたのは魔導兵器か?——などと、記者による調査内容とその憶測が書かれており、文章の横には出火し黒い煙を揚げている庁舎の画像が掲載されている。


 私は資料から視線を上げ、あかりの顔を見た。


 現在の場所は修道院第三区画、図書室の一角。物静かな部屋の空気に当てられながら私はあかりと向かい合う様に座っている。一方で、机を挟み対面に座る彼女は真剣な表情をして何やら大量の資料を広げて読み漁っている。


 すると、彼女は片手間に私の言葉に返答した。


「予感も何も、おおいに想定できた事でしょ。訴えに応じなかったら暴力に走るのは、世の常だもの。デモもそうだし、それを取り締まる法的機関もね。」


「言えてますわね。」


「とはいえ、これで教団としては一層対応を迫られる事態になった。いよいよ彼らは手段を択ばない。目的の為なら自他の命も犠牲にして無意味な抗議を続けるわ。」


 淡々と話すあかりの言葉に私は静かに同意する。本当に恐れていた懸念が現実味を帯びてきた。『魔導兵器によるテロ行為』。現状として幸いにも死者はいないものの、それがいつまで続くのかは定かでは無い。


 それこそ彼女の言う通り、彼らはもう手段を択ばない。


「本当に気が知れませんわね。彼らがどれ程抗議しようと、魔女が人間である事実は変わりませんのに。」


「それが分かってたらこんな事はしないわよ。彼らはただ盲目に、自分の考えを他人に圧しつけたいだけなんだから。」


 手元の資料をペラペラと捲りながら話すあかり、それを見て私はずっと気になっていたその手元の資料の事を尋ねる。


「さっきから、何を見ているんですの?」


「ん?あぁ、これ?反魔女派がこれまで起こしたデモの記事だよ。尤も、地域をイギリスに絞ってはいるけどね。」


「どうしてそんなものを?」


「いやちょっと気になる事があってね・・・」


「気になる事?」


「うん・・・」


 そう言って彼女は何も答えない。こちらが尋ねているにも関わらず彼女は素知らぬ顔で資料を読み進めている。


 一向に答えを返さない彼女に対して、私は痺れを切らして彼女に催促した。


「・・・・あかり。」


「ん?」


「気になる事とは?」


 そう訊かれてようやく理解したのか、あかりは資料を私に差し出して話し始める。


「今問題になってる反魔女派のデモは、一月前にイギリス辺境で起きたデモが発端で始まってる。きっかけは、以前に話したあの記事。独房内で被告人が悪魔化した事が、教団の魔女よって故意に引き起こされたものだと反魔女派の人間は主張し始めた。」


「まったく、馬鹿な話ですわね。あんな低俗な記事に騙されるなんて・・・・」


「そうね。でも、人は都合の良いところしか見ないから。」


 どこか含みのある口調でそう語るあかりに、私は視線を向ける。だが、彼女は私の視線に気付く事は無く、資料を捲りながら続きを話す。


「最初こそ、ごくごくありふれたただの抗議活動だった。けれど、日を追うごとにそれが過激になっていき、次第に暴徒化。たった一月の間に暴動どころか銃の乱射事件にまで発展してる。そして、その僅か数日後に起きたのが、今回のロンドン教会支部の強襲・・・最早彼らがやっている事はデモの範疇を優に越して、狂信者のテロに等しい。」


 あかりの表情が気になりつつも手元の資料に目を落とし私も自分の見解を口にする。


「こうして改めて聞くと現代の人間とは思えないほど蛮族な連中ですわね。人としての知性はどこに置いてきたのかしら。・・・けれど、そんな変に思うところなどございました?こう言ってはなんですけれど、過激化に暴徒化はデモの行き着く果てでしょう。アナタもさっき似た様な事を言っていたではありませんの。」


「それはそうだけれど、私が気になってるのはそこじゃなくて起きた場所とその被害規模。」


「場所?」


 あかりの言葉を聞き私は再び資料に目を通す。しかし、不審な所は見つけられず私は改めて彼女に尋ね返した。


「・・・おかしな所はないように思えますけれど。」


「一つ一つはね。でもさ、デモってそもそも広がっていくものであって、移動していくものじゃないでしょう?」


 あかりにそう言われ私はすぐに記事からデモが起きた場所を確認する。すると、あかりは私の近くに地図を広げてその場所を指し示した。


「最初はスコットランドのスターリング、次にエディンバラ、グラスゴーシティに続き、イングランドのカーライル、マンチェスター、バーミンガム、そして、ロンドン。」


 あかりが口にする通り、デモの発生地点はイギリス国土を縦断する様に起きていた。まるで、意図的にデモを誘導しているかの様に。


「今、イギリスで多発しているデモ活動は辺境地から首都へ移動する様に起きてる。しかも、これまでに複数個所で同時にデモが起きた事は一度もない。不思議な事にね。そして、首都に近づくにつれて集団は武装化し、被害規模が大きくなってる。これじゃあまるで、内戦化の革命軍みたいじゃない?」


「先導者がいるとでも?」


「むしろ、民衆の自由意志によって引き起こされているものにしては、統率が取れ過ぎてる。」


 確かに、何者かに指示を受けている様な動きを感じますけれど・・・


「・・・・言いたい事は分かりますけれど、少し強引な考えではなくて?」


 私がそう尋ねると彼女は肩を竦めて拍子抜けの答えを返す。


「ええ、私もそう思うわ。」


「———っ、ちょっと。アナタが言い出したんじゃありませんの。」


「だって、証拠なんてないもの。ただの私の憶測。」


 顔が引きつる私を差し置いて彼女は諦めた顔でそう言う。その態度に私は苛立ちさえ覚えそうだ。確かにその通りではあるのだが、彼女の好き勝手に思考をかき乱される様で頭にくる。


 その自由奔放さにため息が漏れる私の横で彼女は徐に声を漏らす。


「た、だ・・・・」


 その声に私が視線を上げると椅子の背もたれにもたれ掛かった彼女は私に尋ねる。


「襲われたロンドンの先には、何があると思う?」


「・・・・先、とは?」


 意味も分からず私があかりに尋ね返すと彼女は身体を起こし地図の図面を指でなぞる。


 そして、ある場所を叩いた。


「まさか、ここが襲撃されると言いたいんですの⁈」


 私は場所も弁えず声を上げた。当然、周囲の視線が私に向けられる。だが、あかりが指し示したそこは紛れもなくこのストレガだった。


 周囲の痛い視線に肩が竦む私と相反して、それを気にも留めない様子のあかりはこう続ける。


「無くは無い話でしょ?事実ここは、教団組織において教団に次いで重要な施設。更に言えば彼らが忌むべき魔女の巣窟でもある。魔女反対を掲げる組織が行き着く果てとしては、これ以上にない場所だと思うけど?」


 それはそうでしょう。が、しかし———


「あり得ませんわ。ここに在るのは他ならないイギリス教会本部なんですのよ?」


「それを言ったらロンドンだってそうよ。」


 あかりの正論に私は返す言葉もなかった。ロンドン教会支部はイギリス国土内において修道院に次いで大きな基地。それが、悪魔でもないただの人間の襲撃を受け損害を被ったのだから、この修道院も一概に安全だとは言い切れないのかもしれない。


 しかし、だとしても———


 現実としてあり得る事態に私は思わず黙り込んでしまった。『修道院襲撃』、そんな最悪な事態を私は安易に想像してしまう。


 そんな私を気にかける様に、あかりは肩を落として話す。


「もちろん。ロンドンと比べて修道院は人員も設備も比べ物にならないわ。そもそもの話、ここが襲撃を受けるかどうかも分からないし。それが通るのかも定かじゃない。———だけど、だからこそ気になるのよね。」


「何がですの?」


「支部とはいえ、教団の一拠点を襲撃できた理由がよ。武装していたといっても相手はただの一般人だよ?それが、かのイギリス教会の第二拠点を易々と襲えると思う?警備に穴があった訳じゃないでしょうに。」


 含みのある言い方に私の顔が歪む。


「・・・・何が、言いたいんですの?」


 そんな分かり切った事をあかりに尋ねると、彼女は少し考えるそぶりを見せた後、徐に答えた。


「・・・・別に?ただどうしてかなって思っただけだよ。」


 あかりはまた含みを持たせた言い方をする。まるで、もう既に真相にたどり着いている様な、曖昧な返答。


 『証拠はない』。今ここで私がそれに言及しても、あなたはそう返すだけなのでしょう。今語った事は全て彼女の憶測に過ぎず真実とは異なる、と。


 だが、もしそれが本当に真実だとすれば、それは重大な問題ではないのか。


「あかり、ハッキリ言ったらどうですの?」


 私がそう尋ねると彼女はおどけた表情をして言葉を返す。


「何を?」


「一連の事件の真相を、ですわ。」


 すると、彼女はからかう様に笑みを浮かべて言う。


「なーに?あとは教団の仕事だから、気にしたって仕方がないんじゃないの?」


「揚げ足を取らないでくださる?」


 不機嫌な声を漏らしてあかりを睨みつけた。その視線に当てられ微かに笑みを零した彼女は、諦めた様にため息を吐き、自身の考えを話し始めた。


「真相も何も。結局は、反魔女派が起こしたただの暴動としか言えないでしょう。そこにどんな裏があったとしても、私達は知る由もないんだから。」


「では、彼らがロンドン教会支部を襲撃できたのは単なる偶然だと?」


「ええ。偶然。」


「統率が取れている様に見えるのも?」


「ええ。ただの偶然。」


「・・・・・。」


 納得のいかない答えに顔が更に険しくなる私をあかりは一瞥して諭す様に続ける。


「カチューシャ。貴女の言いたい事は分からないでもないけれど、証拠が無ければ、それは『単なる偶然』以上にはならないんだよ。一見筋が通ってる様に見えても、ね。」


「けれど、偶然が重なれば、それは『必然』だと言えるのではなくて?」


「それを証明できればね。でも、私達シスターにはそれすら極めて困難でしょ?それは言うまでもなく、私達には『立場』が無いから。」


「・・・・・」


「ね?結局、ただの憶測の域を出ない。いくら考えを巡らせたって意味なんかない。所詮子供の戯言だと、一蹴されるだけでしょう。だから、貴女が言った通り。〝気にしたって仕方がないの。〟」


 彼女の言う事は正しい。そもそも証拠がない事に加え、私達はシスター。つまり、修道院に在籍する一生徒でしかない。そんな者の憶測など誰が信じるというのだろう。


 だが、そうだとするなら彼女の行動には一つの矛盾がある。


「でしたら。アナタはどうしてここまで調べたんですの?」


 一つにまとめた資料を机に叩きつけて添えているあかりにそう尋ねると、彼女は目を丸くして私を見つめる。


 気にしたって仕方がない。そう口にする割に、彼女はここまでの情報を集めた。相応の時間を掛け資料を精査し、その見解を導き出した。それは、これまでの言論を否定する行為ではありませんの。


 つまり———


「意味があるから、調べたのではなくて?」


 真っ直ぐと彼女の眼を見て私は尋ねた。すると、彼女は私から視線を逸らし、しばらくの沈黙の後に、静かに


「無いよ。ただの興味。」


 と、答えた。


 その言葉が嘘である事くらい、すぐに分かる。彼女は明確に『なにか』を隠している。そして、それは恐らく修道院——延いては教団にとって不都合な真実。


 それが何なのかは大いに想像がつく。一シスターが集めた不確かな情報であっても、容易に辿り着く結論。


「・・・・内通者。ですわね。」


 私がそう言葉を漏らすとあかりは途端に私を睨みつける。


「なんですの?『所詮は子供の戯言』なのでしょう?」


 しかし、自ら吐いた言葉を返されて彼女はバツが悪そうに視線を逸らした。


「けれど、そう考えれば諸々の筋は通りますわ。現場から消えた魔導兵器。本来襲撃の敵わない支部への攻撃。そもそもの問題である、魔導兵器の違法製造。それらが全て内通者によって手引きされたものであれば、ある程度の現実味を帯びます。」


「でも、もしそうだとすればそれはそれで問題でしょ。」


 頬杖を突きあかりが呆れた様にそう漏らす。


 ・・・そう。もしそれが事実であるならば、それはこのテロ行為とは別の意味で問題ですわ。


「教団からそんな問題が発覚すれば、生活の安全保障と治安維持が揺らぎかねない。ただでさえ、教団は未だにデモの鎮静化どころか彼らのテロ行為を許してしまっている。現状、これ以上の失態を曝す訳にはいかないでしょう。・・・尤も、そんな事実が発覚したところで公になるかどうかも分からないけれど。」


「だとしても、それが事実であれば早急に対処すべきですわ。」


「『事実なら』ね。でも、それこそ私達の『妄想』に過ぎないわよ。現に証拠なんてないんだから。出てくるかどうかも定かじゃない。下手に教団ないし修道院に密告すれば、虚偽申告でこっちが捕まるわよ。」


 すっかり諦めた様子で肩を竦めて話すあかりに私は同意せざるを得ない。彼女の言う通り、あるのは状況から考えられる可能性であって、物的証拠がある訳ではない。そんな状態で動いたところで罪に問われるのは私達の方ですわ。


「だ・か・ら。結局、結論は変わらないの。」


 釘を刺される様にあかりにそう言われ私は肩を落とした。仕方ない事とはいえ、何もできない事にどうしようもないもどかしさを感じる。限りなく真相に近い筈なのに、立場の無い私達にはどうする事もできないなんて・・・・


 そんな事を思っていた次の瞬間、第三区画では先ず聞く事のない爆発音と地響きが届いた。

大っっっっっっっっっっっっっ変っっっっお待たせしました!

ええっと、半年ぶりですね・・・・・

なんだか回を重ねるごとに更新速度が遅くなっていて本当に申し訳ありません。

ここ半年色々ありまして、長年プレイしてきたアプリゲームの突然のサ終だったり、突然趣味が増えたり、そもそも筆が重かったり、設定を考える方が楽しかったり、と。

まあ、出せば出すほど言い訳しか出てきませんが、でも!描きたいことはまだ全然描けていないので!

なので、その・・・気長に待っていただけると幸いです。

そして、今回で今年の更新は最後だと思うので、早いですが、皆様よいお年をお迎えください。

では、次回もお楽しみに。



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