54.消えた魔導兵器と疑念
人型の悪魔騒動からしばらく経ち、イギリスも秋口に近づいてきた頃。ようやく涼しさが戻りつつある中、私はいつものチームメイトと一緒に屋外演習場に来ている。
もうすっかり講義終わりに練習するのが日常化しており、今日も甲斐甲斐しく集まり練習に励む———
・・・筈だったのだが。
「わっ‼わわわっ!ねぇカチューシャ‼私、今どっち向いてる⁉地面どっち⁉」
そう叫んで慌てふためいているフレンダは、完全に混乱してしまっていて不必要に足をバタつかせている。
というのも、彼女は今、地面から二メートルほど離れた空中で逆さまになって浮かんでおり、まるでコマの様にくるくると回っているのだ。そんな状況で混乱するなと言う方が無理な話だろう。
———それはもう、お互いに。
「落ち着きなさい。地面はこちらですわ。冷静に状況を見なさい。」
その見るに堪えない様子にため息を吐くカチューシャが呆れた表情で助言をかける。——が、フレンダは変わらず動揺した様子でキョロキョロと周囲を見回しながらカチューシャに訴えた。
「でもでも!こっからどうやって姿勢戻せばいいの⁇」
「はあ・・・」
依然としてフレンダの身体はくるくると回り、止まる気配はない。彼女は必死にめくり上がるスカートを押さえて姿勢を戻そうとしているが、姿勢が戻る気配どころか回転が増す一方だ。
そんな哀れな彼女の姿にカチューシャはあからさまに大きなため息を吐き、仕方なさそうに彼女の元へ駆け寄る。
それを見て私も思わず苦笑を漏らした。
「何?この状況・・・・」
そこへ不意に現れたエレナが困惑気味に声を零す。
声に釣られて振り向くと、いつの間にか一連のやり取りを目にしていたらしく、見れば引きつった表情をしたエレナと、その後ろには眠そうなヘレンがエレナの腕にしがみつきながらフラフラと立っていた。
そして、説明を求める様にエレナが私を見てくる。その視線に気圧される様に私は状況の説明を始めた。
こんな状況になった経緯は遡る事一時間前———
鐘の音と共に講師から講義終了の号令が掛かり本日最後の実戦講義が終わった。今まで張りつめていた緊張が解かれ、受講していたシスター達は途端に疲弊を訴える様に息を漏らす。
そして、各々仲間内で集まりながら汗を拭ったり、水を飲んだり、その水をかぶったりと講義の疲れを紛らわしている。
そんな中、唐突にフレンダがカチューシャに向かって声を上げた。
「カチューシャ!私に浮遊魔術を教えてくれないかな⁈」
思わぬ言葉にカチューシャが一瞬硬直し、徐に私を見る。そして、心底嫌そうな顔をして私に尋ねてくる。
「・・・・今度は何を吹き込んだんですの?」
「なんで私が何かをやった前提なのよ。今回は何も言ってないわよ。」
余りに心外過ぎるカチューシャの言葉に私は不機嫌な声を返した。だが、カチューシャの表情は変わらない。
全く。貴女にそんな真っ先に疑われる程、普段変な事は口にしてはいない筈なんだが・・・彼女の感覚では、どうやら違うらしい。
———というか、そもそも変な事を口にした覚えもないのだが?
なんて、傷ついた私の心情を察してかすぐにフレンダが反論する。
「そうだよ!あかりはなんにも悪くないよ。」
「でしたら、どうしてそんな事を私に訊くんですの?」
フレンダの反論も空しくカチューシャが呆れた声でそう尋ね返した。
確かに、彼女にしては少しばかり奇抜な発想だ。浮遊魔術は普段使う機会のない魔術、急にそれを教えてほしいと言うのは変と言えば変と言える。
すると、フレンダが気恥ずかしそうに指を合わせながら理由を話し始めた。
「ほら、さっきの実技演習。私がずっと足を引っ張ってたでしょ?私の動きがとろいから。だから、空でも飛べたら少しはマシになるかなって。思って・・・」
合わせた指の後ろから様子を伺い探る様に話すフレンダに対して、呆れ顔のカチューシャは冷たくキッパリと断言する。
「なる訳ないでしょう。術に翻弄されて余計に足を引っ張りますわ。」
「やっ、やってみなくちゃ分からないでしょ!」
「やらなくても明白ですわ。大体、教えてもらおうという時点で話にすらなりませんわ。」
フレンダの反論も意に返さずカチューシャは彼女の意見を断固として否定し話を切ろうとする。途端に場の空気が一気に冷たくなり、二人の表情がどんどん険しくなっていく。
「カチューシャ。」
二人の様子に見かねて私がそう声を掛けると、こちらの意図を察してカチューシャが大きくため息を吐いた。
そして、仕方なさそうにその理由を話し始める。
「あのね。失敗するのはある意味当然ですわ。経験が圧倒的に足りませんもの。何処ぞの莫迦はおいておいて、私だってそうですわ。」
唐突に飛んできた言葉の槍に私は顔を歪ませた。けれど、カチューシャは構わず続ける。
「———ですから、私達は演習を重ねて強くなっていくんですの。最初から完璧にできる人などいませんわ。」
「でも・・・」
「でもじゃない。もちろん、そういった戦術を否定したりはしませんわ。それが有効である場合もあります。けれど、そういったものはしっかりと基礎ができてから取り入れていくものですわ。」
「・・・・うん。」
正論で詰められフレンダは残念そうに肩を落として落ち込む。彼女なりにチームの事を思って考えた事だったが為に一蹴されて相当ショックだったのだろう。
そんな彼女を見てカチューシャはバツが悪い顔で頭を掻き、そして———
「けれど・・・まあ、一度くらい試してみます?」
仕方なさそうにそう提案した。フレンダの顔が途端に花が開く様に明るくなる。
「それで、これと。」
「うん。」
その結果がこれなのである。
ふよふよと不安定に浮かぶフレンダ、それを下から眺める私達という不思議な構図が出来上がった。
傍から見れば異様な光景に違いない。
あれから時間は戻り、場所は第七区画の第八屋外演習場。空は薄っすらとオレンジ色に染まり、一日の終わりを密かに教える様に高く遠くに映っている。
あの後すぐにこの演習場を借り、カチューシャ指導の下浮遊魔術の練習が始まったのだが、カチューシャの努力の甲斐あってどうにか浮かぶところまではいったものの、そこからの姿勢制御に難航している。
どうゆう訳か油断するとすぐに逆さまになってしまう。らしい。
「うう~ん・・・結構難しい・・・・」
フラフラと身体を揺らしながらフレンダは戻してもらった姿勢を維持してそう漏らす。すると、地上へ戻ってきたカチューシャが腕を組み当然と言う様な顔で声を掛ける。
「そうでしょう?これが戦闘ともなればもっと混乱しますわよ。」
「う~ん・・・良い案だと思ったんだけどなー」
「現実はそう甘くはありませんわ。」
厳しいカチューシャの言葉にフレンダは膝を抱えて項垂れる。思い通りの結果にならず不服そうにうなり声をあげている。
ただ、フレンダの発想も決して悪いものではない。
浮遊魔術による飛行が可能になれば、当然それだけ戦闘の幅は広がる。それは後方支援が役割であってもその恩恵は大きい。事実、浮遊魔術を器用に使う狩り人を一人、私はよく知っている。
けれど、そんな事は知らない失意のフレンダの姿を眺めながらカチューシャが肩を落として徐に話す。
「しかしまあ、こうして見ていると・・・段々腹が立ってきますわね。」
「なんで⁉」
驚いて声を上げるフレンダにカチューシャが呆れた様子で言葉を返した。
「・・・あのね。さも当然の様に浮いていますけれど、浮遊の維持は大抵の場合、相当苦労するものですわ。ですわよね?」
そして、急に私に話を振ってきて何気なしに訊いていた私は一瞬困惑する。何故私に振るのか?と彼女の意図に戸惑いながらも私は質問に素直に答えた。
「ん?うん。何で浮かびもしない私に訊いたのか分からないけど、そうだよ。」
「そうなの?」
気の抜けた声で尋ね返すフレンダに私は更に続ける。
「うん。箒と違って他の魔術の補助を受けずに浮遊を制御しなきゃいけないからね。浮かび上がるだけならともかく、浮かび続ける事は結構難しいの。根本的な魔力の負担もあるしね。」
「なるほど——わわわっ!」
「なるほどって、何もわかってないみたいだけど?」
「だから、余計に腹が立つんですわ。私だって長時間浮かべる様になるのに三日はかかりましたのに。それをものの一時間で・・・」
「まあ、フレンダは魔力には恵まれているし、意外と天才肌なところもあるから。」
フレンダの反応に呆れるエレナと頭を抱えるカチューシャ、そこに私が言葉を足した事で更に二人の表情が険しくなる。二人して眉間に指を当ててため息をつきながら呆れ返っている。
「何よ!その反応~!」
一方で、フレンダは二人の反応が気に喰わず不満気な声を上げた。両手を振り上げ不満をぶつける様に二人を威嚇する。
すると、途端にバランスを崩して身体が大きく揺れ出す。慌ててフレンダがバタバタと暴れながら再び不安定な安定姿勢に戻し、彼女はゆっくりと胸を撫でた。
その様子に、見てるこっちがヒヤヒヤする。
それにしても、薄々気づいていた事だけれどフレンダは呑み込みが早い。前回の自主戦闘訓練はさておき、基本教えられれば卒なく熟すところがある。
カチューシャの三日というのも相当早いのに、ものの一時間弱で浮遊を比較的安定して制御しているのは正直異常とも言える。
まあ、魔力の恩恵が一番大きいとは思うけれど———
「にしても、だいぶ上手くなったね。最初、ロケットみたいに飛んでいった時はどうなる事かと・・・」
それはそれとして、開始当初に比べてかなり上達したことを素直に伝えると、フレンダは途端に顔真っ赤にして恥ずかしそうに言う。
「ちょっと!恥ずかしいから言わないでよ!」
と言うのも、ここに来て初めての浮遊魔術を使用した際にフレンダが魔術制御の加減を誤り——と言うより、魔術式に魔力を全力で注いでしまったが為に、浮遊魔術とは思えない速度で上空へ飛んで行ってしまったのだ。
その姿は本当にロケットの様で、後にカチューシャがどうにか救助したが、こんな所でも膨大な魔力が仇となっていた。
「ナニソレ、すごく見たい。」
そして、そんな明らかに面白そうな事実をエレナが見逃すはずはなく、ヘレンと一緒にキラキラと輝く目をして興味津々に彼女に問い詰める。
圧の凄い意地悪な二人に迫られ動揺するフレンダは、二人を諫める様に声を上げつつ情報を漏らした私に文句を吐く。
「ちょっとあかり!何でバラしちゃうの!もお~‼」
その声に当てられて私達は笑みを零した。フレンダがいい様におもちゃにされている。
「あかり様~?」
そこへ不意にクロエがやってきて私の名前を呼ぶ。そして、トテトテと私の所に駆け寄ってくる彼女に対して、私がここへ来た要件を尋ねると彼女は端的に話す。
「先生が呼んでらっしゃいました。サリー先生です。何でも話があるとかで、第三区画のいつもの第五職員室まで来てほしいとの事です。」
「サリー先生が?何だろう・・・ごめん、ちょっと行ってくる。」
「は~い。」
そう言って小さく手を振るフレンダに見送られて私は演習場を後にした。その最中、背後からクロエの困惑した声が聞こえる。
「・・・ところで、何してるんですか?」
一人静かに演習場から移動して第三区画の第二職員棟に私はやってくる。ここまで来ると流石にシスターの姿は少なく、代わりに教員を含めた現役の狩り人や神官の姿がほとんどになる。
そんな重々しい人たちに囲まれて謎の緊張感が漂う中、私は第五職員室の前までやってくるとガラガラと音を立てて扉を開けた。その先にはたくさんのデスクとパソコン、書類が並べられたオフィスが広がっている。
以前にも目にしたその光景に私が断りを入れて入室すると。それに気づいたサリーが手を振って私を呼ぶ。彼女に誘われる様にデスクの間を抜けて彼女の前まで来ると彼女は申し訳なさそうに言う。
「ごめんね、あかり。わざわざ来てもらって。」
「いえ。それより話ってなんですか?」
サリーの謝罪を軽くあしらって私が本題を尋ねると彼女はキィと椅子を鳴らして私に向き直る。
「覚えてるかな?三か月前くらいにあった非魔女によるシスター暴行事件。」
「あの通り魔事件の事ですか?」
「そうそう。それに使われてた魔導兵器って、これ?」
そう言ってサリーはデスクに置かれていた一枚の写真を手に取り私に差し出す。それを受け取って確認すると、そこに映っていたのは通り魔事件で紛失した魔導兵器だった。
「そうです。でも、どこでこれを?」
写真をサリーに返し私は訝し気にこれの詳細を尋ねた。すると、彼女は受け取った写真を見ながら複雑そうに答える。
「別の捜査で出てた子が見つけたの。ほら、最近話題になってる反魔女派のデモ活動ってあるでしょ?」
「はい。」
「その集会の組員の一人が隠し持ってたんだって。」
「え?じゃあ、あの通り魔事件と今起きてるデモがつながってると?」
サリーの発言に困惑気味にそう尋ねる私に対して彼女は写真をデスクに置き困った様子で返答する。
「まだ直接的なつながりは見つかってないけど、その可能性は十分にあるかな。どっちも反魔女派思想絡みだったし。しかも、見つかったのはこの一丁だけじゃなくて、これを含めた銃タイプの魔導兵器が同じ集会の組員から何丁も押収されてるの。」
「何丁も、ですか。でも、魔導兵器は製造も含めて教団が厳重に管理しているのでは?」
次々に出てくる信じがたい事実に私は動揺と困惑を隠せない。だが、それはサリーも同じ様で私の言葉に彼女は複雑そうに答える。
「もちろん、そうだよ。ただ、勝手な改造や譲渡もそうだけど、魔導兵器にも違法製造はあるから全てを検閲できる訳じゃないんだよ・・・・特に銃タイプの物は構造が物理兵器と大して変わらないから、他と比べて作るのが容易なの。」
「では、相当な数がデモ集団に出回っていると?」
「どうかなぁ。魔導兵器の入手経路はまだ分かってないし、他の集会も同様にこれを持ってるかどうかはまだ・・・そもそも、押収された物が違法製造の物だとはいっても、リスクとコストから考えてそう大量に生産できる物じゃなんだけど——うぅんでも、こうして実物がある以上、それを疑わざるを得ないんだよねー・・・・・・あ゛。」
話の途中で突然サリーは思い出した様に声を漏らして苦い表情をした。今になってようやく自分が重大な情報を漏洩している事に気付いたらしい。そして、引きつった顔と滝の様に冷や汗を流しながら私に懇願する。
「あ、あかり?・・・・今の話ぃ・・・」
「分かっていますよ。内密に。ですよね?」
そう言って私が口の前で人差し指を立てると彼女は泣きそうな顔で言う。
「お願い。じゃないと私また怒られちゃうからぁ・・・」
「はい。」
相変わらずこの人は・・と、私は密かに呆れた。人が良いのは認めるけれど、こういうところを見るとよく狩り人の仕事が務まるものだと時折不思議に思う。まあ、そのおかげで色々と知れた訳だから余り悪くも言えないが。
などと、失礼にも現役の狩り人に対してそんな事を考えているとサリーが不意に尋ねる。
「あっ、そうだ。あかり、呼び出しついでにもう一つ訊きたいんだけど。」
「何ですか?」
「夏休みの直前に起きた街中での悪魔討伐。あの時、あなたはどうして応戦したの?」
「・・・どうして、今更そんな事を訊くんです?」
思いもしなかった言葉に若干戸惑いながら私がそう尋ねると、サリーは複雑な面持ちで更に続けた。
「ちょっと、気になる事があってね。ねえ、あかりは全部分かってたんでしょう?その意味も。危険性も。それが分かっててどうして応戦したの?」
「・・・気になりますか?」
「うん。あの事件を調べてると、余計にね。」
・・・・・ん?
調べてる?サリーがあの事件を?
サリーの担当って確か捜査第三課だったはず。でも、あの事件は中級悪魔が起こしたもので明らかに捜査第二課の仕事、サリーが関わるものじゃないような・・・
不意に漏れたサリーの言葉に気掛かりを感じつつも、真っ直ぐと私を見つめる彼女に対し私は肩を落として短く言葉を返した。
「気まぐれですよ。」
「はぁ。あかり、私は真剣に———」
「真剣ですよ、私も。」
サリーの言葉を遮り断言する私に彼女は目を見開いた。
「あの時、嫌な予感がしたんです。」
「嫌な予感?」
怪訝な表情をして声を漏らすサリーを横目に私は率直に当時感じた事を話す。
「はい。カチューシャが祈りの言葉を掛けた時に妙に不気味な気配を感じた。だから、私は彼女を止めなかったんです。彼女を止めればそれ以上に良くない事が起きる、そんな気がしたから。」
「不気味な気配、ね。・・・良くない事って、例えばどんな?」
「それは、上手く説明できません。ただ、『嫌な予感がした』としか。だから、理由を言うならやっぱり『気まぐれ』なんです。」
「・・・・そっか。」
私の話を聞き終えたサリーはどこか残念そうにそう漏らした。その腑に落ちない様な様子を見て私は彼女に尋ねる。
「何か、あるんですか?」
すると、彼女は我に返った様に私を見てしどろもどろに答えた。
「ん?ううん、なんにも。ただ、その・・・。あかりの事だからって、何かちゃんとした理由があるんだって思ってた。・・・なんか、可笑しいね」
「私はそんな賢くなんかないですよ。」
「ううん。そんな事ないよ。」
そう漏らした彼女はどこか悲し気で、どこか後悔を残している様な、そんな複雑な表情を漏らす。
その気掛かりな顔が意味するものを、私は深く詮索せず、伏し目がちに黙り込んだサリーに尋ねる。
「あの、もういいですか?」
「え?あーうん。ありがとう。」
「失礼します」
サリーの複雑そうな反応を気にしつつも私はこの場を後にしようとする。
「ねぇ、あかり?」
だが、それを引き止める様にサリーが呼び止めた。私は振り返りサリーの方へ身体を向けると彼女は真剣な顔で私に尋ねる。
「あなた。戦闘経験は、どこで?」
彼女のその言葉に私は思わず僅かに顔をしかめた。
「あなたの戦闘能力と判断力は、明らかに実戦の経験を元に身に付いたものでしょ?それも一度や二度程度のものじゃない。それほどの戦闘を、あなたはどこで———いえ、いつ経験したの?」
サリーから感じる疑念と悲哀。いつもの緩やかな様子とは打って変わり、人を精査する厳格な捜査官の様な様相をする。
彼女の質問は尤もだ。当然の疑問だとも思う。こんな齢十五の子供が戦闘馴れしているというのも気味の悪い話だろう。
けれど、その無神経な疑念に、私は嫌悪を覚える。
そんな彼女に、私は仄かに笑いかけてこう言った。
「おおよそ、ご想像通りですよ。こう見えて私はやんちゃ娘でしたから。」
すると彼女は、一瞬哀愁を帯びた顔をして私に教師らしく忠告する。
「・・・そっか。でも、あんまり無茶しちゃダメだよ。あなた達はまだ戦闘に加入する必要はないんだから。そういうのは現役の狩り人に任せなさい。」
「肝に銘じておきます。」
笑みを残したままそう言葉を残して私は改めてこの場を後にした。




