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悪魔狩りの魔女  作者: 華井夏目
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37.水と油に災難

「ねえ、あかり。ほんとに良いのかなぁ・・・こんな、それぞれ別行動しちゃって・・・」


 鬱蒼と生える木々の間を縫いながら(あかり)の後ろを歩くフレンダが心配そうに私にそう尋ねた。私は足を止め彼女を一瞥すると少し考えて、ゆっくりと答える。


「良いんじゃない?特段、行動に指定はされなかったから。まあそれでも、エカチェリーナとクレアの単独行動は少し気になるけど。」


 それを聞くとフレンダは少し呆れた様な表情をしながらやっぱり心配そうに森の中を眺める。今、私達は以前野外授業で来た保護生活圏外の森林公園でまた野外授業を受けている。


 授業内容はチーム行動の授業と称した魔物狩猟。指定された魔物を自力で見つけ出して一定数捕獲するという比較的簡単な内容だ。そして、先にも言った様にチーム行動の授業なので当然チーム別で行われている。


 だから、私達も例に漏れずチームで行動しているのだが、エカチェリーナとクレアは一緒に行動するのは効率が悪いだのなんだのと言ってそれぞれ単独で行動している。・・・・本心はこのチームで行動するのが嫌なのかもしれないが——


 そんな訳で二人とは別行動となった私達。一応、二人は私の索敵範囲内に捕らえてはいるものの、果たしてどうなる事やら見当がつかない。


「まあ、やる事はやるでしょう。それより、こっちはこっちでやっちゃいましょう?」


「はーい・・・」


 二人の事は気に掛けつつもフレンダは私の言葉に答え素直に私についてくる。まあ、何かあったら飛んでいける距離ではあるから——何とかなるだろう。


 そんな楽観的な考えを抱えながら私達は更に奥へと潜っていく。




「フレンダ!そっち行ったよ!」


「はーい!いっくよ~———章魚蘭の誘惑(アングレカム・テンプテーション)‼」


 高らかなフレンダの声と共に山羊の魔物が白い花の蔦に拘束される。捕まった山羊はジタバタと暴れ蔦から逃れようともがくが蔦は身体中に絡みついて離れない。


「やった!成功~!」


 私が追い立てた魔物を見事に捕まえてフレンダは嬉しそうに声を上げた。その微笑ましい姿を見ながら私は乱れた息を整えて言葉を漏らす。


「取りあえず一匹ね。」


「よし、この調子でどんどん行こ~!」


「ふふっ、そうね。でもその前に、この子を檻に入れて拠点に持って行かないと。」


 私がそう言うとフレンダは思い出した様に足元に置いてあった檻に魔物を閉じ込めた。山羊の魔物は助けを求める様に鳴き声を上げて檻の格子を角でガリガリと削る。可哀想ではあるが、少しばかり人間の都合に付き合ってもらおう。


 魔物を閉じ込めた大きい籠を抱えて私達が拠点に戻ってくると、偶然にも同じタイミングで帰ってきたエカチェリーナと鉢合わせになる。


「二人掛かりでこれだけ時間を掛けてようやく一匹ですの?随分とのんびりですわね。」


 相変わらず不満そうな声でそう言うエカチェリーナに私の背後でフレンダが怖いのかこちらに視線を向ける。私は抱えていた籠を下ろすと一応のチームリーダー様にため息混じりに言葉を返す。


「エカチェリーナ、これは乱獲が目的でも狩猟の時間を競うものでもないから。あくまで『チームワークにおける行動理念とその実践』を学ぶ授業。だから、そう急ぐ事もないでしょう?」


「それらを加味しても手際が悪すぎですわ。そんな調子では日が暮れてしまいますわよ!」


 彼女の口から返ってきた言葉に私は諦める様に肩を落とした。だが、私のその反応も気に食わなかったのか、エカチェリーナは更に感情的になって顔を歪める。


「もういいですわ。アナタ達はここで待ってなさい。後は(わたくし)がやっておきますから。」


 そう吐いて彼女は私達を森の奥へ消えて行く。その悲しき後ろ姿を静かに見届けていると、もう我慢の限界と言わんばかりにフレンダが声を荒立てる。


「なんなのよ!あの人‼自分ができるからって偉そうに!」


「そうね。」


「なんであかりはそんな平然としてるの⁈あかりはあんな事言われて平気なの?」


「前にも言ったでしょう?彼女は生真面目だって。多分、自分が出来てしまう為にのんびりやる私達を見てて余計にイライラするんでしょう。」


「だからって、あんな言い方しなくてもいいじゃん!」


「話し下手なのよ。プライドとかも相まってね。それに・・・あんまり時間を掛けてやってると成績に影響すると思ってるんでしょう。」


「そんな事あるー?」


「んー・・・まあ、あまりにも遅かったら多少はあるでしょうけど、少しくらいの遅れで減点はされないでしょうね。」


 私が魔物の入った檻を整理しながらそう言うと、フレンダは余計に納得いかない表情を浮かべる。どうにもフレンダは彼女が気に食わない、というか苦手らしい。


 だけど、さっきのエカチェリーナからは悪い雰囲気はしなかった。嫌味を言っている風にも。だから、あれは悪意ある言葉ではなく、本心から出た切実な本音なんだろう。


 とはいえ、チーム内の関係が依然不穏なのはよろしくない。特にエカチェリーナとクレアの関係が劣悪だ。二人は水と油の様に反発し合って分かり合おうとする気配すらない。


 ・・・まあそれは、私とフレンダともだが——


 しかし、チーム結成の時からずっと思っているが、こんな調子で本当にこの先やっていけるのだろうか。この先に不安しかない。


 ・・・・・そういえば、当のクレアは今どこにいるんだろう——


 そう思って周囲の気配を探ると、どうやらクレアは油のエカチェリーナの傍に居るらしい。エカチェリーナの気配と重なる様にクレアの気配を感じ取れる。二人の事だ、変にいがみ合ってないといいのだけど・・・


 そう思った矢先、二人の方から嫌な気配を感じる。それも、悪魔特有の粘り気のある嫌な悪意の気配——


 咄嗟に私は声を上げる。


「フレンダ、ついて来て。」


「えっ、ちょっと!あかり⁈どこ行くの⁉」


 突然声を上げて走り出す私にフレンダは困惑しながらも慌てて付いてくる。乱雑に伸びた枝木に身体を引っ掻かれながら私達は森の奥へ潜り込み二人の元へと急ぐ。


 その途中、ドンッという音と木が強く揺れる音がして嫌な気配が更に濃くなる。私は一層脚を早めた。


 ようやく二人の元に辿り着いた私達が目にしたのは、エカチェリーナとその目の前に体長およそ三メートルの熊の悪魔(グズリー)の姿。そして、少し離れて木の根元で力なく横たわっているクレアの姿だった。


「クレア‼」


 フレンダの叫び声に反応してエカチェリーナがこちらを一瞥する。だが、その隙をついてグズリーがその太い腕が振りかぶりエカチェリーナに襲い掛かった。


 私はすぐに帯を伸ばしエカチェリーナの腰を掴んで引き寄せる。


「ちょっと!なんですの⁉」


 そんなエカチェリーナの文句なんか聞き流してそのまま勢いでもう片方の帯でグズリーを切りつける。伸びた帯は大きくしなりグズリーの肩から脇腹に掛けてその巨躯を切り裂き、グズリーの身体は鮮血も見せずたちまち灰となって崩れ落ちる。


 狂暴なグズリーが灰になったのを確認すると、フレンダは横たわるクレアの元へ駆け寄り彼女の名前を呼ぶ。だが、彼女はそれには答えない。


 クレアの事は気になるがそちらはフレンダに任せて、咄嗟の事で忘れていた祈りの言葉をグズリーに掛ける。


「主は、汝を赦します。魔に呑まれた哀れなものよ、その魂に救済があらんことを。Amen.(アーメン)


 グズリーに言葉を捧げ胸の前で十字を切った私は視線をエカチェリーナへ移す。彼女は帯に引き寄せられた時に付いた土を払いながら不機嫌そうに立ち上がる。そして、その不機嫌な顔で戦闘に介入した私に突っかかる。


「何するんですの?」


「何って・・・切りに行くより貴女を引いた方が早いと思って。」


「そんな事を訊いてるんじゃありませんわ!グズリーの一体くらい私一人で倒せましたと言ってるんですの!」


「まあ、そうでしょうね。フレンダ、クレアの様子はどう?」


 興奮するエカチェリーナを軽くあしらって私はフレンダにクレアの容態を尋ねながら二人の元に近づく。パッと見た限りでは出血はしていないが、依然、横になったままのクレアは気を失っているのか全く動かない。


 二人の傍まで私が近づくとクレアの傍らに座り込むフレンダが深刻な表情でこちらを見て彼女の容態を答える。


「背中の骨が折れてる・・・たぶん、この木に叩きつけられた時に折ったんだと思う。」


「治せそう?」


 私もフレンダの隣に座り込み彼女の目を見てそう尋ねると、彼女は意を結した様子で言葉を返す。


「うん。やってみる。——花の園(フラワー・ガーデン)。」


 フレンダの声に呼応する様にクレアの身体が無数の色とりどりの魔法の花に包まれる。途端に花特有のくすぐったい香りが辺りを包む。


 フレンダがクレアを治療する間、私はエカチェリーナに事の詳細を尋ねた。


「何があったの?」


 すると、エカチェリーナはバツの悪そうに視線を逸らして言う。


「言う必要がありますの?」


「チームメイトが軽くない傷を負ってるんだから、説明責任はあると思うけど?」


 私の言葉に苦い表情をした彼女は少し言い淀む。だけど、少しして観念したのか渋々答え始める。


「彼女と少し・・・言い争いになりましたの。ちょっとした事ですわ。ですが、その最中に突然グズリーが現れて私達に襲い掛かってきたんですの。だから応戦しようとしたのだけれど、急に彼女が私を突き飛ばしまして——」


「それで、クレアはグズリーに木に叩きつけられた、と?」


「はぁ、全く。たかだか中三級悪魔程度にやられるなんて情けないですわね。」


「ちょっと!そんな言い方ないでしょ⁈クレアはあなたを助けようとしたんじゃないの⁈」


 クレアの治療を終えたフレンダがエカチェリーナの傲慢な態度に声を荒立てた。だが、フレンダの反応にエカチェリーナは態度を改めず傲慢に無責任な言葉を返す。


「頼んでなんかいませんわ。彼女が勝手に私を突き飛ばして、勝手にやられただけ。自業自得ですわ。」


「自業自得って・・・そんな言い方——」


「なんですの?私はただ事実を申し上げただけですわ。」


「事実⁈それのどこがよ!」


「そこまで。二人とも、ここが何処だか分かってる?」


 白熱する二人の言い争いに私が強引に割り込む。二人は興奮冷めやらない様子でお互いを睨みつけるが、私の言葉を聞き入れ不服そうに口論を止める。


 圏外での口論なんて殆ど自殺行為。修道院が管理するこの場所では遭遇しないかもしれないが、危険な魔物や悪魔が周囲をうろつく危険性がある中で口論の末に冷静な判断が出来なくなったら、その後どうなるかなど容易に想像できるだろうに。


 しかし、それを理解していない様子の目の前の二人に私はため息を吐き、温情を以って優しく諭す様に話す。


「圏外でのケンカはご法度、寿命を縮める事になるわよ。それに、まだいる。」


「・・・いる、とは?」


 エカチェリーナの思わぬ言葉に私は呆れで頭を抱えそうになりながらも鈍感な彼女に丁寧に答える。


「グズリー。まだ近くにいるわよ。」


 すると、エカチェリーナは呆れた表情をして首を横に振り私の言葉を完全に否定する。


「あり得ませんわ。周囲にグズリーの魔力は感じませんもの。今の一匹だけですわ。」


 改めて漏れたエカチェリーナの予想外な言葉に私は眉をひそめた。まさか、彼女は感じないのか?周囲のどんよりとした不吉な気配を——


「あかり?」


 そう漏らすフレンダも私の言葉を理解してない様で怪訝な表情で首を傾げている。


 二人が何も感じていないのであれば、この不吉な気配は一体何だというのだろうか。明らかに先ほどと同じ悪魔の気配・・・それも一つでなく、かなりの数の気配を感じるのだが・・・これは?


 ——魔術・熱源視を発動、周囲の熱を可視化させる。途端に明瞭だった私の視界は白黒のまるで色が限定化された様な視界へと変わる。


「蛇の目・・・」


 エカチェリーナが小さくそう声を漏らす。その横で今一度私が周囲の状況を確認すると、私達四人を取り囲む様に生物的熱源を多数確認した。その数は・・・ざっと数えて二十匹弱。大まかな身体の体型からさっき同じグズリーだと思うのだが、それだとおかしい。


「囲まれてるわ。」


「はあ?」


 一先ず、私が状況を伝えるとエカチェリーナが呆れた声を漏らす。貴女はいつまで呑気なんだとこっちが呆れるところだが、彼女が信じないのも無理もないかもしれない。


 通常、グズリーは群れない。単一で獲物を狩れる相応の力を持っている上に、魔力への渇望が強く、他の個体と一緒に行動すれば食料の奪い合いが起こるほど。その欲求の高さから食料強奪の為に共喰いが起こる事も珍しくない。


 結果、グズリーが群れで行動する事はほぼあり得ない。なのだが——


 なんて考えに耽っていると不意に殺気を感じる。しかも、それは私に向けられたものではなく隣のエカチェリーナに——


 咄嗟に私はエカチェリーナの腕を掴み強引に引き寄せる。


「何するん——」


 そんな声が聞こえた時には私のすぐ目の前をグズリーの太い腕と鋭い爪が横切っていた。背中から滲み出る冷や汗を感じなら私は追い払う様に帯を振りかざすと、グズリーは後方へ回避する。


 私が熱源視を解除する一方で間一髪のところで攻撃を逃れたカチューシャは、捨てられる様に私に引き寄せられた所為で私の後ろで尻餅をついている。怪我をした様子はない。


 一匹が先行して私達に攻撃したからか他のグズリー達もぞろぞろと草木の間から姿を現す。明確な脅威を目の当たりにすると、流石に二人も事の深刻さを理解して顔が一気に青ざめる。


「嘘、どうして・・・」


「まさか・・・また、気付かなかった?しかも、この数を・・・?」


 悪魔に囲まれるなどという最悪の状況に二人は動揺して言葉を失い動けなくなってしまっている。・・・いや、エカチェリーナは別の意味で動けなくなっているのか。


 私は声を上げて呆然としている二人に指示を出す。


「フレンダ、クレアをお願い。エカチェリーナ、掃討するよ。」


「——っ!わ、わかった!」


「・・・・・」


「エカチェリーナ!いつまで腰抜かしてんの‼」


「うっ、うるさいですわ‼」


 私に怒鳴られてようやく調子が戻ったのかエカチェリーナはいつもの意地の張った声を漏らした。


 何はともあれ、グズリーの群れとの戦闘に移行。戦闘術式、展開——


「主はここに来たる。悪しきものよ、心せよ。主は汝の罪を咎める、主は汝の行いを罰する、主は汝に終局を告げる。——」


 クレアの傍に付くフレンダが祈りの言葉を捧げる。声が響き、彼らの表情が僅かに揺らぐ。


天使の円環(カリツォー・アーンギラ)。」


 祈りを捧げるフレンダの声と重なる様にエカチェリーナの声が響いた。それと共に周囲に光の円環が出現し、周囲のグズリー一体一体に照準を合わせ彼女は一斉に光線を放つ。光条が木々の間を貫く。


 だが、エカチェリーナの光線を彼らは巧みに躱す。身体をしならせ光線の射線から身体を逸らしている。中には躱しきれず身体に光線を受ける個体も何体かいるが、それでも致命傷には至らない。


 エカチェリーナの第一射が終わると攻撃を免れたグズリー達が私達に攻撃を仕掛けてくる。三メートル近い巨躯が私達に迫る。


 私は彼らの攻撃を防ぎながら無策なエカチェリーナに指示を出す。


「前衛、務めます。貴女は各個撃破を。」


「うるさい!アナタの指図など受けませんわ!」


 そう言って彼女は近くにいるグズリーを順に攻撃を仕掛ける。だけど、動揺しているのかその攻撃はどれも疎かで、多少当たりはすれども肝心のグズリーの核に当たる気配はない。


 エカチェリーナの融通の無さに私はため息を漏らしながら、彼女の前に立ちはだかるグズリーの攻撃を受け流してその右足を切り落とす。


 すると、グズリーは悲痛な声を漏らして体勢を崩し、慌てて地面に前足を突いた。その隙を突いてエカチェリーナの光線がグズリーの核を貫き、身体が灰となって消え周囲のグズリー達に動揺が走る。


 けど、それも一瞬ですぐに彼らは私達への攻撃を再開する。更に私は三匹のグズリーの姿勢を崩すと後方のエカチェリーナが静かに動けなくなったそれらを灰に変える。そこから彼らの攻撃を防ぎつつ更に二匹と、急拵えの連携で私達は順調に数を減らしていく。


 次々とやられるグズリー達を目の当たりにして私とエカチェリーナを襲うのは分が悪いと判断したのか、残った彼らは攻撃対象を無防備なクレアとフレンダへと変更した。グズリーの猛威が二人に降りかかる。


 私は地面を踏み込み二人の真上へと跳ね上がる。そして、振り下ろされるグズリーの太い腕を空中で切り落とし、その背後に着地すると振り向き様に彼の両足を切断した。


 支えを失い私の方へと倒れてくるグズリーの身体に帯を突き刺し、そのまま私は帯を大きく振りかぶって別のグズリーへと叩きつけた。巻き込まれた二匹のグズリーは飛ばされてきた奴の重みで地面へと倒れ込み動けなくなる。それを、後に控えたエカチェリーナが処理する。


 残りは八匹。追い詰められた彼らは、それぞれ威嚇する様に喉を鳴らし両腕を高々と上げ立ち上がった。流石に三メートルある巨躯なだけあって、立ち上がればかなりの威圧だ。無意識の内に足が後退する。


 グズリーの圧に押されつつも私はこちらに襲い掛かってくる順にグズリーの手足を切り落とす。決して、エカチェリーナの攻撃の阻害にならない様に。確実に、一匹ずつ数を減らしていく。




「それで最後ね。」


「・・・・・」


 私が漏らした声にエカチェリーナは何も答えない。それどころかどこか不機嫌な表情で崩壊する最後のグズリーの灰を見つめている。


 その表情を気にしつつも私は改めて新手がいないかを確認する。


 悪魔の気配は・・・うん、もう無い。変わらず周囲に魔物達の気配は感じるが、悪意や殺意といった嫌な気配は感じない。一先ずは警戒を緩めても大丈夫そうだ。


「でも、どういう事?直前まで魔力を感じなかったよ?」


 戦闘が終わり安堵したのかフレンダが怪訝な表情をしてそう尋ねた。どうやら本当にエカチェリーナとフレンダはグズリーの接近に気付いていなかったらしい。


 いやでも、そんな事があるのか?二人の魔女が、それも直前まであれだけの数のグズリーに気が付かないなんて・・・フレンダだけならまだしも、エカチェリーナまで。


 これじゃあ、まるでグリゴリの時と——


「っん・・・」


 そんな事を考えていると眠っていたクレアが目を覚ました。彼女は目が覚めた途端飛び上がり開口一番に襲ってきた最初のグズリーの事を尋ねる。


「グズリーは⁉」


「大丈夫よ、全部終わったから。——とにかく、考えるのは後にしましょう。それより負傷したクレアを拠点に移動させてさっさと課題を終わらせましょうか。また、グズリーの群れにでも襲われたら堪った物じゃないから。一応、グズリーの事を先生に報告して。——そういう訳で、クレア。説明は後でするわね。」


 半ばクレアを無視して私がそう伝えると、彼女は私の言葉を素直に聞き入れゆっくりと立ち上がる。さっきからずっと静かなエカチェリーナも珍しく私の指示に従って私達の後を付いてくる。


 そして、私達は少しふらつくクレアの事を気にしながら一旦拠点へと戻った。

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