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悪魔狩りの魔女  作者: 華井夏目
29/64

25.予選、開幕

「はぁ・・・・」


 思わずため息が漏れる。遂に来てしまった新人大会。現在地点は第十二区画のスタジアム、その控室のベンチに座り込み頭を抱える(あかり)はこの後に控える新人大会に憂鬱になっていた。


 結局、何の対策も思い浮かぶ事なく無駄な時間を過ごしてしまった。


 いや、浮かばなかったというか、何が起きてもどうにかなるだろう、と楽観的に考えてしまって考えがまとまらなかったのだが・・・・言い訳にしかならないか。


 とにかく、当日なってしまった以上なる様にしかならない。腹を括れ。


 いやいや好くない。考え無しに行動した結果どうなったか忘れたのか?今からでも何か作戦を考えないと。


 何か・・・何でもいい・・・・・なんでもいいから・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・


「はぁ・・・」


「始まる前からため息ですの?」


 独り項垂れている私に気付いたエカチェリーナが呆れた声でそう声を掛けてきた。


「エカチェリーナ、どうしたんですか?」


「一応、アナタのブロックを訊いておこうと思いまして。何ブロックですの?」


「・・・Bブロックよ。貴女は?」


「Eですわ。でしたら、会うのは決勝ですわね。」


 どこか嬉しそうにそう返す彼女に対して私は無頓着に「そうなるね。」と返答した。すると彼女は何食わぬ様子でとんでもないことを口にする。


「では、決勝で会いましょう。」


「ちょっとエカチェリーナ?私、決勝に上がれるかどうか分からないわよ?」


 エカチェリーナの思わぬ発言に困惑する私を置き去りにして、彼女は妙に確信を持った声で「アナタは来ますわ、必ず。」そう言い残して立ち去った。


 その確信は一体どこから来るのか・・・あそこまで自信持って言われるとむしろ清々しいところではあるが、それでも彼女はどこか私を過大評価している気がする。彼女には何が見えていると——


「あっ、いたいた。あかり~!」


 不意にフレンダの声が響いた。その声に反応して周囲のシスターの意識がそちらへ向けられる。そんなシスター達の痛い威圧を感じながら彼女に呼ばれた私もすぐに声のする方へ視線を向けると、そこにはフレンダに加えてエレナとヘレンもいて、一緒にこちらへ近づいてくる。


 中でも見るからに楽しそうな雰囲気を出しているフレンダは軽やかな足取りで私の傍に駆け寄ってくると気分の落ち込んだ私の顔を覗き込んで言う。


「大丈夫?あかり。緊張してない?大丈夫!緊張してる時はね、手の平にTって書くといいんだよ。」


「何それ?」


 フレンダの言葉に意味が分からないといった様子でエレナが尋ねた。その反応にフレンダは「緊張しないおまじない!」と健気に答える。


「それを言うなら人って字じゃない?」


 そんな健気なフレンダを見て思わず笑みを零す私がそう訂正すると彼女は「そうだっけ?」と小さく首を傾げた。


 その反応に私はまた笑みが零れる。


「それはそうと、みんなどうしてここに?出場しないでしょう?」


 私がそう改めて三人に尋ねると唐突にエレナがキョトンとした顔をしてさも当然の様に私へ言葉を返す。


「どうしてって、あかりに活を入れる為に決まってるでしょ。」


「え?あー、そういう。」


「なによ、いけなかった?」


「いや、そういう訳じゃなくて——」


「まもなく、新人大会・予選Aブロックの競技を開始します。参加選手はステージまでお越しください。」


 私の言葉を遮る様にスタジアム内にアナウンスが流れた。それを耳にした該当シスターもとい選手は険しい面持ちで控室を後にしてステージへ向かう。緊張でピリついた雰囲気にこっちまで顔が険しくなっていく。


 すると、フレンダまで緊張した面持ちで言葉を漏らす。


「競技、始まるね。」


 ああ、始まってしまう。不安要素しかない新人大会が。なんて密かに頭を抱えていると怪訝そうにヘレンが私に尋ねる。


「いかなくていいの?」


「私はBブロックだから、まだいいの。」


「そ。」


「それで、結局何やるの?」


「それが私達もまだ知らないの。だから、これから発表じゃないかな。」


「え~、なんかドキドキする。」


 何故か選手の私以上に緊張した様子のフレンダにエレナは「あんたがドキドキしてどうするの。」と即座にツッコミを入れた。すると、落ち着かない花の魔女様はエレナにその心情を訴える。


「だって、この結果次第であかりの勝率が変わってくる訳でしょ?ドキドキしない?」


「たしかに。」


「そう?でも、あかりなら何が来ても大丈夫でしょ。」


「そんな事ないよ?」


 なんとも楽観的な三人の言葉に私は困惑した声でそう答えた。全く、いつもながらお気楽なんだから・・・でも、まあ。お陰で少し緊張が解れたかな。


 そんなやり取りを頼もしい三人としていると再び館内スピーカーが音を立てる。


「お集まりいただいた皆様!おまたせしました!これより三二一五年度新人大会を~、開催します‼」


 その言葉と共にステージの方から歓声が壁伝いに地響きの様に響いてくる。どうやら会場は相当な観客がいる様だ。


 その歓声からひしひしとこの大会の期待値を感じていると、控室の壁にホログラムが投影され会場の様子が映し出される。


「入学したての初々しいシスター達が集う本大会、今年は一体どんな物語を綴るのか!今から楽しみです!——さて、前置きはこのくらいにして。さあ皆様、きっと気になってうずうずしている事でしょう。肝心の今年の競技は~~~~?こちら!」


 その言葉と共に会場のディスプレイに今回の競技が表示される。そこに映し出されたのは——


「『バトルロワイアル』‼という事で競技内容は言ったってシンプル、戦って最後まで生き残った一人が今大会の優勝者だ!」


 バトルロワイアル・・・か。ああ・・・まあ、可もなく不可もなくって感じだろうか。やりようによっては上手く立ち回れるけど、ブロック内の選手次第じゃ予想外の事態に陥りやすい。冷静に状況を判断して選手を各個撃破ないし脱落を狙えば・・・それとも、一人になるまで逃げに徹するか?


「予選はA~Eの五ブロックに分けられ、それに見事勝ち上がった五名のシスターが決勝の舞台に立てます。さぁ、参加者三百五十名の中からたった一席の優勝席を奪い取るの一体誰なのか?期待の最初の試合、予選Aブロックの選手入場です!」


 そう実況が言うとAブロックの選手の入場が促された。その指示に従ってシスター達が続々とステージへ上がっていく。のだが、その誰もが禍々しいまである闘争心を漂わせている。


 ともかく一ブロック分時間がある、その間にある程度の方針を考えておかなければ——


「始まったね」


 不意にフレンダが漏らした言葉に私は相槌を打つが、私個人としては非常に頭の痛い限りだ。しかし、観客の三人は楽しみな様でフレンダに釣られる様にエレナも浮き立った声で気楽な言葉を漏らす。


「それにしても、バトルロワイアルとはね・・・大丈夫そ?」


「どうだろう・・・うん。まあ、何とかするよ。」


「がんばれ。」


 ヘレンが緩い応援を私に掛けたその時、館内に予選開始の放送が流れた。それと同時にモニター上でシスター達の戦闘が始まる。しかし、そこにはさっきまで平坦だったステージはなく、マグマが流れる火山地帯の様な場所が映っており、画面越しにも分かるほど禍々しい空気が伝わってくる。


 どうやら試合は平坦な地面ではなくあの地形でやるらしい。ははは・・・


 それを見た三人は選手の私に改めて応援の言葉を掛けると弾む心を隠し切れないまま客席へと戻っていった。その後ろ姿に私は手を振って静かに見送る。


「はあ・・・さて、作戦を考えますか・・・」

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