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悪魔狩りの魔女  作者: 華井夏目
17/63

15.相風呂は危険な予感

 あの後、リン先生に酷く指導を受けた(あかり)とフレンダは彼女に連れられエレナ達と合流した。


「あかり!フレンダ!」


 そう声を上げてエレナが出合い頭に私に飛びつく。いきなり彼女に抱き付かれた私は思わず身体が硬直してしまう。


 だが、余程私達の事が心配だった様で、私の肩でエレナは涙声を漏らす。隣でフレンダに抱き着くヘレンもまた安堵した様子で「よかった・・・」と声を漏らしている。


「ごめんね、心配かけて。」


 フレンダがヘレンの頭を撫でながら優しくそう言った。私も「ごめん。」と言ってぎこちない動きでエレナの背中を優しく叩いて彼女をなだめる。すると、次第に二人は落ち着きを取り戻し始め、涙声が治まっていく。


 しかし、今度は一転してエレナは膨れた表情をして私の頬を引っ張り不機嫌な声で言う。


「もうこんな無茶しないでよ。ホントにグリゴリは危険なんだから。ほんと、心臓が幾つあっても足りないよ。」


「ふぁい・・・」


「ふふっ、いい子。」


 そう言って彼女は私の頭を撫でた。十五にもなって頭を撫でて褒められると少し気恥しい気分になる。・・・というか、そもそもエレナは私を子共扱いしてないか?


 なんてやり取りをしていると修道院への道からぶかぶかの祭服を着たおさげ髪の小さな女の子が歩いてくる。歩みと共に綺麗な緑色の髪を揺らすその子は、自分の身長の二倍はありそうな独特な形の杖を突いて私達に近づき、無垢な笑顔を向けて私達に声を掛けた。


「おつかれさま~、こんな辺境にグリゴリが出るなんて、大変だったね~」


 その言葉に私は軽く会釈をして答える。だけど、彼女が誰なのかが分からない。でも、リンは知り合いらしく、かしこまった言葉遣いで声を返す。


「野外授業中の全シスターの無事を確認しました。現在、順次避難誘導を行っています。」


「うん、わかった。」


 リンの言葉に女の子は明るい表情で頷く。リンの反応からしてこの子は彼女の上司に当たる人なのだろうか。随分と子供っぽいが・・・


 まあ、今の時代、見た目で人の年齢を測れるものではない。と言うのも、どんなに子供の様な小さい身体でも、その中身は百歳を超えているというのは魔女の中では何ら珍しい話ではないからだ。現に、女の子と応対しているリンも見た目では二十代後半だが、実際に生きている年月はおそらくその数の五、六倍くらいはあるだろう。


 これだけ長命で見た目と年齢に差異があるのは、私達魔女の身体の中にある〝魔力〟に原因がある。


 魔女は保有する魔力の影響である年を境に成長が止まるのだ。その年は魔力の保有量等によって異なるが、成長が止まった魔女はその後体内魔力が衰退しない限り老化する事がない。


 その為、見た目は子供でも一概に彼女が子供だとは言い切れない。


 でも、何故だろう。どういう訳かあの女の子の姿に少し違和感を受ける。どこかが、おかしい様な・・・・・・・


「それにしても、四人ともよく無事だったね。グリゴリって『目にしただけで死ぬ』なんて言われてるんだよ?」


 女の子は変わらず無垢な表情のままサラッと凄い事を口にした。余りに軽く言われた言葉にフレンダが困惑気味に「そ、そうなんですか?」と声を漏らす。それに対して可愛い笑顔を浮かべて彼女はこう言う。


「うん!グリゴリを見た人は先ず生きて帰れないから。」


「え・・・・」


 これには流石にフレンダも受け止めきれず言葉を失った。笑顔の子供の口から突然出た怖い真実。それを聞いてフレンダだけじゃなくエレナとヘレンも困惑し言葉を失っている。


「だから四人とも、もしかしたらいい狩り人になるかもね。」


 女の子は満面の笑みでそう言うが、そんな励ましも硬直した彼女たちの耳に届いていない。その姿に私は苦い笑みを浮かべた。


 そんな三人を余所にどうしても彼女の違和感が気になる私は、背の低い女の子の前にしゃがみ込み彼女の顔を覗き込む。その行動に反応して女の子は私の顔をじっと見つめる。


 ・・・やはり、彼女の身体には少し違和感がある。どこか人間の様で、どこか人間じゃないような雰囲気が——


 そうか、生気!この子からは全く生気が感じられないんだ。


 強い魔力の気配は彼女の身体から感じ取れる。だが、生物としての生命力が感じられない。だから、違和感があるんだ。


 でも、だとしたらこれは——


「あのこれ、ゴーレムですか?凄い精密に作られてますけど・・・」


「ちょっ!ちょっとあかり⁉」


 今まで硬直していたフレンダが私の発言に慌てた様子で声を上げる。その反応の意味が分からず私は思わず首を傾げるとエレナが呆れた口調で言う。


「その方、司教だよ?修道院学校長の・・・」


「ええ⁉こ、これが⁈」


 予想外の真実に私は思わず立ち上がり声を荒立てた。


 え?これが?・・・子供っぽい云々より、まさか学校長は人じゃなかった・・・?いやいやいやいやいや、そんな事は無いだろう。魔女を育てる学校の長が人間ですらないなんて・・・無い、よね?


 それはともかく私は一度咳払いをして冷静になり、改めて頭を下げて自分の言動を詫びる。


「申し訳ございません。大変失礼を致しました。」


 すると、彼女は——


「いいのいいの。この姿見るとみんな驚くから。むしろいい反応だよ。」


 と、司教は一切気にしていない様子でそう言って笑った。・・・なんか、少し彼女にからかわれている気がする。


 そんな私の考えも目の前の司教は気にしない様子で、何もなかった様に肩を落としたリンに話しかける。


「じゃあリン、引き続きおねがい。くれぐれもシスターの安全を最優先にね。それと、何かあるといけないからストレガとその周辺地域の結界密度を二十%上げるように伝えといて。」


「かしこまりました。」


「じゃあまたね~」


 そう言い残して私達に手を振りながら司教はこの場から立ち去っていった。


 なんか、グリゴリと相対した時よりも疲れた。司教を前に恥を晒した事もそうだが、今までイメージしていたのとは違う元気な学校長様になかなか困惑が解けない。


 その困感は皆も同じ様で周りの目を気にしながらフレンダが声を落として話しかける。


「何が意外だったね。子供っぽいと言うか、子供みたいと言うか。」


「身体も子ども。」


「・・・ねぇ、『司教』ってすごい人、なんでしょ?」


 話に同調したヘレンに抱き付きながらフレンダは怪訝な表情をしてそう尋ねた。すると、エレナが呆れた声で彼女の疑問に答える。


「当たり前でしょ。学校長なんだから。」


「それだけじゃないよ。修道院の学校長って事は、イギリス教会本部の本部長でもあるんだから。」


 エレナの言葉を私が更に補完してそう言った。その途端、彼女は一変して驚愕の表情をして声を上げる。


「えっ?じゃ彼女がイギリス教会のトップ⁉」


「ええ、事実上の教団最高幹部。」


「嘘、でしょ・・・あれで?」


 余りの衝撃だったのかエレナはそう言って肩を落とす。まあ、彼女が驚くのも無理はないが・・・


 ここで言う『教会』とは、『教団教会』とも呼ばれる教団が世界各国に設置した拠点の事を指す。その中でも教会本部とは一国の教会全てを統括する拠点の事。つまり、あの司教はイギリス国内の教会を統括する総司令官という事だ。


 ——あんななりで・・・


「だから驚いたのよ。あんなのが司教だとは思わなくて・・・」


 エレナの言葉に賛同するように私がそう漏らすと横でリンが咳払いをする。見ると彼女は私達に冷ややかな視線を向けており、私はそっと目を逸らした。




 その後、リンの誘導で修道院に戻って来た私達は先に避難していた他の生徒達とも合流する。そして、全体の指示で暫く修道院に待機するように命じられて解散した。


「はあ、今日は散々だったね・・・」


 その解散の流れに混ざりながらフレンダが疲弊した様子で声を漏らす。その言葉に私が「そうね。」と短く同意すると隣のエレナが尋ねる。


「これからどうする?サリー先生の指示じゃ、しばらく修道院で待機だけど。」


「じゃあさ、お風呂入らない?あんなに走ったから汗が酷くて。」


 エレナの言葉にフレンダが楽しそうにそう提案する。


 お風呂か・・・確かにすぐにでも汗を流したい気分ではある。だが、皆と一緒に行くのは、流石に——いや、今の私は女だから、例え一緒に入ったところで一応問題はないが、それでも気が引ける。・・・フレンダには悪いがここは断りを入れるべきだろう。


「私は——」


「そうだね。さっきから身体がベタベタして気になってたし。」


「え、あっ——」


「さっぱりしたい。」


「あ、えぇと——」


「だよね。みんなで行こうよ。」


「あの——」


「「「ん?」」」


 何か尽く皆に私の言葉を遮られた。更に私の不審な言動に三人が首を傾げて声を漏らす。その反応に断れない空気になってしまった私は言葉を詰まらせながら妥協した返答をする。


「あ、いや。そ、そうだよね。シャワーぐらいは浴びたいよね。」


 すると、私の期待とは裏腹にエレナがとんでもない事を口にした。


「シャワーもいいけど、修道院には大浴場があるって聞いたし、そっち行ってみない?」


「え・・・」


「いいね。そこ行こ!」


「だいよくじょう!」


 そんなエレナの提案にフレンダもヘレンもノリノリで声を上げる。いやまあ、気持ちは分からなくもない。だが、これは不味い。非常に不味い・・・このままでは完全に一緒に入る流れだ。どうにか言い逃れできないものか・・・・・・・


「あかり?どうしたの?早く行くよ!」


 独り悶々と考えているとフレンダが首を傾げながら私に声を掛けた。どうやら私が思い悩んでいる内に三人は移動を開始していて、一人立ち止まったままの私を不思議に思ったらしい。


「え、えっと・・・私は——」


「ほぉら、早くしないと置いていっちゃうぞ~」


「ちょっ、エレナ!置いて行くって、連れてってるじゃん!」


 ・・・・とまぁ、そんな感じで私はあっという間に三人に連れていかれた。来たのは第八区画の一角、第九区画に隣接している場所にある数ある浴場の一つ『アリアの夜明け』とか言うよく分からない名前の浴場までやって来た。


 中に入ると当然そこは脱衣所。でも、ここは一体何人は入れるのかと思うくらい無駄に広い部屋で服を入れるロッカーと化粧台が立ち並ぶ。でも、辺りを見渡しても使用中のロッカーが見当たらない事から私達以外に他の人はいない様だ。


 すると、着くや否や皆は何も気にする事なく服を脱ぎ始める。場所が場所な為に声に出して言えないがもう少し躊躇してほしい・・・


「おっ先~!」


「おさき~」


 手早く服を脱ぎ捨てたエレナとヘレンはそう言って足早に浴場へ向かった。その姿を見てフレンダは微笑みながら二人に声を掛ける。


「走ったら危ないよ~・・・・もう二人ともはしゃいじゃって、子供みたい。」


「そ、そうだね。」


 フレンダの言葉にぎこちない口調で私が答えると彼女は私の顔を覗き込んで私に尋ねる。


「どうしたの?さっきから様子が変だけど、具合でも悪い?」


「ん?ぶふっ⁉」


「もしかしてどこか怪我してるとか⁈」


 彼女はそう言うと下着姿の私の身体を隈なく調べようとする。だが、当然もう彼女の身体を覆い隠していた物は無い。彼女は今・・・・


「してないしてないしてない!大丈夫だよ!」


 唐突な彼女の行動と破廉恥な姿に焦って顔を逸らした私は、驚きのあまり動揺の声を上げつつもどうにか彼女をなだめる。その反応に彼女は渋々検査の手を止めるが心配そうな表情をしたのまま言葉を返す。


「そう?ならいいけど・・・じゃあ私も先行くね。」


「う、うん。」


 そう言うと彼女はエレナ達に続いて浴場へ向かった。残った私。入る前からもう既に疲労困憊だ。もうここで帰ってしまいたい・・・


 別に、それは不可能ではない。幸いここにはもう誰もいない、こっそり帰ってしまう事は容易い。


 でも、それは彼女達との関係を悪化させる事になる。彼女達はルームメイト、彼女達との関係が悪くなるのは今後の生活に大きく響く事になるだろう。


 何より、その所為で私の正体が暴かれる危うさがある。そんな事ある訳ないと思いたいが、不信から始まる仲違いは時に真実が浮き彫りになる事がある。たかだか風呂の誘いから逃げただけでそうなる可能性は限りなく低いだろうが、そういう危うさがある以上、気が引けるからと言って今の関係性を下げるような行動はするべきじゃないだろう。


 そもそも、こうなる前に誘いを断ればこんな事には・・・・


 私は意を結して最後に残った下着を脱ぎロッカーに鍵を掛け、タオルで身体を隠しながら皆の待つ大浴場に立ち入る。


 扉を上げて広がる浴室は大浴場と言うだけ広く、一般的なホテルの大浴場の何十倍の広さはありそうだ。・・・・大浴場にも程がある。


「わぁ~、ひろ~い。」


「フレンダ!ジャグジーあるよ!ジャグシー!」


「サウナもある!」


 三人が極大浴場を見てはしゃいでいる。どうやらジャグジーとサウナもあるらしい。更に奥へ目を凝らすと滝の様な物も見えるから、もう何でもありなんだろう・・・


 はしゃぐ彼女達を余所に私はシャワーの前に座り先に身体を洗い始める。


 先ず背中まで伸びる長い髪を丁寧に洗い、洗い終えた髪を団子状にまとめて簪で留める。その後、汗でベタベタの身体を洗い流す。私の身体から流れ落ちた泡が無情にも排水溝へ吸い込まれ消えて行く。


 一通り洗い終えた私は曇った鏡にシャワーをかけて曇りを取って自分の姿を確認する。


 ——ん、問題なさそう。髪もうまく纏まってる。・・・・髪を止めたこの簪。これは一応私の魔法の一部なんだが、こういう時は本当に便利な魔法だとつくづく実感する。


 なんて思いながら、私は皆が絶賛していた大きな浴槽へ。幸い、湯船は濁り湯で浸かっていれば身体は見えない。そう、浸かっていれば・・・


「あかり~!あなたもこっちに来なよ!」


「おいで~」


 向こうでエレナとヘレンが私を呼ぶ。私の心情として少しは自分の体を隠してほしいんだが、二人は大浴場の設備が余程楽しいのか軽やかな足取りで一つ一つ巡って物を試している。そんな二人に私は柔らかく笑みを浮かべて断る様に手を振る。


 ・・・もうさっさと出でしまおう。長居すると気が狂いそう——


「あかり、どうしたの?こんな隅の方で。」


「え⁈」


 突然後ろからフレンダに声を掛けられ咄嗟に私は振り返る。だが、彼女の身体を真面に見てしまい咽てすぐに顔を逸らす。


 その反応を目にして「大丈夫?」と言って心配するフレンダに私は呼吸を整えて大丈夫と伝えると、湯船に浸かった彼女は何かに気付いた様で徐に私に尋ねる。


「もしかして一緒に入るの嫌だった?」


「あ、いや。えっと、その・・・・・」


 ストレートな質問に露骨に私の挙動がおかしくなる。流石にもう誤魔化しきれないと察した私は彼女に正直に話した。


「私、こうやって誰かと一緒にお風呂入るのって慣れてなくて・・・」


「あ、そうだったんだ。ごめんね、無理やり連れてきて。」


「ううん、いいの。楽しいから。」


「そう?なら良かった。」


 そう言って彼女は微笑んだ。私の密かに苦悩しているなんてつゆ知らず・・・まあ、知れたらそれはそれで問題ではあるんだが・・・


 しかし、修道院はあらゆる物が規格外に大きくなると思っていたが浴場もとは思わなかった。寮の部屋にある浴室は普通だったのに。——と言うか、そもそも何で学校にこんな大浴場があるのかも不思議なところだ。


「ありがとね。」


 フレンダが急にそんな事を言い出した。どういう意味なのか私が尋ねると彼女は改まった面持ちで答える。


「グリゴリから生き延びれたのはあかりのおかげだから。あかりがおとりになって私達から遠ざけてくれたから私達は助かった。じゃなきゃ、今頃私達は生きてなかったと思う。本当にありがとう。」


 そう言って彼女は頭を下げる。私はその姿に少し困惑し、それを誤魔化す様に苦笑いにしながら彼女に言葉を返す。


「そんな大した事してないよ。あの時はただただ必死で。あの後リン先生に『一人で突っ走り過ぎ。』って怒られてたの、フレンダだって見てたでしょう?」


「それは私だってそうだよ。『勇敢と称える事も出来るでしょうけど、はっきり言って無謀だったと言わざるを得ない。』って低い声で言われて。ほんと怖かった。」


 そう言えばそうだった。彼女も私と同じ様に無茶をした人だった。


「ふふっ。」


 そう思うと不思議と笑みが零れた。お互いに無茶をやって先生に怒られる。そんなくだらない事が急に微笑ましく思えた。


 すると、フレンダも私に釣られる様に笑みを零す。そして、その綻んだ表情のまま彼女は更に私に感謝の言葉を重ねる。


「でも、助けに行ったはずの私の事も助けてくれたし、本当に、感謝してる。助けに行って助けられるって、じゃあ私は何しに行ったんだよ!ってなるけど・・・」


「確かにね。」


 私が笑いながらそう返すと彼女は頬を膨らませて不機嫌な表情を見せる。


「でも、フレンダが来てくれて嬉しかったよ。囮は自分からやった事だけど、正直怖かった。あれを振り切れるとは思わなかったし、すぐに倒せないって察してたから。」


 グリゴリには、私の帯が一切通用しなかった。それは自分の未熟さ故だって分かってる。でも、今まで帯で切れない物なんてなかったから、グリゴリの皮膚が切れなかった時は正直少し驚いた。そんな事があるんだ、って——


「そこにフレンダが来てくれて、なんか安心した。草むらから突然現れた時は凄く驚いたけど、フレンダの魔法に助けられたわ。だから、私もフレンダに感謝してる。ありがとう。」


 私がそう言うとフレンダは気恥ずかしそうに視線を逸らした。そんな可愛らしい反応に私はまた笑みが零れる。


 すると突然、私の顔に何かが掛かる。


「うわっぷ!」


 私は両手で顔を拭って辺りを確認すると私の前にエレナが座っていて両手で作った筒を水面に浮かせていた。彼女は知らない間に二人きりで話していた私達を見て呆れた表情をして言う。


「何イチャついてんの?」


「イチャついてないから!」


 エレナの言葉にフレンダがすぐに否定する。その反応にエレナが「ほんとに?」と言って茶化している。


「でも、なに話してたの?」


 その脇でヘレンがそう尋ねた。やっぱり二人きりで話した内容が気になる様で期待の眼差しを私に向ける。


「今日は大変だったねって話。」


 全部を話すのもあれだからザックリとした回答を私が返すとフレンダを茶化していたエレナがまた呆れた表情をして話す。


「全くよ。突然グリゴリは現れるし。誰かさんはグリゴリ連れてどっか行っちゃうし。」


「あはは・・・」


「そんでもって、もう一人の誰かさんはその誰かさんを助けるって言って追いかけて行っちゃうし。」


「アイタタタタタタ・・・・・」


 とんでもない槍が突然飛んできて私達二人に突き刺さる。・・・まあ、他ならない事実なんだけども・・・


「でもまあ——」


 私達がエレナの言葉に苦しむ中、彼女はそう漏らすと優しい顔を見せて言葉を続ける。


「二人ともカッコよかったよ。本当の狩り人ってああいう人達を言うんだなってあなた達を見て思った。」


 そう言って彼女は微笑む。そして、私達に向き直って言う。


「改めてありがと、助けてくれて。」


「ありがとう。」


 二人の感謝の言葉に私達はまた照れ臭くなって顔を逸らした。




「——かぁ‼やっぱお風呂上りはこれだよね!」


 お風呂から上がった私達はそれぞれ身体を乾かしたり着替えたりしていたのだが、エレナは脱衣所で偶然見つけたフルーツオレを腰に手を当てながら一気に飲み干していた。


「おじさん臭いよ、エレナ。」


 その姿を見て髪を乾かしていたフレンダが彼女にそう言った。だが、フレンダ。それよりももっと言う事があるだろう・・・


「そもそも何でエレナがそんな文化知ってるの?ってか、先ず服着てよ・・・」

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[良い点] 四人ともお互いを思い合っててホッコリします。(*´ω`*) もっとイチャついてもいいんだよ?
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