79話 椿。落ちる。
ワタシの従兄弟の椿は
よく笑う普通の子供だった。
ワタシが10歳。椿が8歳。
椿はよくワタシの後ろを着いてきていた。
あの日もそうだった。
「ねーきょうにぃ。ここは入っちゃだめなんだよ?」
椿が泣きそうな顔で言う。
「うむ!!なんだ怖いのかつばき?」
京介が尋ねると、すねたように
怖くないもんっ!!と部屋の奥に走っていってしまった。
あ、しまったと思った
今京介達は、山奥にある別荘に遊びに来ていた。
親達は出掛けていて、
京介達は探検中だった。
京介は親達から絶対に子供だけで入るなと言われている部屋を、少し覗いて
椿をからかうだけのつもりだったのに。
椿が入っていってしまった。
慌てて追いかけるが思ったよりも複雑で広い。
唯の物置だと思ったのに、ドンドン奥へと道が広がっている。
「つ、つばきっ?どこにいる?」
京介は怖くなって椿を呼んだが返事は無かった。
奥の方から音がした
凄い音だった。
京介は走った。走って走って
血塗れの、椿を見つけた。
床に穴が空いていて、そこから落ちたのだろう。
「つばき!!!」
必死に呼んでも反応がない
それに、恐怖心がそれを、見せているのか黒いモヤが。椿の周りをぐるぐると回っていた。
「お、大人を呼んでくるっ!!待っていろっ!!!!」
京介は走った。
車や自転車なんて無かったから、ただ走った。
山を抜けて、こちらへ帰って来ている親達を見つけた時は、京介もボロボロだった
すぐに親に説明したら、
青い顔で、何処かに連絡していた。
その後は記憶が無い。
椿には会わせてもらえなくて、理由を聞いたら熱を出して寝込んでいると、言われたので
生きてる。とホッとした。
久しぶりに会った椿は。
感情を失っていた。
笑わない。話さない。泣かない。
たまにポツリと零す言葉も意思疎通は出来ない。
指示した事は黙々とこなす
まるで人形だ。
大人は頭を打った後遺症だと言っていた
ワタシの好きだったつばきは居なくなった。
変わってしまっても椿は椿だと切り替えて。
償いの気持ちもありワタシは椿と一緒にいる。
椿は日常生活も。戦闘も問題ない
軍学校へも一緒に入学出来た。
ただたまに京介は思う。
今の゛コレ゛は本当につばきなのかと。
〜〜〜〜
ぅゔぐるじぃ、、
と言ってミライが気絶した。
伊吹虎はハッとした。
(しまった。取り乱して、酷いことをしてしまった。)
伊吹虎が焦っていると、
西園寺がミライの頭を膝に乗せて撫でていた
笑顔とは言えないほどの微笑を浮かべている目の前の椿と
子供の頃のつばきが重なった。
(ああまだそこに居たのだな。
つばき。)




