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4話 紛らわしい

「あー、その前にツバサ・ブラウン。

貴方は元日本人ですね?」


その言葉に

ツバサの目に浮かんだのは怪訝な色ではなく、どうしてわかったかのかと言う驚愕の色だった。


はくはくと、口を開いては音にならない声を漏らして震える指をミライへと差し出す。

「園田さん、き、君もなの。??」


うるうると水分の増した黒い瞳がミライを見つめる


「はい。私も元日本人です」


にっこりと笑顔をツバサに向けると、ポロリとその黒い瞳から涙が溢れた


「〜〜!!ほんとに、、!そんな、、う〜、〜」

一粒一粒、そのうちに滝のような涙を流しながら、意味をなさない言葉を零しながらツバサは震えている


(うお!ガチ泣きやん!!)


男のガチ泣きなんて初めて見たミライはほんの少し引いた。


「あー、落ち着いた?」


暫く背中を撫でたりポンポンしていると、ようやくツバサは落ち着いたみたいで震える声で語りだした。


「ご、ごめんね。、まさか僕の他にも日本から生まれ変わった人に会えるなんて思ってなかったから、、前世の記憶があるなんて、僕が頭がおかしいのかなって、昔からすごく悩んでで、、ぅうう、」


「あー!大丈夫!大丈夫だから泣かないで!落ち着いて!」

また号泣しそうなツバサをなだめて

ミライは考える


(やっぱり、それに生まれ変わりって事は転生者で間違いなさそうかな、、それにしても)


目の前でゴシゴシと目尻を擦るツバサを見ながら考える


(なんか、なよなよしてるし、めっちゃ泣くし、もしかして転生前は女の子だったとか?それなら、イベントが発生しなかったのも確かにわかる気がする。)


もし自分が、いきなり男の主人公になって、そして戦えるかと言われれば、答えは否だ。

いくら男として生まれ育ったとしても、元々の記憶が、あったのなら難しいだろう

可哀想に


少し優しい目でツバサを見ていると


ツバサもこちらを見て頬を緩めて言う


「えっと元日本人、田中一郎享年は38歳です!」


「おっさんやないかい!!」


「ひぇっ!」


主人公の中身は元おっさんだった。



〜〜〜


私田中一郎と言う男は、昔から気が弱かった。


元々運動は苦手で趣味も特に無く

いつも誰かの陰に隠れるように生きていた。


学生時代も友達はおろか彼女も出来ず、

それは社会に出てからも何も変わらなかった。


家族仲も余りよく無かった。

2つ下の弟は親からも可愛がられて居たが、私はあまり可愛がられた記憶はない


だがそんな弟も高校に入ってからはひきこもるようになり

年老いた両親の面倒を一人で見ながら

家を支える為に、ただただ働いた。


会社でも、特に仕事ができるでも無く、後から入った若い者たちにどんどんと追い抜かれ

毎日毎日ただ黙々と日々を過ごしていた。

陰で馬鹿にされていることも一度や二度では無かった。

しかし言いかえせるかと言えば、土台無理な話で、だた下を向いて耐えるだけ。


家にも居場所はなく、面倒をみているのに、少し痴呆の入った両親は私を罵る事もあった。


弟とはほとんど顔を合わさずただ、生活費を置いておくだけ


そんなうちに30代も後半になろうという頃、ふと自分はなんの為に生きているのだろうと考えることが多くなった。


休日に家が息苦しくなり少しの息抜きにと公園のベンチに座り周りを見ていると

楽しそうに笑う家族連れが目に入る


その瞬間息が出来なくなるほどの後悔が私を襲った。


もっと頑張っていれば、もう少しマシな人生があったのでは無いか

家族とももっとちゃんと向き合っていれば、、


ぐっと握りしめた手のひらから微かに血が垂れて、その痛みで我に帰る


いや今からでも遅くはない、


ゆるく頭をふる

ふと、会社の若い者たちが最近流行りの珈琲ショップの話をしていたのが頭に浮かんだ


色々なトッピングを選べてとても美味しいらしい。


それを買って帰れば少しの話題になるのではないか、久しく見ていない弟の顔を思い浮かべながら、

来るときよりも少し、前向きになった心でその珈琲ショップへ向かうことにする


今からでもやり直せる



少し胸に温かい気持ちが湧いてきた


生まれ変わった気持ちで頑張ろうと気合を入れて、、


だがその後二度と両親とも弟とも会えることは無かった。


私田中一郎は、その後事故により死んで


言葉通り生まれ変わったのだ


日本とは全然違う

不思議な世界に




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