33話 人殺し
「あー、ほんならそろそろ、お皿並べたりしてくれる?ユアンちゃん。ツバサちゃんにも教えてあげてなぁ」
ふと台所から顔を出したライアンは
いつの間に着替えたのか
髪をポニーテールにして白のハイネックセーターにピンクのエプロンを着けていた。
ピンクのエプロンを着けていた。
右手にはお玉、左手には鍋つかみを持っていた
新妻か?
ツバサは二度見した。
「ツバサ、こっちの棚からこれを机に並べてくれるかい?」
ユアンに声をかけられて振り向けば、意外な事に
西園寺も机を拭いたりしていた。
伊吹虎はコップを並べている
「あ、うん」
ツバサは棚から数枚のお皿を取り出して見様見真似で並べていくことにする
一段落つくと、伊吹虎が、ユアンに尋ねていた
「ユアン!!昼間、給餌していたのは彼女か?」
「へ?」
ぽかんとしてそれから面白いくらいに真っ赤になって
「いや?!、まだ彼女じゃないよっ!!」
とユアンが叫んだ
伊吹虎は興味深そうにユアンを見て
「そうか」
と言っていた。
まだ?
ツバサはそこに引っかかって何故だがイラッとした。
〜〜〜〜
それから、食事が始まると凄い勢いで机の上に山盛り合ったおかずと、おひつの白米は消えていった。
「「「ご馳走様でした」」」
「はい、お粗末様です。」
食べてすぐに、西園寺がライアンを見て
「……ごはん」
と言った。
まだ食べたりないのかとぎょっとするツバサにライアンは苦笑して
「違うんよ、私のあだ名なんよ」
と言った。
やはりセンスを疑う
さっきの「……ごはん」はお礼だったみたいだ。
一応は意志の疎通が出来るのかな?と思うツバサだった。
ジッと見ていると
「……チワワ」
と言われた
変えて欲しい。
ライアンが、お茶を出してくれてしばらくは談笑していた。
ふと、ライアンを見ると、今はエプロンはしていないシンプルな格好だった
高く結い上げたポニーテールに白のハイネックセーター、黒いスキニーパンツ
「なぁに?そんなに熱い目で見られたらお兄さん照れるわぁ」
「いや、和服じゃないんだなって」
そう、部屋を見てからてっきり着物とか着ているのかと思ってしまったので
疑問を口にする。
「着ない事もないけど私背ぇあるから丈がなぁ」
「でも良く上から羽織ったりはしているよね」
ユアンが話に入ってくる
「あー似合いそう。」
和やかに話していると、伊吹虎がいきなり立ち上がった。
「うむ!!ワタシ達はそろそろお暇するのである!!」
「あ、ちょお待って待って」
慌てたように引き止めて、ライアンは台所から、風呂敷に包まれたお弁当らしきものを二人に渡す
「いまから、出発やろ?朝ごはんにでも食べて」
「え?今から何処か行くの?」
ツバサが尋ねると伊吹虎は
「うむ!!任務である。なのでまたしばらくはお別れである!!」
「……ごはん。」
「すまんな!!ライアン。またなにか土産を持ってくる。」
見送り不要!!と元気よく去っていく二人の背を見送る
そういえば、西園寺は一度もユアンのあだ名を呼ばなかったなぁなんて思いつつ
扉を出ていく背中から目を離す
西園寺が扉を出る直前に
ユアンを見て
「……人殺し」
と呟いたのは
誰にも聞こえなかった




