9話 無自覚
9話
無自覚
私がツバサになってから初めて喋った言葉はじいじだった
その日もおじいさんは私を抱っこしてくれて、そして庭を散歩していた。
言葉は少なかったが
抱きしめてくれる手は優しくて、前世でも感じたことのない、愛情を感じて
私はおじいさんが大好きになった。
おじいさんは庭の大きな木の下に行くと
その木を見上げていた
腕の中からその顔を見上げていた私は
何故だがおじいさんが泣きそうに見えてそして泣かせたく無いと思った。
そしたら口から言葉が出てきた
「じぃじ」
その言葉に弾かれたようにこちらをみたおじいさんに、何故だが嬉しくなって
何度も何度もじぃじと口にした。
その後はおじいさんにきつく抱きしめられて顔は見えなかったが震えているのが伝わってきた。
暫くすると、おじいさんは顔をこちらに向けた。
泣いているかと思ったが、とても優しく笑っていた。
また嬉しくなった
じぃじと呼びかけると笑ってくれるようになってからは何度も何度も呼びかけた。
そのうち私は少し大きくなり歩けるようになった。
そして、私は僕になった。
少しずつツバサに馴染んできたように思う。
僕は多分4歳くらいだった。
じぃじと呼ぶようになってからは、常にそばにおじいさんが着いていてくれた。
メイドの和子さんが呆れるくらいに、玩具や色々な物をプレゼントもしてくれた。
誕生日だって毎年すごく豪勢に祝ってくれて
前の人生ではもらえなかった愛情をいっぱいいっぱい貰った。
「じぃじこっちー!」
おじいさんの手を引いて
大きな木の下に来た。
ここは僕の大好きな場所になった。
二人で並んで木を見上げていると
おじいさんはポツリとポツリと語りだした。
「ツバサ。この木はお前のお祖母様と一緒に植えたんだ。とても大切な木だった。でもね私は彼女を失ってからこの木が大嫌いになった」
「あの日はこの木を伐採しようか悩んでいたんだ。
お前は覚えていないだろうけど、ツバサがここで初めてじぃじと呼んでくれたあの日にね」
眩しいものを見るようにおじいさんは目を細める
「あの日から、またこの木が大切になったよ、あの時切らなくて良かったなぁ」
「ありがとうツバサ。」
そう言って僕を抱き上げてあの日みたいにまたきつく抱きしめられた。
「ごめんなツバサ」
小さくつぶやかれた言葉は良く聞こえなかった。
僕が6歳になった時に、友達との木登りで頭から落ちて怪我をしたときは、
今まで見たことないくらいおじいさんは慌てていた。
怪我をしたのは僕なのにおじいさんの方が死んでしまいそうな顔をしていて、危ないことはもうしないでおこうと強く思った。
その時の友達ともそれっきりになった。
その後も過保護なくらい大事にされて。
屋敷の人達からも愛してもらって。
僕は幸せだった。
ただ過保護過ぎてなかなか友達が出来なかったのは如何なものか。
学校にも行くこと無く
勉強は家庭教師の先生に教わった。
そして15歳の冬、国から手紙が届いた。
「お祖父様、お呼びですか?」
「ツー君二人のときはじぃじと呼んどくれ」
デレデレと目尻を下げてお祖父様は僕を手招きする
「おほん!大旦那様!」
後ろに居た和子さんが咳払いをすると、
慌てて真面目な顔を作る。
「うむ、こほん!ツバサよ、お前を呼んだのは、国からこれが届いたからだ」
「手紙ですか?僕宛に?」
そこには魔法適正有り、春より軍学校へと入学するように、と書いてあった。
「お祖父様これは、?」
「すまんな、ツバサよ、魔法適正があった者は必ず軍学校へと3年間は通わねばならんのだ」
「はい!それは知っております。ですが、僕は戦いなんて全く出来ません。大丈夫でしょうか?」
「うむ、なに、3年間のんびりと過ごして来れば良い。全ての者がそのまま軍人になるわけでは無い。適正有りが集められてはいるが、その後は普通の職につく事の方が多い。それに3年経ったらお前は帰って来れば良いのだ。」
何も心配はいらんぞと
背中を叩かれる
「お前は優しい子だからな、野蛮な事は何にもせんで良い。学校でも頑張らんで良い。適当に遊んで過ごしていればそれでいいのだ」
「大旦那様、それは甘やかし過ぎですわよ?」
和子さんが鋭い目線を向けるがお祖父様はどこ吹く風だ
「学校かぁ、」
友達が、出来るかもと少しドキドキした。
それから数カ月たち
春になって僕は軍学校へ行くことになった。
「ぅう!ツー君辛くなったら何時でも帰って来て良いんだぞ!!じぃじは寂しいぞ〜!!」
泣きながら見送るお祖父様に苦笑しつつ、僕は軍学校へとむかうのだった。
〜〜〜
僕がお祖父様の事を話終えると、園田さんがチベスナ顔でこちらを見ていた。
「なるほど、無自覚におじいさんを落としているとは、侮れんなイチロー……」
「え、何いきなり、なんでそんな目で見るのさ」
「あー、でも話聞いてツバサ君がよわよわな理由がわかったわ。」
「よわよわって…」




