強化依頼とわたし
辺境伯家で昼食をご馳走になった後、わたしはエドガーさんの工房を訪ねました。
ナーガの素材は皆んなで山分けしたのですが、1番高価な魔石はわたしが貰う事が出来ました。
この魔石は当然水属性を持っています。
これを使えば水魔の戦斧を強化出来るかも知れません。
「ごめん下さい」
「はーい」
店の奥から出て来たのは18歳くらいの青年です。
顔立ちがエドガーさんに似ていますね。
息子さんでしょうか?
「お嬢ちゃん、お使いかな?
ここはマジックアイテムのお店だよ。
何を買いにきたのかな?」
まぁ、この国の人達にはわたしは10~12歳くらいに見える様なので仕方が有りません。
冒険者でもない一般人を殴り飛ばす訳にはいかないので、ここはエドガーさんを呼んで貰いましょう。
「すみません。わたしは冒険者のユウと言います。 店主のエドガーさんにお取り次ぎ頂けますか?」
「ははは、お嬢ちゃん。冒険者ごっこかな?
ゴメンね。親父は今、奥でお仕事をしているんだよ。
代わりにお兄さんが遊んであげよう」
…………いえ、殴りませんよ。
彼は好意で言ってくれているのですから。
ええ、怒りませんとも。
これまでにも似た様な事は沢山有りました。
ギルドカードを出せば済む話です。
「おい、ガレオ、何をなに騒いでるんだ。
暇なら店の掃除でもしてろ」
わたしがギルドカードを出そうとした時、店の奥から声が聞こえて来ました。
「いや、親父、この嬢ちゃんが冒険者ごっこをやってて……」
「ん? 冒険者ごっこ?」
「どうも、こんにちは」
「あ! ユウじゃねぇか!なんでユウが冒険者ごっこなんかしてんだ?」
「いえ、それはこちらの方の勘違いですよ。
わたしは最初から冒険者だと名乗っています」
「な! このバカ! よりにもよってユウをガキ扱いしてんじゃねぇ」
ガゴ
「いってぇぇえ! は⁉︎ なんだよ俺が何したって言うんだよ!」
「この嬢ちゃんは凄腕のBランク冒険者だぞ。それに金払いも良い上客だ!」
「えぇ⁉︎」
「うちのアホが悪かったなユウ」
「いえいえ、最近はだんだんと慣れて来ましたから」
「それで俺に何か用か?」
「はい。コレを使って水魔の戦斧を強化出来ないかな、と思いまして」
わたしはナーガの魔石を取り出しました。
「こ、コイツはまさか、竜種の……」
「はい。かなりの大物のナーガの魔石です」
「戦斧の強化だったな! 是非やらせてくれ。 頼む!」
「分かりました。では、お願いします」
わたしはエドガーさんに水魔の戦斧とナーガの魔石を預けると、ついでにナーガの皮と鱗、血液、牙と言った素材を取り出します。
「あと、これで何か作れませんか?」
「す、すげぇ……」
「こりゃまた凄いな! そうだな…………待ってろ、ナーガの素材で作成可能な物のリストを見せてやる」
わたしはエドガーさんの師匠が書き残したと言うリストの中から1つ、気になる物を見つけ、そのマジックアイテムの作成をエドガーさんに依頼しました。
エドガーさんの工房を出たわたしは孤児院に立ち寄りました。
教会には寄るつもりは有りませんよ。
めんどくさい事になりそうですからね。
さて、今日は子供達にケルピーハンバーグでも食べさせてあげましょう。




