ギルドとわたし
「ラティ、何があったんだ?」
ギルドの奥から現れたギルドマスターはスキンヘッドにムキムキ、ダルそうな雰囲気と実に理想的なギルドマスターでした。
欲を言えば眼帯もしくは、足を引きずっていれば尚良かったです。
「そっそれが此方の女性がギルドに登録を希望されていたのですが、そこにキースさんとボリオさんが…」
「また新人に絡んだのか」
ギルドマスターはわたしに視線を向けると、少し驚いた様な顔をして、ため息をつくと、目を覚ました不良冒険者Aとようやく立ち上がった不良冒険者Bに呆れた様に説教を始めました。
「何度言えば分かるんだ。いちいち新人に絡むんじゃねぇ。
大体この嬢ちゃん、てめぇらにどうこう出来る様な奴じゃねぇだろうが!
相手との実力の違いも分からねぇからいつまでもEランクで燻ってんだ。
後でペナルティーを与えるから取り敢えず謹慎しとけ!」
ギルドマスターに怒鳴られた不良冒険者達はスゴスゴと立ち去っていきました。
彼らを見送るとギルドマスターはわたしに向き直り頭を下げました。
「馬鹿な奴らが絡んじまって悪かったな嬢ちゃん」
「いえ。わたしもこれから暫くこの街で活動する積もりなので、舐められない様にと思い、少しやり過ぎました。
受付嬢さん…ラティさんもすみませんでした」
「いっいえ、私も止めることが出来ず申し訳有りません」
「じゃあ後は登録だな。ラティ頼んだぞ」
「はい」
ラティさんに声をかけるとギルドマスターはカウンターの奥に戻って行きました。
「では改めて登録をお願いします」
「はい。此方の用紙に記入をお願いします。代筆は必要ですか?」
「大丈夫です」
ラティさんがカウンターの下から取り出した紙に名前、年齢、従魔の有無などを記入していきます。
「この技能とはなんですか?」
「何か専門的な技能などがあれば記入していただけると指名依頼などの参考にさせて頂きます。
また、隠していたいなら記入しなくても問題有りません」
なるほど。
特に隠すことも無いので薬師と記入します。
わたしは記入を終えた紙をラティさんにわたします。
「ユウさんは従魔を3体連れているのですね。今は街の外ですか?」
「いいえ。召喚魔法を使えるので普段は連れていません」
「そうですか。ではこの従魔の証を従魔の目立つ場所に着けておいて下さい。
マジックアイテムなので魔力を流せばサイズを変えられる様になっています。
これを着けていないと街の中に連れて入ることが出来ませんので気をつけて下さい」
ラティさんは紐状のマジックアイテムを渡してくれました。
あとでシリウスに着けてあげましょう。
ラティさんはわたしが記入した紙を水晶盤の上に置くと魔力を込めました。
すると紙が燃え上がり、水晶盤の下に有ったカードに吸い込まれていきました。
ファンタジー技術に感動します。
「では此方のカードに血を一滴付けていただけますか?」
ラティさんから白紙のカードと針を受け取ります。
小説では良くあることですが、自分の指に針を刺すのはなかなか勇気が要りますね。
カードに血を付けると、血は直ぐに染み込んでいき、わたしの名前、年齢、ギルドランクが浮かび上がりました。
どんな仕組みなのか全く分かりません。
ギルドランクはHランクからスタートです。
冒険者のランクはHからSまであり高ランクになるといろいろと優遇されるようです。
ラティさんに聞いた所、Sランクになると国王様にすら対等に意見する事が出来るそうで、現在この大陸には3人のSランク冒険者がいるそうです。
いつか会ってみたいです。
「こちらにギルドの規約が書かれているので目を通しておいて下さい」
ラティさんから冊子を受け取りました。
これに冒険者として守るべき規則が書かれているようです。……ぺらぺらですね。
「それではこれで登録は完了です。 これからよろしくお願いします」
「此方こそよろしくお願いします」
わたしはラティさんにお礼を言いギルドを後にしました。