作戦会議とわたし
お互いに自己紹介をすませると、わたしはまず、ポイズンアントの毒を受けた女性の解毒に掛かります。
湖から離れた、見晴らしが良く、警戒が容易な場所に野営地を設営したわたし達は、解毒と体力の回復を考えてナーガとの戦いを明日の昼過ぎと決めました。
魔族の3人の話を聞くと、彼らは兄妹で、長男のザジさんは剣士、長女のカルラさんは弓士、次女のキルトさんが魔術師だそうです。
彼らは三女のマルカさんがモーガン病に罹り、何とか薬を手に入れる為この危険地帯にやって来たらしいのです。
そして、彼らはハンターと呼ばれる冒険者の様な仕事をしているそうです。
ハンターには冒険者のランクの様な物が有り、下から『ストーン』『ブロンズ』『アイアン』『スチール』『クリスタル』『シルバー』『ゴールド』『ミスリル』『オリハルコン』とクラス分けされているそうです。
ザジさんはゴールドクラスですから冒険者のランクだとBランクくらいです。
ちなみにカルラさんはシルバークラス、キルトさんはスチールクラスだそうです。
解毒薬をアンナさんに飲んでもらい、しばらく眠り、体力を回復する様に促しました。
カナさんを看病に残し、残りの3人で明日の作戦を話し合います。
「竜種を相手に急造の連携は危険だ。
下手に連携を考えるより完全に役割を分けて、行動する方が良いだろう」
「そうだな。中途半端な連携は単独で戦うのより不味いだろう。
俺も分担に賛成だ」
ジャギさんが大まかな方針を提案するとザジさんもその意見に賛成しました。
「ではどう分担しますか?」
「正面からの戦闘だと俺とユウの方が戦闘力が高い。
ザジ達のパーティには弓士と魔術師が居て遠距離からの攻撃が可能だから、俺達がナーガと相対し、ザジ達が遊撃としてフォローすると言うのはどうだ?」
「…………悔しいが確かに純粋な戦闘力ではお前達には勝てない。分かったそれで行こう」
「では、そろそろキルトさんも目が覚める頃ですし、食事にしましょうか」
わたしが料理をする間、ザジさんは夜、見張りの間使う薪木を探しに、ジャギさん野営地に張った結界を確認に行きました。
普段は野営の度にいちいち結界を張ったりしないのですが今日は念の為にとジャギさんが神聖魔法で結界を張りました。
この結界は魔物を寄せ付けないバリアの様な物ではなく、魔物が入ってくると感知できるレーダーの様なヤツです。
みんなが戻ってきて、キルトさんも起きてきたので食事にしましょう。
「「「美味ぁぁあい」」」
「その気持ちはよくわかるぜ」
「ふふふ」
今日のメニューはケルピーのハンバーグです。
手ごねのケルピー100%ハンバーグはワイルドな肉の味わいを存分に引き出す塩加減と溢れ出る肉汁の旨味、それらを引き立たせる僅かなスパイスの香りが調和した逸品です。
「なんだコレは! こんな料理食った事ないぞ!」
「美味しい! 確かにケルピーは美味しい食材だけどこの料理はケルピーの美味しさを何倍にも高めてるわ!」
「お、美味しいです。
あ、あの、是非、レシピを教えて貰えませんか?」
「良いですよ」
「え、良いんですか⁉︎」
ハンバーグは大人気です。
わたしの女子力がグングンと上がって行きます。
ふははは!わたしの女子力は53万ですよ!
そろそろスカウターが壊れるかも知れません。
キルトさんも毒が抜けて来たのか、大分顔色が良くなって来ましたね。
食事が終わると明日に備えて眠る事にしました。
見張り番は病み上がりのキルトさんを抜いた4人で2人1組で行う事になりました。
まずはわたしとザジさんが見張りです。
流石にどちらか片方に見張りを任せるほど、わたし達はまだお互いを信頼している訳では有りませんよ。
見張りをしている間にザジさんからマルカさんについての情報を聞き出します。
わたしが直接診察出来ませんからね。
現在の病気の進行状況や身長、体重などを聞いておく必要が有ります。
夜の間にザジさんと話して分かったことは魔族も人間もあまり変わらないと言うことです。
彼らは、わたし達と同じ様に家族を愛していて、大切な人の為に戦うのです。
そして、ザジさん達の様な普通の魔族達は別に邪神を信奉している訳ではないそうです。
魔族を率いる魔王達が邪神のお告げに従っているだけで魔族全員が人間を滅ぼそうとしている訳ではないと聞きました。
「でも、最初、ザジさんも人間だからとわたし達と敵対しようとしてましたよね?」
「個人的に悪感情は無くても対立している種族なんだから警戒するのは当然だろう。
お前の連れのジャギだって俺達と事を構えようとしていただろ。
いきなり共闘を申し込むお前が異常なんだぞ?」
「わたしは平和主義なんですよ」
魔族を見つけ次第、抹殺するつもりだった事は乙女の秘密です。