世紀末とわたし
『そもそも天津神800万は、ソロモン72の公式ライバルとして(中略)それで二期生が(中略)その時の天照ちゃんがマジで可愛いの』
(な、なるほど)
『それでね、5枚目のシングルでセンターに(中略)だからクシナダちゃんが(中略)妹グループの国津神800万に(中略)君もそう思わない?』
(そ、そうですね。あの……)
『それからさ、この前、アールヴヘイムツアーに行ったんだけど(中略)噂では人気少年誌に連載してる芸術神が国津神800万にどハマりしてるらしくて(中略)先週の放送ではね……』
(あ、あの‼︎ 済みません、そろそろ本題に入っても良いでしょうか?)
『ん? あぁ、ごめんごめん。
つい、熱が入っちゃったよ。
それで、なに?』
(はい、わたし以外にも、この世界にやって来た日本人がいるんですよね?)
『いるよ』
(その……何人くらいいるとか教えてもらう事は出来ますか?)
『他の人の詳細な情報は教える事は出来ないけど、人数くらいなら教えてあげるよ』
(おお!聞いてみる物ですね)
『僕がその世界に送ったのは君を入れて3人だよ。
多少のズレは有ると思うけど大体同じ時代に送ったはずだから、もしかしたらその内、出会う事も有るかもね』
(え? 3人だけですか?
でも、明らかに日本……と言うか地球の文化の影響を受けたような物が色々と有りましたけど?)
『それは僕の前の神がやった奴だね。
その世界はこの前、先輩から中古で……ゴホン! 上級神より管理を引き継いだんだよ。
だから、前任の神が何人か召喚してるんだと思うよ。
まぁ、僕があそ……管理するようになってからは君達3人だけだから、前に召喚されたのは、そっちの時間で大体300年くらい前だと思うよ』
(そうなんですか?)
『うん。履歴にトロフィーが残ってたし』
(…………端々に、気になる部分は有りましたが大体分かりました。
では、今の時代に生きている日本出身者は3人だけだと言う事ですね)
『多分ね。不老不死とかそう言うイレギュラーじゃない限り、死んでると思うよ』
(なるほど、ありがとうございました)
『いやいや、僕も、君と話せて楽しいよ。
最近、友神達がなぜか僕の話を聞いてくれなくてね。
それで、さっきの続きなんだけど……』
(あ~と! もうこんな時間だ! 早く帰らないとママに怒られちゃう)
『え、ちょと待ってよ、ママって……』
(それでは神様、ありがとうございました。お休みなさい)
『まだ、昼間で……』
プツ ぷぅー ぷぅー
「ふぅ、危ないところでした」
なんとか自然に会話を終わらせることが出来ました。
神様のアイドルに対する愛を延々聴かされていたのですが、周りではわたしが祈り始めてから数秒しか経っていませんでした。
これも神の力なのでしょうか?
寄付金を渡し、教会を出ます。
わたしはドッと疲れた精神を癒すため、雪獅子のたてがみ亭に帰り、昼寝をする事にしました。
神様からの熱が強すぎる神託から数日後、わたしはギルドに来ていました。
タバサさんの治療に必要な薬草がガストの街から数日くらいの距離に生えていると言う情報を得たのです。
「ダメよ」
しかし、なぜかリゼさんに止められてしまいました。
「そのエリアは危険地帯なのよ。
魔境のすぐ近くだし、高ランクの魔物が普通に出現する様な場所よ。
ユウちゃんの戦闘力が高い事は分かってるけど、それだけでは生き残れないの。
仲間と経験、その2つが絶対に必要よ」
「う、仲間と経験ですか」
「最低でも経験豊富な高ランク冒険者とペアでないと認められないわ」
「しかし、わたしは薬草を……」
「ダメ」
参りました。
わたしには仲間はいませんからね。
リュミナスさん達は長期のクエスト明けでしばらく休息すると言っていましたし……他に頼める人はいないでしょうか?
「なら、俺が一緒に行ってやるよ」
「え?」
「悪いな、話が聴こえちまったんだ。
お前、病気の食堂の女将の為に薬を作ろうとしてるんだろ。
俺が手伝ってやるよ」
困り果てたわたしに救いの手を差し伸べてくれたのは心優しい王子様……ではなく、いつかのひっは~男でした。
相変わらず、素肌に革ジャンと、どこの世紀末だ! と言いたい格好をしています。
羞恥心とかは無いのでしょうか?
「あら、ジャギじゃない」
「ぶぅふ⁉︎」
「ユウちゃん、それは女の子が出して言い音ではないわよ」
「リゼさんに言われたく有りません」
ゴチッ
ぐ、ゲンコツを貰いました。
見えていたのに避けれませんでした。
彼は何故か協力を申し出てくれましたが、こんな世紀末の偽伝承者の様な奴1人居たところで…………
「ジャギが一緒に行ってくれるなら安心ね。
ユウちゃん、気をつけて行くのよ?」
「え⁉︎ 良いんですか?」
「ええ、ジャギは凄腕のAランク冒険者だからね」
そ、そんなバカな‼︎