料理とわたし
「うめぇぇえ!」
「ホント、何これ?
ジューシーで肉汁が溢れ出してくるし、驚くほど柔らかいわ」
「それに、肉の持つ獣臭さもかなり抑えられていますね。
一体どう言う事なのでしょうか?」
「店主、もう1皿頼む」
みなさん大絶賛です。
バントさんにはいくつかの料理を教えたのですが、今日はその中でもバントさんとヨナちゃんの反応が良かったハンバーグを出しました。
所でマヨネーズが一般に出回っていたのに、ハンバーグなどの簡単な料理が伝わってないのは何故なんでしょうか?
バントさんにはハンバーグを始め、ポトフやうどん、ミートソースなどを教えました。
バントさんも独自に研究すると張り切っていましたので、今後が楽しみです。
そして、わたしの狙い通り、リュミナスさん達は風切羽の料理の虜になりました。
リュミナスさんは《虹のリュミナス》と呼ばれるAランク冒険者、《虹の大河》もAパーティとして高い知名度を持ちます。
そんな有名人である彼らが、足繁く通う食堂として、少しずつ風切羽の名は有名になって行くのでした。
リュミナスさん達と風切羽で食事を楽しんだ日から数日後、わたしは辺境伯家にお邪魔しています。
ミッシェル様の健診です。
もちろん事前にアポイントメントを取りました。
わたしは学習する女なのです。
ミッシェル様に体温や体調などを聞き、診断します。
「問題有りませんね、ご飯は食べれていますか?」
「はい、ちゃんと頂いています」
「何か困っている事などはありませんか?」
「そうですね……あぁ、あまり動けないのは少し辛いですね」
「動けないですか?」
「ん? なにかおかしいか? 女性は妊娠すると余り動くべきではないのではないのか?」
「いえ、フレイド様。
妊娠してもお腹が大きくなるまでは、ある程度は身体を動かした方が良いです。
運動不足だと難産になる事が多いんです」
「そうなのですか?」
「はい、これからは1日に30分ほど軽く散歩でもしたほうが良いです。
もちろん1人ではダメですよ。
誰かと一緒に散歩して下さい」
「ふむ、ではミッシェル、散歩に行くときはシルバとメイドを連れて行きなさい」
「はい、フレイド様」
「では、わたしはこの辺で」
「あぁ、ご苦労だったな。ユウ殿、感謝するよ」
「ユウ様、ありがとうございます」
「いえいえ、構いませんよこれくらい…………あ! 忘れるところでした。
実はフレイド様にお願いがあるのです」
「お願い? なにかな? 他ならぬユウ殿の頼みだ、可能な限り叶えたいと思う」
「ありがとうごさいます。
お願いと言うのは薬の材料を手に入れて頂きたいのです」
「薬?」
わたしはタバサさんの病気について、簡単にフレイド様に説明しました。
「なるほどな、分かった。
その薬の材料が手に入らないか、いろいろと当たってみよう」
「ありがとうございます。
こちらが必要な素材のリストです。
1つでも手に入れば有難いです」
「うむ、任してくれ。
少しでもユウ殿に恩を返したいからな」
「ありがとうございます」
わたしは辺境伯家を出ると教会に向かいました。
中に入ると早速、椅子に座り、祈り始めます。
前回は留守でしたからね。
神様が留守にするなんて、どんな用事があったのでしょうか?
(神様、神様、ユウです)
『あ、はいはい、神です。
あぁ、君か、この前は済まなかったね。』
(いえいえ、なにか御用事だったのですか?)
『うん、実は今、大人気の天津神800万の握手会に参加しててね』
(天津神800万…………ですか)
『そうそう、僕の推しメンは天照ちゃんなんだよね。
やっぱり王道感って言うかさぁ……』
(は、はぁ…………)
本題に入るまで30分以上(正確には時間は経っていないのですが)わたしは神様のアイドル論を聴かされるのでした。