救出とわたし
こちらに突進してくる1体目のハーピィの肩に足を掛け、更に高く飛び上がります。
「ギィガギャ!(私を踏み台に!)」
()内はわたしの想像です。
2体目のハーピィは飛び上がって来たわたしに驚愕し、身体が硬直しています。
右手の雷鳴の鉈でクビをはねると同時に左手の烈風の斧を投擲します。
3体目は2体目の身体でわたしの動きが見えなかったようで、斧を躱せず胴体を抉られ、墜ちて行きました。
わたしは振りながら水魔の戦斧を振るい、バランスを崩していた1体目のハーピィを始末します。
これで残っているのはハーピィクイーンのみです。
ここで離脱出来れば良かったのですが、配下を殺され怒り狂った様にとびかっかてきました。
ハーピィクイーンのランクはC、ゴブリンキングと同格の魔物です。
しかし、戦闘力はハーピィクイーンの方が上のようです。
ハーピィクイーンが翼を振るい、魔力が込められた鋭い羽を飛ばしてきました。
羽根を躱すと、隙を見せたハーピィクイーンに身体強化による高速での連撃を叩き込みます。
ズタボロになったハーピィクイーンはその場に力なく倒れこむと動かなくなりました。
わたしはリュミナスさん達を確認しようと巣の縁から下を覗き込みます。
そのときです!
死んだと思っていたハーピィクイーンが突如、起き上がると、わたしを突き飛ばしたのです。
ハーピィクイーンごとわたしの身体が空へと投げ出されます。
「きゃぁぁあ!」
コレが噂の紐なしバンジーですか。
身体強化が有るので死にはしないですが、このまま落ちたら痛そうですね。
しかも突然の事だったので魔法を詠唱する余裕はありません。
覚悟を決めて魔力を集めている時でした。
魔力を帯びた風がわたしの身体に纏わり付き、急激に落下の速度が遅くなったのです。
何が起きたのでしょうか?
わたしは飛○石のペンダントなど持っていません。
フワフワと落下するわたしに駆け寄って来たのは見習い機械工の少年ではなく、リュミナスさんとマナさんでした。
どうやらリュミナスさんの精霊魔法だった様です。
フワリと着地するわたしにリュミナスさん達が声を掛けてくれます。
「ユウ、大丈夫か?」
「怪我はない?」
「はい、なんとか軽傷で済みました」
「ハーピィクイーンを討伐したのか」
「はい、如何にも逃してくれそうに無かったので……最後に油断して、突き落とされてしまいました」
「魔物は生命力が強いんだからキチンとトドメを刺すまで油断しちゃ駄目よ」
「すみません、ご心配お掛けしました。
あの風は精霊魔法ですよね?
助かりました、ありがとうございます」
「まぁ、こうして無事だったから良いさ」
「子供は如何なりましたか?」
「まだ眠っているよ、今はカナンとブライアンがついてるわ」
「無事で良かったです」
「今日は近くで野営して明日、ガスタの街に帰還しよう」
その晩、目を覚ました子供は初め、かなりパニックになりましたが、もう安全で有り、直ぐに両親の元に帰れると説明し、何とか落ち着かせる事が出来ました。
今は食事を終え、安心したのかマナさんの膝で眠っています。
「それにしてもユウの料理は美味かったな」
「本当! まさか野営で街の食事処より美味しい食事が出来るとは思わなかったわ」
「ははは、お粗末様です」
「そう言えばユウはユーリア様の治療をしたんだったよな?」
「はい、そうですよ」
「やはり、ポーション作りなんかもするのか?」
「はい、これがわたしが作ったポーションです」
懐からポーションの瓶を1つ取り出し、リュミナスさんに手渡します。
「ほぉ……どうだマナ?」
リュミナスさんはマナさんにポーションを手渡します。
「これは……素晴らしい出来ね。
私達が使っているものより高品質で効果も高そうだわ」
ポーションを調べ終えたマナさんから、ポーションを受け取りました。
「そうか。
ユウ、俺達にポーションを売ってくれないか?」
「ポーションをですか?」
「あぁ、俺達のパーティは回復をほとんどポーションに頼っているからな。
高品質のポーションは是非手に入れたい」
「少し時間を頂ければご用意出来ますよ」
「そうか、恩にきるよ」
その後、ポーションの値段などの話を詰めていきました。




