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捜索とわたし

 洞窟の奥には10人の商人さんと7人の冒険者が居ました。


 商人さんの内7人は大した怪我は無さそうです。

 冒険者は皆傷だらけですが、急を要するのは2人ですね。

 怪我をしている商人さんの内1人は重傷です。


「き、君は誰だい? 何故ここに?」


 商人さんの1人が尋ねて来ました。

 まぁ、当然の疑問でしょう。


 わたしの見た目は誠に遺憾ながら、幼く……いや、実年齢より若く見られがちです。

 

「わたしはガスタの街から救援に来た冒険者です。

 外では仲間がハーピィを討伐しています。もう安心ですよ」


 わたしが告げると商人達は笑みを浮かべて、お互いの無事喜びました。

 冒険者達も安堵の表情を見せています。

 しかし、商人の内数人は沈んだ表情のままです。

 犠牲も出ていますし、亡くなった方の親族かも知れません。

  そればかりはどうする事も出来ませんがわたしはわたしに出来る事をしましょう。

 

「わたしは薬師です。

 外の戦闘が終わるまで重傷者の手当てを行います。

 先ずはそちらの商人さんからです。

 皆さん、手を貸してください」


 無事な商人さんや動ける冒険者達の手を借りて、手当てを行います。

 ヤバそうな人にはポーションを飲ませ、骨折に添え木をし、傷口を消毒していきます。


 一通り、全員の手当てが終わった頃、入り口を守ってくれていたブライアンさんが奥に入って来ました。


「ハーピィの討伐が終わったぞ」


 外に出ると既に大分日が落ちていました。

 あれだけいたハーピィを1時間程で討伐するとは、流石Aランクパーティですね。


 後はガスタの街に帰るだけです。

 現在、商人さん達や護衛の冒険者達を連れ帰る為、ギルドから馬車がこちらに向かっています。

 《虹の大河》の皆さんが乗って来た馬はどうにか無事だったのでわたし達は帰りもわたしはシリウスです。


 因みに今回の様な救援要請の場合、一定の報酬が貰えます。

 お金は商業ギルドから出ていて、こういった時の為、商業ギルドに登録してある行商人さんは毎月、ギルドにお金を納めているそうです。

 つまり、保険制度の様な物です。


 遠くに迎えの馬車が見えた頃、沈んだ顔をしていた女性の商人さんが嗚咽を鳴らしながら泣き始めました。

 それを隣にいた旦那さんらしき商人さんが涙を流しながら慰めています。


「うぅぅ、何で……何で……あの子が、私が代わりに、ぅう」

「済まない、俺が辺境に移ろうといったばかりに……」


 護衛の冒険者達も沈んだ顔をしています。

 恐らく子供を守れなかったのでしょう。

 仕方ないと言えばそれまでですがそう簡単に気持ちが整理できる訳が有りません。


 わたしも前世では両親を亡くしているので気持ちは少し分かります。

 しかし、どうする事も出来ません。


「でも、でも、エリスは生きたまま連れて行かれたのよ! どれ程の恐怖か、そんなの、あんまりよ!」

「ナーシャ……」


 奥さんは子供の残酷な最後を思い、大粒の涙を流しています。

 するお奥さんの言葉を聞いたリュミナスさんがハッとした表情で旦那さんを問い詰め始めました。


「おい、子供は生きたまま連れて行かれたのか?」

「え、え?」

「どうなんだ!」

「は、はい」

「いつだ、連れて行かれたのはいつ頃だった?」

「お、襲われて洞窟に逃げるときに……昼ごろです」

「よし、まだ間に合うかも知れない」

「え、ほ、本当ですか!」

「あぁ、ハーピィが生きたまま獲物を巣に持ち帰るのは雛に狩りの訓練をさせる為だ。

 そして訓練は外敵から雛を守る為、昼間、巣の大半の成体が集まっている時に行われる。

 今日の昼から今までハーピィはここに集まっていた。

 つまりまだ攫われた子供は生きている可能性が高い」

「集まっていたハーピィはほとんど討伐したから明日の昼ごろになれば子供は殺されるわね」

「今晩の内に助け出す必要が有りますね」

「あぁ、すぐにハーピィの巣を探そう」

「どうか、どうか、娘を助けて下さい!

 お願いします」

「必ず助けるとは約束する事は出来ねぇ、たが、全力を尽くす。

 だからガスタの街で待っていてくれ」

「はい、どうか、お願いします」


  わたし達は、攫われた子供を救い出す為、ハーピィの巣を探し始めました。


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