救援とわたし
投稿ミスにより1話飛ばしていた為、《経過観察とわたし》を挿入しました。
m(_ _)m
今日も軋まないスイングドアを通り、ギルドに入ります。
やはり、お金のある支部は良いですね。
ドアが軋みません。
「おい、お前!ここをどぶぅ⁉︎」
「バカお前、死ぬ気か‼︎」
「Bランク相手に絡むバカがどこにいるんだ!このバカ‼︎」
バカは、わたしが手を出す前に仲間の2人に連れていかれました。
この街でもわたしの名前がだんだんと売れて来たようです。
クエストボードに張り出された依頼書を見繕っていると、何だか表が騒がしいです。
すると乱暴にスイングドアが開き、兵士に肩を借りた冒険者がギルドに入って来ました。
「大変だ、誰か救援を頼む‼︎」
「何が有ったのですか⁉︎」
カウンターからフューイ代理が飛び出して来て、冒険者の男に治癒魔法を施します。
「うっ、ガスタの街から半日ほどの辺りで、ハーピィの群れに襲われたんだ」
「ハーピィですか?」
「かなり大きな群れだった。
護衛が半数やられて、ぐっ、商人達を近くの洞窟に逃がして、俺は救援を」
「状況は分かりました。
誰か彼を医務室に運んで下さい」
「は、はい」
冒険者の男は近くの冒険者達によって医務室に運ばれていきました。
「ハーピィか、少し厄介な事になったわね」
リゼさんが少し困った様に腕を組みました。
何が問題なのでしょうか。
「何を悩んでいるのですか?
直ぐに救援を送るのではないのですか?」
「ハーピィみたいに空を飛ぶ魔物は危険度が高いのよ。
こちらの攻撃は届かないけど相手の攻撃は届くと言うのは脅威よ。
飛べると言うのはそれだけで大きなアドバンテージになるの」
なるほど、戦争でも制空権を取ったは方が有利だと聞いた事が有ります。
「そうですね。ハーピィ単体はDランクですが、大きな群れと言う事は20~30体はいると見ておいた方が良いでしょう。
それ程の群れの討伐なら依頼のランクはA~Bくらいです。
今ギルドに居るBランク以上の冒険者は…………ユウさんだけですか」
「ならわたしが救援に向かいます」
「ダメよ、ユウちゃんの実力は分かっているけど1人では行かせられないわ」
「私やリゼさんは迂闊に街を離れる訳にはいきませんし……。
誰か、あと数人出来れば魔法や弓に長けた高ランク冒険者がいれば良かったのですが」
このままでは救援を待っている商人さんと護衛の冒険者達の命が危ないです。
ここは無理を通してでも救援に行くべきでしょうか?
しかし、わたしも無駄死には嫌です。
何かいい方法は無いでしょうか?
ギルドに重い沈黙が降りた時、スイングドアが開き、数人の冒険者達がギルドに入って来ました。
依頼から帰って来た冒険者パーティでしょうか?
「何だ? おい!こりゃぁ何の騒ぎだ?」
「リュミナス! 丁度良い所に帰って来てくれたわ」
リゼさんが声をかけるとリュミナスと呼ばれたエルフの冒険者は、明らかに嫌そうな顔をしました。
「リュミナスだ! 帰って来たんだ」
「リュミナス……あいつが『虹のリュミナス』か」
ギルドに居た冒険者達がザワザワしています。
有名な人なのでしょうか?
「リュミナス、街道で商人が大きなハーピィの群れに襲われたの、直ぐに救援に向かって頂戴!」
「断る!
俺たちは魔境での長期クエストを終えて帰って来たばかりだぞ。
体力も道具も消耗している。
パーティのリーダーとして受ける事は出来ない」
「おいおい、リュミナス、落ち着けって」
「話くらい聞いても良いじゃない」
リゼさんの要請を即、断ったリュミナスさんに仲間の人族の男性とエルフの女性が取りなします。
「リゼの持ってくる話をまともに受けていたら身が持たないだろ。
だいたい、この辺境にやって来ようとした商人なら魔物に襲われる事も覚悟の上だろ」
「それでも、商人達は助けを待っているわ。
例えば『イケメン』のエルフとかの助けをね」
ピク
「あ~あ、どこかに商人達の危機に颯爽と現れる『かっこいい』エルフはいないのかしら」
ピクピク
「ふ……仕方ないな、助けを求める声を捨て置く訳にはいかない。
俺たちAランクパーティ《虹の大河》が商人達の救援に向かおう!」
な、チョロい! こいつチョロ過ぎます!