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竜種とわたし

「あ、その、お、お食事中失礼しました。

 わたしは直ぐに帰りますので、

 お構いなく……」


 いけましたか?


「グルラァァア!」


 無理でした!

 ストーンドレイクはAランク、竜種としては弱い方ですが、魔力をあまり扱えない代わりにフィジカル面に特化した魔物だったはずです。


 つまり、遠距離攻撃はないと考えられます。

 

「グォォオ!」


 ストーンドレイクの突進を躱し、右側に回り込みます。


「はっ!」


 わたしの戦斧による斬撃はストーンドレイクの右脚に完璧な角度とタイミングで吸い込まれました。


 ガギィ

 しかし、魔力で強化された戦斧の一撃を持ってしてもストーンドレイクの右脚に僅かに傷を付ける事しか出来ません。


「硬いですね」


 迫り来る鋭い牙をバックステップで回避すると、カウンターでストーンドレイクの顔に戦斧の連撃を叩き込みますが、大して効いているようには見えません。


 ただ怒らせるだけの様です。

 こうなったらアレを試してみましょう。


「凍てつき 連なれ 【アイスピラー】」


 わたしはストーンドレイクを取り囲む様に氷柱を作り出しました。

 ストーンドレイクは氷柱に体当たりを繰り返し、こちらに怒りの咆哮を上げています。

 氷柱が破壊されるのも時間の問題です。


 ストーンドレイクが拘束から抜け出すまでの間に準備しなくてはいけません。

 戦斧の刃に手を添えたわたしは魔力を付与します。

 今までは、刃に魔力を纏わせるだけでしたが、今回は付与した魔力をどんどん凝縮して行きます。


 リゼさんの光の剣は武器(あの時は木剣)を触媒にして魔力を凝縮して作り出したものだと言っていました。

 つまり、魔力付与の先にある技なのです。


 戦斧に次々と魔力を付与し、凝縮を繰り返すと、僅かに戦斧が発光し始めました。

 これは、あまりに高密度に凝縮された魔力が可視化したものです。

 魔力が可視化したあたりから格段と魔力制御が難しくなりました。

 リゼさんはあれほどの魔力を完璧に制御していたのですから正にバケモノです。

 

「もう少し……もう少し……あ、ヤバい! ストップ! ストップ!」


 戦斧にはかなりの魔力が付与され、僅かに発光していますが『光り輝く』と言える程ではありません。


 これが今のわたしに制御出来るギリギリの魔力です。

 ストーンドレイクの拘束ももう持たない様ですし、これで決めます!


 氷柱に体当たりを繰り返しているストーンドレイクの顔側に回り、戦斧を振り上げます。

 少しでも集中を切らせば、集めた魔力が霧散してしまう様なギリギリの状態です。

 長くは持ちません。


 数秒だけ超身体強化を使い、渾身の斬撃をストーンドレイクの顔に叩き込みました。


「ガアァァア!」


 ストーンドレイクは咆哮と共に氷柱ごと吹き飛びました。

 

「やりましたか?」


 つい、声を上げてしまいましたが、これはやってないフラグです。


「グルラァァア!!」


 土煙の中から顔に大きな傷を付け、血を流しながら怒りに支配されたストーンドレイクが現れました。


「でも、効いていますね。ならもう1発……ん? あぁぁあ!?」


 なんとかまともなダメージを与え、活路を見出したと思った時、手に持つ戦斧に違和感を感じて見てみると、なんと魔鋼製の戦斧の刃が砕け散っていました。

 これではただの棒です。


 メイン武器として使って来た戦斧の破壊にショックを受けます。

 流石にこのまま戦うのはマズイです。


「縛れ 束縛の蔦 【グリーンバインド】」


 ストーンドレイクを蔦でぐるぐる巻きにして、シリウスを召喚、逃走……戦略的撤退を行います。


 わたしの目的はストーンドレイクの討伐ではなく風晶石の入手ですから無駄な戦いをする意味は無いのです。


 全速力で走るシリウスの後ろから蔦の拘束を引きちぎり、怒れるストーンドレイクが追いかけて来ます。


 超怖いです。

 想像してみて下さい。背後から体長5メートルを越える肉食生物が追いかけてくるのです。


 某ゲームの狩人達はこんなバケモノに武器1つと猫1匹で挑んでいるのですね。

 尊敬します。


 流石、フィジカルに特化した竜種、かなり速いです。

 このままでは追いつかれますね。


「縛れ 束縛の蔦 【グリーンバインド】」


 再び拘束の木属性魔法を唱えますが、勢いのついたストーンドレイクに絡みつく端から引きちぎられてしまいます。

 それならこれです。


「凍てつけ 凍えろ 大地の全てを 白へと染めろ 【アイス・フィールド】」


「グロォオ!!」


 突如、氷ついた地面に脚を滑らせたストーンドレイクはすっ転びました。


「縛れ 束縛の蔦 【グリーンバインド】」


 畳み掛ける様に魔法で拘束すると、わたしは全速力で逃げ……戦略的に撤退したのでした。


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