お告げとわたし
しかし、加護を与えたですか。
間違いなくユーリア様の事ですね。
やはり、わたしが転移して来た事や、薬師の技能を手にした事、辺境にやって来ることは神様の書いたシナリオ通りと言う事なのですね?
『違うよ』
……違いました。
『君が薬師の技能を手にしたのは本当に偶然なんだ。
あの少女の近くに送ったのは確かだけど、この世界に来てからの君の行動は全て君の意志であり、僕は一切干渉していないよ』
そうでしたか。
まぁ、ユーリア様も助かりましたし、問題ありませんね。
『そろそろ話せる時間も終わりかな』
時間制限があったのですか。
『そうだよ。君は聖職者って訳ではないからね」
聖職者で有ればもっと話せるようです。
『そうだ今君が居る教会は孤児院を運営しているのだが、領主からの支援だけでは生活もギリギリらしくてね、少し援助してやって欲しい』
援助ですか?
『ああ、孤児院の子供達は毎日しっかりとお祈りしてくれるからね』
わ、分かりました。
でも確かこの教会は精霊教の教会だったはずです。
信仰しているのは精霊であって神様では無いのでは?
『僕は細かい事は別に気にしないよ。じゃあ、またね』
神様から直々に寄付を頼まれるとは思いませんでした。
わたしは椅子から立ち上がり、入り口の近くに居たシスターを手招きしました。
「どうかいたしましたか?」
「いえ、お陰でお祈りを済ますことが出来ました。
これ、ご寄付です」
わたしはアイテムボックスから金貨を3枚程取り出し、シスターに手渡します。
「どうもありがっ……」
ん? 金貨を受け取ったシスターが固まってしまいました。
「どうかしましたか?」
「い、いえ、そ、それより、こ、これ金貨じゃないですか! こ、こんな大金受け取れません」
「気にしないで下さい」
「で、でも」
「何かあったのですか?ミリア」
「院長先生」
教会の奥から修道服を着たお婆さんが出てきました。
彼女がこの教会の院長の様です。
「こんにちは、院長さん。
わたしは冒険者のユウと言います」
「初めまして、この教会を預かっています、リーンと申します。
ミリアが何かご迷惑をお掛けしましたか?」
「いえいえ、違いますよ。
わたしはただ寄付を受け取って頂きたいだけです」
「ご寄付ですか、ありがとうございます。
ミリア、何を慌てているのですか?」
「だ、だって先生ぇ、き、金貨ですよ」
「へ?」
「はい、これ」
わたしは院長さんに金貨を手渡しました。
「ゆ、ユウさん、これは幾ら何でも頂けませんよ⁉︎」
「まあまあ、取っておいて下さい。
それで子供達に何か美味しい物でも食べさせてあげて下さい」
「しかし」
「わたしはBランク冒険者です。
これくらいなら大した事では有りません」
「そ、そうですか?」
いきなり金貨はやり過ぎでした。
最近、金銭感覚が麻痺して来た気がします。
気を付けなければなりませんね。
Bランク冒険者と言う肩書きを出してやっと受け取って貰えました。
高ランク冒険者ともなれば一つの依頼での報酬が白金貨や聖金貨となる事もありますからね。
まぁ、Bランクと言ってもわたしは、まだペーパーですが。
「せ、先生」
「ユウさんがここまでおっしゃるのなら好意を無碍するのは失礼ですよ。
有り難くご寄付を頂き、感謝いたしましょう」
「は、はい。
ユウさん、ありがとうございます」
「ありがとうございます。
お礼と言っては何ですがお茶でも如何ですか?」
まだ昼前ですから時間はあります。
孤児院で少しお茶を頂く事になりました。
孤児院はかなり老朽化していますが隙間風などは無く、子供達もきちんとした服を着ています。
院長さんによると服や住居、食べ物などは領主様が支援してくれているらしいです。
流石、フレイド様です。
しかし、支援はあくまで最低限です。
幾ら貴族とは言え資金は有限なのです。
子供達と院長さんやシスター達は結構ギリギリの生活をしている様です。
院長さんにお茶を頂きながら聞いた印象です。
う~子供達にはおなかいっぱい食べさせてあげたいですね。
それに、ちらちらと病気の子どもが何人か居ますね。
すぐにどうこうなるようなものではないですが一度、時間を取って見てみたほうがよさそうです。