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決着とわたし

「そろそろ終わりにする」そう言ってリゼさんは木剣を正眼に構えました。


 するとリゼさんに周囲から大量の魔力が集まり始めます。


 魔法は自らの体内にある魔力を利用するのが一般的ですが、一部の上級魔法や儀式魔法などは自分の魔力を呼び水に、自然界の魔力を利用する物が有ります。


  しかし、それは魔方陣や触媒などの補助がある事が前提です。

 リゼさんは個人で扱える量を遥かに超える魔力を集めています。

 それでも魔力を完全に制御したリゼさんどんどん集めた魔力を圧縮して行きます。


 莫大な魔力がリゼさんの持つ木剣に凝縮されていきます。


 魔力の凝縮がおわり、安定した時、リゼさんの手に握られていたのは、1本の剣でした。


 それはまるで選ばれし勇者が神様や精霊から賜わった聖剣であるかの様に、どこまでも力強く、理解できないほど恐ろしく、目が離せないほど美しい、太陽の光を束ねかの様に輝く、光の剣です。


「ユウちゃん、全力で防御しなさい」


 リゼさんに声を掛けられて、ようやく思考が戻りました。

 慌てて防御を取ります。

 

「大地の眷属よ 緑の子らよ 守り固めよ ウォール・フォレスト」


 トレントの魔石を触媒にした木属性の上級防御魔法を唱えます。

 わたしとリゼさんの間に大木によって森の様な壁が現れました。

 魔力で強化された木の壁はガスタの外壁にも劣らない強度が有ります。

 

「凍てつき 連なれ アイスピラー」


 ウォール・フォレスト前に何本もの氷柱を出します。

 スノーホワイトの効果で強化された氷柱は魔鋼並の強度が有る筈です。

 それでもわたしの頭の中で今までに無いほどの警報が鳴っています。

 更に身体強化を掛けて防御力を最大まで引き上げます。

 わたしの防御が整うと(恐らく待ってくれていたのでしょう)リゼさんは特に気負った所も無く、剣を振ります。


「【第1の刃:エア】」


 軽く振られた光の剣から放たれた魔力を伴った風は、瞬く間に破壊神の化身の様な暴風となり、渾身の防壁を紙屑の様に削り飛ばし、わたしを飲み込みました。

 上も下も分からない様な暴風の中、最早痛みすら認識出来ないわたしは、ただひたすら魔力を集めて、耐えるしか有りませんでした。


 ようやく風が収まった後には、抉れた大地とズタボロになったわたしだけが残っていたのです。


「ぐっ……」


 右腕は折れていますね。あばらも何本か折れています。

 切り傷多数、血も流し過ぎました。

 魔力も殆ど残っていません。


「そこまで!」


 模擬戦の終了を告げるフューイ代理の声を聞いたところでわたしの意識は途切れてしまいました。



 わたしが目を覚ました時、そこは平原ではなくどこかのベッドの上でした。

 身体中の切り傷は跡すら残らず治療されています。右腕やあばらも痛みは有りません。

 恐らく治療魔法でしょう。

 わたしが身体を起こして直ぐにフューイ代理とリゼさんが部屋に入って来ました。


「あら、起きたのね。気分はどう?痛い所とかある?」

「いえ、大丈夫です。痛みも有りません」

「そうですか。しかし、今日は1日、安静にしていて下さい。

  傷は塞いで有りますが多くの血を流していますし、魔力も殆ど使い切っていましたからね」

「はい、あの、ここはどこですか?」

「ここはギルドの医務室よ。

  今日は泊まれる様にしてあるからゆっくり休んでね」

「ありがとうございます。

  試験の方はどうなりましたか?」

「ユウさんは問題なく合格ですよ」


 そう言ってフューイ代理はBランクになったわたしのギルドカードを渡してくれました。

 試験の勝敗は合否にら関係ないようですね。


「所でBランクに上がる人はみんなアレを受けるのですか?」

「ははは、そんな訳無いじゃない」

「はぁ、その辺の冒険者がアレを正面から受けたら塵一つ残らず消し飛びますよ」


 最近、わたしのなかでフューイ代理のイメージは『ため息』になりつつ有ります。

 苦労しているのですね。


「それでリゼさんは何者なんですか?」

「ん? わたしは美人で優しいギルドのお姉さんよ」

「リゼさん、そう言う所を直して欲しいと言っているんです。

 ユウさん、彼女はこのガスタの街の冒険者ギルドのギルドマスターであり、この大陸に3人しかいないSランク冒険者の1人、『至高の冒険者』リゼッタ・A・ドラゴン殿です」



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