再会とわたし
特に問題など無くガナの街に着いたわたしは、ロック鳥のさえずり亭にやってきています。
リヒトさんが、ガナの街の支店での用事を終えるまで2日間の別行動です。
「お久し振りです。ミーナさん」
「ユウさん、帰ってきたのですか？」
「いえ、すみません。
護衛依頼でよっただけなんです。
ガスタの街の方が薬の素材などが豊富ですから、拠点を移す事にしたんです」
「そうでしたか、まぁ、そう言う方も多いですからね。
また、遊びに来て下さい」
「もちろんです」
「あと、辺境は危険だと聞きますから気を付けて下さい」
「はい。気をつけます」
「ユウさんは直ぐにガスタの街に帰るんですか？」
「いえ、2日間はこの町に滞在します。
なのでその間、宿泊をお願いします」
「分かりました。いつもの部屋が空いていますから、そちらにどうぞ」
「ありがとうございます。
ギルドにも挨拶に行って来ますから鍵は後で良いです」
「分かりました、行ってらっしゃい」
ミーナさんに見送られ、ギルドに向かいます。
軋むスイングドアを開け、ギルドに入りました。
多くの視線を感じます。
それと同時にわたしから目を逸らす冒険者も何人かいました。
「おい、嬢ちゃん。何の用だ？ここはお前みたいな奴が来る場所じゃねぇぞ！」
早速、ニタニタした男が絡んで来ました。
残念ながら前の男の様に止めてくれる知り合いは居ない様です。
「どこに行こうとわたしの勝手では無いですか？」
「あぁん、てめぇ、なに舐めた口利いてんだ。
ガキが調子に乗ってんじゃねぇぞ」
「舐めている相手に舐めた口利いてなにが悪いのですか？
そんな事も分からないのですか？
バカですね。
そんなんだからいつまで経っても上のランクに上がらないし、彼女も出来ないし、お金もないし、足も臭いんですよ」
「な、な、なんだと、てめぇぇえ！」
ニタニタ男が拳を振り上げて襲いかかって来ました。
軽く身体強化して拳を片手で受け止めると、目を丸くしたニタニタ男に蹴りを食らわせます。
数メートルもの距離を宙に舞うという貴重な体験をしたラッキーなニタニタ男は喜びのあまり気を失ってしまいました。
わたしはドン引きする周囲の冒険者を無視してカウンターで苦笑いを浮かべるラティさんのところに向かいます。
「お久し振りです、ユウさん。
相変わらずですね」
「数ヶ月程度では何も変わりませんよ」
その時、カウンターの奥からギルドマスターが現れました。
「騒がしいと思ったらやっぱり嬢ちゃんか。
もう少し大人しく入ってこれねぇのか？」
「バカ共が何もして来なかったら静かに入りますよ。
冒険者なんて商売しているのですから舐められたらおしまいです」
「まぁ、そりゃそうだ。
お前さんを見て強さを見抜けない奴が悪い」
「当然です」
「それはそうと、ユーリア様の治療は成功したらしいな。辺境伯様からギルドに礼状が届いているぞ。
ありがとうな」
「いえいえ、わたしは依頼をこなしただけですよ」
「今日は護衛依頼でこの街に来たのですよね」
「はい。この依頼をこなすとCランクに上がり、直ぐにＢランクの試験を受けられるそうです」
「随分と早いな。
嬢ちゃん、なにやったんだ？
辺境伯様からの高難易度の依頼を成功したんだからギルドへの貢献度は十分だが、流石にそれだけではないだろう？」
「実はエルダートレントと間違えて、エンシェントトレントを討伐しまして……」
「Aランクの魔物じゃねぇか。
そりゃいつまでもDランクにしとくわけには行かねえよな」
「ははは」
久しぶりにラティさんとギルドマスターの2人と話した後、ギルドから出ようとした時、後ろから声を掛けられました。
「おや、ユウさんでは有りませんか！」
振り向くと赤毛の青年がこちらにやって来ました。
「ロキさん！お久し振りです」
「お久し振りです。いや、ユウさんの活躍は聞いていますよ。
ゴブリンロードを倒して、辺境伯様のご令嬢の難病を治療したと！」
「ははは、偶々ですよ」
「ご謙遜を、所で私は今度、迷宮都市ダイダロスに向かうのですが、良かったら護衛に加わって貰えませんか？報酬も弾みますよ」
「すみません。
わたしも今、護衛の依頼を受けていますので明後日にはガスタの街に帰らなくてはならないのです」
「そうでしたか。残念ですが、仕方ないですね。
また、機会があればよろしくお願いします」
「はい、その時は是非」
「ガスタの街に帰るという事は、今はガスタの街に拠点を置いているのですか？」
「えぇ、辺境は薬の素材などが豊富ですからね」
「なるほど、また私もガスタの街に寄らせていただきます」
「はい。また会いましょう」
わたしはロキさんと別れ、ロック鳥のさえずり亭に戻りました。
明日はなにをしましょうか？
