護衛とわたし
新たな武器を手に入れてから3日、ガスタの街の周辺で魔物を狩り、二本の斧もだんだんと手に馴染んできたので、そろそろリゼさんに言われていた護衛依頼を受けようと思います。
ギルドに入り、クエストボードに向かおうとすると、カウンターに居たリゼさんから声が掛かりました。
「おはよ。
護衛依頼、見繕って置いたわよ……代理が」
「あ、ありがとうございます」
今度フューイ代理にお菓子でも作って持って行ってあげましょう。
「ユウちゃんはCランクに上がる為の形式的な依頼だから簡単なヤツにしておいたわ。
その分報酬も低いけど、それは我慢してね」
「はい。大丈夫です」
リゼさんから依頼の詳細を受け取りました。
酒場でカットフルーツを食べながら詳細を確認します。
この梨の様なフルーツは美味しいですね。
依頼者はガナの街に行く商人さん、ガナの街と往復する間の護衛を依頼した様です。
ガナの街までは片道数日程度、わたしとシルバさんはもっと早く来れましたが、これはわたし達が移動を優先して、暗くなるまで進み、天候に恵まれ、魔物にもあまり出会わなかった為、かなり早く移動できたからです。
今回は別に急ぐ旅ではありませんから普通に時間が掛かるはずです。
なので多目に見積もって移動に往復20日、ガナの街での滞在が2日の予定です。
出発は明後日なので食糧と薬を用意しておきましょう。
出発の日、門の前で依頼者と待ち合わせです。
「すみません。冒険者のユウさんですか?」
「はい、貴方が商人のリヒトさんですね」
「はい、しばらくの間よろしくお願いします」
リヒトさんは……なんと言うか、その~普通です。
村人Aを想像して下さい。
そんな感じです。
門を出たわたし達はガナの街を目指し進み始めました。
わたしはシリウスに、リヒトさんはダッシュリザードと言うトカゲの魔物に乗っています。
ダッシュリザードは速度や持久力などではバードランナーや馬に遅れますがその代わりに、踏破力に優れる魔物で、急な傾斜や荒れ道でも難なく進めるそうです。
しばらくすると前方を塞ぐ様にオークが現れました。
リヒトさんには下がって貰い難なく2匹を倒します。
すると残ったオークは逃げ出しました。
本来なら追撃して始末するところですが、今は護衛中なので仕方が有りません。
逃げたオークを見逃し、リヒトさんと移動を再開します。
そして、日が落ちる前に野営の用意をします。
夕食はわたしが作りました。
干し肉と玉ねぎの様な野菜のスープに堅パンとチーズを加え、魔法で炙ります。
オニオングラタンスープ風です。
「いやぁ美味しいですね。まさか野営でこんなに美味しいものが食べられるとは思いませんでした」
「ありがとうございます。
ところでリヒトさんはなんで、わたしだけに護衛を任せてくれたのですか?
正直に言って、わたしはあまり強い様には見えないと思うのですが?」
「ははは、確かにそうですね。
実は僕の商会が依頼を出した時、ガナの街に行くのは元々、僕の部下の予定だったのですよ」
「ではなぜリヒトさんに?」
「ユウさんが護衛してくれると聞いたので急遽、僕が部下と代わりガナの街に行く事になったのです」
「わたしですか?」
「そうです。ユーリア様の難病を治療した凄腕の薬師と知己を得るチャンスでしたからね。
それに戦闘力の方もリゼさんが太鼓判を押してくれましたからね。
しかし、まさかこんなに可愛いお嬢さんだとは思いませんでしたけどね」
「ははは、商人さんはお世辞がうまいですね」
「ははは」
いえ、待って下さい!もしかしたらお世辞ではない可能性も十分に有ります!
ええ、有りますとも!
1日目の夜は難なく過ぎました。
夜の見張りはシルバさんを参考にデネブに任せました。
翌朝、起きるとわたしの横にゴブリンが数匹、等間隔で綺麗に並べられていました。
デネブに今後はもう少し離れたところに置く様に頼んで置く事にします。