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森の主とわたし

 エルダートレントは地面から次々に槍の様に鋭い根っこを突き上げて来ます。

 攻撃の予備動作が見えない為、ものすごく避けにくいです。

 すでに何度か攻撃がかすり、少なくない血を流しています。

 このまま討伐に時間が掛かると危険です。


 なんとか逃げ出せない物かと辺りを観察しますが、すでにこの広場はエルダートレントに操られた魔物たちに囲まれています。


 エルダートレントの本体から無数の氷柱が飛んで来ました。

 氷属性魔法のアイスニードルに似ています。


 エルダートレントは魔法を使うと本に有りました。しかし、この程度なら問題無いですね。

 根っこの突き上げ攻撃より、避けやすいです。

 エルダートレントとは言っても所詮は木なのです。

 戦術など有りません。

 また無策にアイスニードルを打って来ました。

 

「甘いですよ!」


 命中させる気なら逃げ場が無いように弾幕を張るべきです。


「フハハ、左舷弾幕薄いですよ!」


 わたしは攻撃の薄い左側に跳びながら身体強化を使い衝撃に備えます。

 

「ウワッぷ?!」

 

 しまった、誘われた!!

 アイスニードルの衝撃に備えていたわたしは突如発生した黒い霧に無策に突っ込んでしまいました。

 どうやらこれは闇属性魔法のスリーブミストのようです。


 危な!

 わたしが異常状態に強い神様製の身体だったから良かったものの、普通ならこれで終わっている所でした。


 まさか植物に頭脳プレイで負けるとは……

 直ぐに調子に乗るのはわたしの悪い癖です。

 気を引き締めたわたしは感覚を研ぎ澄まし、核を探します。


 やはり魔石を破壊するのは勿体無いですし、そもそも魔石はほとんどの場合、魔物の身体の中心にあります。

 エルダートレントの場合はわたしの遥か頭上と言う事になります。


 根っこ攻撃やアイスニードルを回避しながら魔力を探り1番魔力が集まっている場所を見つけました。


 エルダートレントの正面……しょっ……わたしから見て正面!の右下の辺りにです。

 エルダートレントがアイスニードルを打って来た時、戦斧を構えて突っ込みます。


「うわっとと!?」


 エルダートレントまであと数メートルほとと言うところで地面から無数の根っこが手当たり次第に突き上げて来ました。

 核を守る為の行動でしょう。

 距離を取ればアイスニードルと根っこで器用に狙い、近づけばランダム突き上げで面制圧。

 非常に厄介です。


「うわ!」


 躱したと思った根っこの側面から新しい根っこが生えて来ました。

 そんな事まで出来るのですか。

 わたしはエルダートレントの根っこに絡まれて釣り上げられてしまいました。

 

「ま、まさかこのままわたしに薄い本のような事をする気では……」


 余計な事を口走ったからでしょうか?

  エルダートレントはわたしを握り潰すつもりなのか、すごいチカラで締め付けて来ました。


「あぁぁ、ぐ、ギブ、ギブ!すみません!冗談です!」


 調子に乗ってはいけないと誓ったばかりだったのに……これはヤバいです。

 早く何とかしないと、割とマジで死にます。

 ん……この魔力の流れは……もしかして……いけますか?


 わたしは一か八かエルダートレントの根っこに手を当て、木属性魔法を唱えます。


「生い茂る 緑の子らよ 我が意ままに コントロールプラント」


 わたしはエルダートレントの根っこから受ける抵抗を押し込むように魔力を込めます。

 すると根っこが緩みわたしは何とか脱出することが出来ました。


 あの時、エルダートレントの根っこから木属性魔法で植物を操った時と同じような魔力の流れを感じたのです。

 つまりエルダートレントは動物の足のように根っこを動かしていた訳ではなく、自らの根っこに木属性魔法を掛けて操っていたのです。

 それならばやりようは有ります。


「凍てつけ 凍えろ 大地の全てを 白へと染めろ アイス・フィールド」


 現在、唯一使える氷属性魔法の上級魔法です。

 広範囲攻撃なのですが余り威力がないので使い道がなかったのですが、ここで役に立ちました。

 わたしは真っ白に染まった地面を手に戦斧を握りしめてエルダートレントに向かって走ります。

 エルダートレントは地面から無数の根っこ生やして来ましたが、一面の氷の所為でそのスピードはかなり遅くなっています。

 これだけ遅ければ割り込めるのです。


「生い茂る 緑の子らよ 我が意のままに コントロールプラント」

 

 眼前へと迫った鋭い根っこは、わたしを避けて通るようにあらぬ方向へとそれて行きます。


「これで終わりです!」


 わたしは数秒だけ、身体強化をつかいます。

 そして、エルダートレントの核に目掛けて渾身の一撃を打ち込むのでした。


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