見送りとわたしと聖地
リゼさんも回復したのでそろそろエンシェントドラゴンの所に行きたいと思います。
そうサーリスさんに伝えると、明日出発する事に成りました。
「エンシェントドラゴンは龍仙境に居るのでは無いのですか?」
「いや、此処に居ない。エンシェントドラゴンへ至った者は龍仙境を出て、我々龍族の聖地で生活する決まりなんだ」
「聖地ですか……」
「ああ、聖地にはエンシェントドラゴンである俺の姉が居る…………筈だ」
「筈……ですか……」
わたしが冷たい視線を向けるとサーリスさんは慌てて弁明し始めました。
「俺も何年も会って無いんだ。姉は何年か人間の国々を旅した後、急に戻って来たんだが、何が有ったのかはわからないが塞ぎ込んでしまってな。人間の国で何が有ったのか話さないし、気まずくてな。
少し距離を置いてしまった。
その内に姉はエンシェントドラゴンとなって母がいる聖地へと移り住んだ。
最後に会ったのは母を止めようとした時だが、あの後も直ぐに聖地に帰ってしまってな。
今、どうして居るのかわからない」
「それって大丈夫なんですか? もし人間の国で何か嫌な事があって人間を目にしたら殺しに掛かって来たりしませんか?」
「だ、大丈夫だ。姉も大部分の龍族に漏れず人間が好きだ。
もし、嫌いなら正気を失って人間の国に向かおうとしている母を命懸けで止めようなどとはしないだろう。
それに、聖地にいるエンシェントドラゴンは姉だけではない。
もし姉が協力してくれなければ、俺が責任を持って他のエンシェントドラゴンに頼んでやる。
故郷の窮地を救って貰ったんだ。血くらい分けてくれる方も居るだろう」
「お願いしますよ?」
サーリスさんに念を押したわたしは翌日に備えて早めに眠りに着くのでした。
そして翌日、龍仙境の出入り口では多くの人達が見送りに来てくれました。
転魔症を患っていた人達です。
口々にお礼を言う彼らに挨拶し、アルル達ともお別れをすると、龍の姿になったサーリスさんの背に乗せて貰います。
わたしとリゼさんが背中に掴まったのを確認したサーリスさんは大きな翼を羽ばたかせ、空高く飛び上がりました。
魔境の空はとても危険です。
わたし達もオリオンに乗って移動する事を諦めていた程です。
しかし、エンシェントドラゴンに近い実力を持つサーリスさんはそんな危険な空域を悠々と飛行します。
途中、何度か強そうな鳥型の魔物を見掛けますがサーリスさんの姿を見ると一目散に逃げ出して行きます。
しばらく進んだ後、サーリスさんはグングンと高度を上げて、普段わたしがオリオンに乗って飛んでいる高度を遥かに超えました。
これ程の高度となると気圧や温度が変化し、とても人間が活動できる環境では無い筈なのですがサーリスさんの背中は地上と何ら変わりが有りません。
どうやらサーリスさんが魔法で守ってくれている様です。
「ユウちゃん、アレ見て!」
「え⁉︎」
わたしがサーリスさんの魔法に感心していると後ろのリゼさんがわたしの肩を叩きました。
「おお!!」
リゼさんが指差す方に目を向けると大きな島が空の上に浮いています。
空飛ぶ島です。ラ○ュタは本当に有りました!
島にはパルテノン神殿の様な建物が見えますね。アレは龍族の遺跡なのでしょうか?
不思議な空飛ぶ島に驚くわたしとリゼさんにサーリスさんが声を掛けます。
「アレが我々龍族の聖地だ」




