異世界とわたし
気が付くとわたしは森の中にポッカリと空いた広場の様な場所に立っていました。
「ん?」
視点に少し違和感を持った私は自分の体をペタペタと触って確認しました。
「背が少しだけ縮んでる?」
もしかして若返ってますか?
わたしは自分の身体を確認します。
身につけているのは少しゴワゴワした丈夫そうな服とマントです。
肩からは、大きめのカバンを下げています。
そして、腰には剣が金具で固定されていました。
ショートソードと言うやつだと思います。
剣を軽く振ってみると、初めてですがかなり鋭い一撃を繰り出せて驚きました。
恐らく技能:武芸百般の効果なのでしょう。
次にアイテムボックスの中を確認します。
「数日分の食料と包丁や鍋、毛布などの野営具、薬鉢やフラスコなどの薬師として使う道具に幾らかのお金」
そのお金を財布代わりの革袋からひとつひとつ取り出して並べていきます。
お金は鉄貨、小銅貨、銅貨がそこそこ、小銀貨、銀貨が数枚、小金貨が一枚だけありました。
神様に植え付けられた知識によると、贅沢をしなければ数ヶ月は生きて行ける位の金額です。
そしてわたしはアイテムボックスからスロットで貰ったローブを取り出してみた。
たしか、夜天のローブと言うアイテムだ。
一見、上等なだけの黒いローブだけれど、これは偽装されているみたいです。
実際には防刃、対魔力、防汚、耐寒、耐熱の効果があるマジックアイテムです。
更にはそれらの機能を隠す偽装の機能も有ります。
まさに神から授かった神器と言う訳です。
肌触りもとてもいいですね。
まるで高級絨毯の様です……想像ですけど。
わたしはマントをアイテムボックスに仕舞うと夜天のローブを羽織りました。
すると一瞬で周囲がわたしの1番心地良いと感じる温度に変わった気がしました。
凄く便利なローブです。
今度は魔法を使ってみようと思います。
「水よ 集え ウォーターボール」
水属性の初級魔法を唱えてみました。
わたしの右手に集まった水が手を向けた方向へ勢い良く放たれて、目標にした木に当たりその枝葉を大きく揺らします。
「おぉ!」
初めての魔法に感動します。
次に【召喚魔法】です。
錬金術や死霊術、仙術などと同じ属性魔法以外の特殊魔法です。
本来、召喚魔法は魔物と戦って屈服させたり、信頼関係を築いたりした上で契約を結ぶ物なのですが、わたしはすでに3体の魔物を召喚出来る様です。
・Aランク サンダーバード
・Cランク サイレントオウル
・Eランク バードランナー
以上の3体が召喚出来る様です。
わたしは早速Aランクのサンダーバードを召喚してみる事にしました。
「契約により 扉を開く 羽ばたく雷光を我が元に 召喚 サンダーバード」
わたしの目の前に直径3メートル位の魔方陣が現れました。
「え!あれ!?」
ところが上手く魔力が制御できず、魔方陣は光となって砕け散って仕舞いました。
どうやらまだわたしの魔力制御ではAランクのサンダーバードは召喚出来ないようです。
「契約により 扉を開く 地を駆ける翼を我が元に 召喚 バードランナー」
改めてEランクのバードランナーの召喚を試みます。
直径1メートル位の魔方陣から体格の良いダチョウのような魔物が現れました。
さて、まずは名前を付けなくてはいけません。
チョ○ボと名付けたい所ですがやはり此処はオリジナリティのある名前を付けてあげるべきでしょう。
わたしはバードランナーの体を見つめます。
カモノハシの様な平たい嘴
円らな瞳
白い翼は羽根先に行くほど赤みが差してピンク色になっていきます。
「う〜ん、白……ピンク……は⁉︎『ちょめ助』と言う名前は如何でしょうか?」
「ぐぁ⁉︎」
「え?ダメですか?
可愛いのに……では……そうですね、シリウスならどうですか?」
「ぐぁ!」
どうやら気に入ってくれた様です。
でもどう考えてもちょめ助の方が可愛いと思います。
「これからよろしくお願いします、シリウス」
「がぁ!」
それではいよいよ街に向かおうと思います。
街の場所は分かりませんが、街道沿いに進めば何処かの街に着くはずです。
早速シリウスの背中に乗って遠くに見える街道を目指して出発したのでした。