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薬師のユウさん、大斧担いで自由に生きる  作者: はぐれメタボ
第二章《暗躍する魔族》
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◆反第一王子派

「何だおまぇぶ!」


 領主一家が軟禁されているボロ屋敷の正面入り口を蹴破ったわたし達に驚きながら腰の剣に手をかけた兵士達でしたが、ヴァルさんとランスさんに直ぐ様殴り倒されて静かになりました。


 わたしは玄関ホールから延びる廊下の一つを指差して素早く指示を出します。


「ヴァルさんとランスさんは伯爵家の弟妹をお願いします。

 この通路を真っ直ぐに進んだ所に階段があります。その階段で3階に上がった所の北側の部屋です。

 ギルバートさんの弟と妹、それから侍女が1人居ます」

「分かった」

「アルさんとコゼットさんはわたしと来て下さい」

「はい」

「分かりました」


 玄関ホールで二手に別れたわたしは、2人を引き連れてヴァルさん達とは別の階段を駆け上がって行きます。


「え?……へぶ!」

「な⁉︎……がは!」


 偶に遭遇する兵士を叩き伏せながら走る事しばし、廊下の真ん中に仁王立ちする熊っぽい獣人族の兵士に道を塞がれました。

 彼の背後に有る扉がギルバートさんと伯爵夫婦が軟禁されている部屋です。


「今夜は何やら騒がしいと思ったら、まさか賊が侵入して来るとはな。

 俺を下の連中と一緒だと思うなよ。

 俺こそはゼラブル王国第3兵団にその人有りと謳われるアーノルどふぃ!」

「長いですよ」


 何やら長々と演説を始めた兵士の腹に拳を叩き込み、ギルバートさんが居る部屋のドアノブを回します。


 ガチャ


 部屋の中には3人の人物がわたし達を待っていました。


 中心に立つのは巨漢の獅子人族の青年、デネブ越しに話したギルバートさんです。

 彼の背後には少々やつれている壮年のしし人族、彼がブラン伯爵でしょう、その隣に伯爵と同年代らしき豹人族の女性が立っていました。


「君達が…………君はまさか、コゼット嬢か⁉︎」

「お久しぶりです。ギルバート様」

「コゼット、生きていたのね」

「はい、おば様。ご心配をお掛けしました」

「取り敢えず此処を出ましょう」


 再会を喜ぶ彼らですが早い所この場を離れるべきでしょう。


「ああ、君は……」

「わたしはユウと言います。詳しい話は後で」

「そうだな。弟と妹はどうなる?」

「わたし達の仲間が救出に向かっています。問題ありません」

「分かった」


 こうしてブラン伯爵達を救出したわたし達はヴァルさん達と合流した後、更に領主の館を襲撃、第一王子が派遣した連中を捕らえブランの街を取り返したのでした。

 そしてブラン伯爵達の協力を得たわたし達は…………。





 わたしはクイクイと手に伝わる感覚に反応してタイミング良く竿を立てます。

 30センチを超える大きな鱒の様な魚をゲットです。


「…………こうして釣りに勤しんでいるのでした」

「え?どうしたんですかユウ先生?」

「いえ、何でも有りませんよ」


 伯爵救出からもう直ぐ1ヶ月、わたしは街をぶらついたり、氷鳥湖に釣り糸を垂らしたりしながら過ごしていました。


 ブラン伯爵は街を混乱させた責任を取る形で当主の座をギルバートさんに譲り、新ブラン伯爵となったギルバートさんはコゼットさんや捕らえた麻薬を売りに来た公商の証言を使って反第一王子派を作り上げていました。

 中にはブラン伯爵家の様に軟禁されていた貴族まで居たそうです。


 それらの勢力を結集して王都に乗り込み第一王子の廃嫡を迫る計画らしいです。


 ただの貴族の集まりにそんな事が出来るのか疑問でしだが、その答えはコゼットさんが教えてくれました。


 ゼラブル王国は元々、各部族に別れて生活していた獣人族が集まって作られた国なので、王家と言っても各種族の代表(現在の高位貴族)を蔑ろには出来ない土壌があるのだそうです。


「しかし、こんなに長くなるとは思っていませんでしたね」

「す、すみません」

「まぁ、アルさんが悪い訳では有りませんよ」


 餌を付け直した針を再び湖に投げ込みます。


「ん?」


 そんなわたしの元にデネブが舞い降りて来ました。


 わたしはデネブの足から手紙を受け取ると、フワフワの羽を撫でながらいくつかの木の実を与えてデネブを労い送還しました。


「リリからの手紙ですね。フレイド様からアルさん宛の手紙も有りますよ」


 なんだか長い仕事になりそうなのでリリへの手紙をデネブに運んで貰った返事が届きました。

 フレイド様からの手紙をアルさんに渡し、リリからの手紙に目を通します。


「うん、リリは元気にやっている様ですね」


 店は特に問題なく営業しているようです。


「僕の方も特に変わった事は書かれていませんね。ただ予想よりも大事になっている事は心配していますね」

「まぁ、外様のわたし達はあまり口出しする訳には行きませんけど、もう長くは掛からないと思いますよ」


 ギルバートさん達もかなり大きな勢力になって来ているらしいですし、そろそろ何か動きがあると思います。


「ユウ様、アル様」


 釣り糸を見つめるわたし達の背後からコゼットさんが声を掛けて来ました。

 コゼットさんの傍には護衛をしているヴァルさんの姿も有ります。


「ギルバート様から今後の行動に付いて話し合いたいと言付かって参りました。

 領主の屋敷までお越し頂けますか?」

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