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村長とわたし

 シリウスに騎乗したわたしは、ガナの街からアマナ村に向かっています。

 朝、門が開くのと同時に出発したので、そろそろ10時間程になります。

 バードランナーは最高速度では馬に優りますが、持久力では馬の方が上です。なので馬より小まめに休息を取る必要があるのです。


「後少しで着くと思うから、もう少しがんばって下さい」

「グッグッ!」


 シリウスにリップルの実と魔法で出した水を飲ませます。

 シリウスはリップルの実が気に入ったようです。

 街に戻って、まだあの行商人さんが居たら買い溜めをしましょう。

  所で召喚していない時、シリウスは何処に居るのでしょうか?

 その内調べられれば良いなと思います。


 シリウスにゴハンをあげた後、わたしもお昼を食べます。

 今日は、ロック鳥のさえずり亭でトムさんに作って貰ったサンドイッチと屋台で買った果実水です。

  サンドイッチは特製のタレに漬け込んで焼いた一角ウサギの胸肉とシャキシャキしたレタスの様な野菜が挟まれていてとても美味しいです。


  依頼で宿を留守にするけど、宿代は支払うので部屋はキープして置いて欲しい、と頼むとお弁当をサービスしてくれたのです。

 お弁当と言う概念はこの世界でも一般的です。

  その昔、この世界の流通に革命をもたらした人物が考案したそうです。

  トムさんによると、その人物は綺麗にする事で、疫病から身を守ると言う衛生の概念を人々に説き、水洗トイレや水魔法を使った浄水施設などを発明し、世界に広めた偉人だと言っていました。

  まず間違いなく転移者です。しかし、神様はわたしを転移させる時、「新しく始める趣味」みたいな事を言っていた気がします。

  何故わたしが転移する前に、多くの転移者がいるのでしょうか?

 異世界転移が流行っていると言っていましたから別の神様に転移させられた人なのかもしれません。


 食事が終わったので世界についての考察を中断して先を目指します。

 なんだか哲学的な気分です。

 神は死んだ。………なんちゃって。


  更にシリウスと走る事3時間程、ようやく村が見えて来ました。

 村は簡素な木製の塀に囲まれていて、門の前に使い古された革鎧を着た門番が立っています。


「こんにちは。この村に出たマーダーハニーの討伐依頼を受けました。Dランク冒険者のユウです」

「え、君が冒険者?

 悪いけどギルドカードを見せて貰えるかい?」


  まぁ、これくらいは予想していました。

 いや、予想より大分優しい対応です。

  門前払いも有るかと思っていました。


「確かに確認した。村長の所に案内するから付いてきてくれ」


 なんとかトラブルは回避出来たようです。

  門番さんはわたしを村の1番奥の他の家より少し大きい家に案内してくれました。

  村長さんの家が他の家より大きいのは、こう言った小さな村では旅人などを泊める宿屋代わりだったり、村の集会所になっていたりするからです。


「村長、マーダーハニーの討伐依頼を受けてくれた冒険者が来てくれました」

「なに、本当か?」


  村長と言うのでてっきり杖をついた老人が出て来るかと思っていましたがわたしを迎えたのは30後半くらいのおじさんでした。


「君が依頼を受けてくれた冒険者かい?」


 目を丸くする村長さんにギルドカードを見せて納得させます。


「正直、報酬が少な過ぎると言うのは分かっていたからね。

 まさか受けて貰えるとは思わなかったよ。

 今日はもう暗くなるから私の家に泊まると良い。ラナ!ラナ!」

「は~い」

「冒険者さんに部屋を用意してあげなさい」

「はい。わたしは村長の娘のラナです。よろしくね」


 村長の家の奥から17歳くらいの女の子が出て来ました。村長さんの娘さんだそうです。


「わたしはユウと言います。こちらこそお世話になります」


 村長さんのお言葉に甘えて、今日は休ませて貰う事にします。

 その日、わたしはラナさんが作ってくれた夕食を頂きました。


「たいした物は用意出来ませんでしたが遠慮なく召し上がって下さい」

「ありがとうございます。頂きます」


 ラナさんの料理は素朴ですがとても美味しかったです。

 それを伝えると。


「えへへ、ありがとう。おかあさんに教えて貰ったんですよ。

 おかあさんが元気ならもっと美味しい物が出せたんだけど……」

「体調を崩されているのですか?」


 実は家の奥に1人誰かが居るのは気配で分かっていました。


「実は妻は野草を採っている時にマーダーハニーに刺されてしまいまして、今は寝込んでいるのです」

「そうですか、良かったらわたしが解毒薬を調合しますよ。

 わたし、薬師なので」


「え、本当?

 お母さんの薬を作ってくれるの?」

「はい。この村に着くまでに少し採取した薬草が有りますから直ぐに調合しますよ」

「しかし、ユウさん。薬師に調合を頼めるほど我々には余裕はないのです」

「今回はお代は良いですよ。魔法薬ではなく普通の薬ですし、一宿一飯のおれいです」

「本当によろしいなら、どうか妻を見てやって下さい」


 食後、わたしは村長さんの奥さんが休んでる部屋に行き解毒薬を調合して飲ませました。

 これで明日には動けるくらいまで回復するはずです。

 わたしも明日の討伐に向けて眠るとしましょう。


 お休みなさい。

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