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薬師のユウさん、大斧担いで自由に生きる  作者: はぐれメタボ
第二章《暗躍する魔族》
269/322

◆ユウさん覚悟しておく

随分と遅くなり申し訳有りません。


(`・ω・´){誤字報告ありがとうございます。)

 取り敢えずわたし達は場所を移す事にしました。

 そろそろ野営の用意をしなければならない時間です。


 街道に整備されている野営地を向かい、夕食を用意しながら、ポツリ、ポツリとランスロットさんの話を聞きました。


 重傷を負い激流に飲まれた彼は、瀕死で倒れているところを村人に助けられたそうです。


 そして今、焚き火を囲んで腰を下ろしたわたし達は、夕食を食べながら彼の話を聞いている所です。


「記憶が?」

「ああ、村で目を覚ました時、俺は何もかもを忘れてしまっていたんだ。

 だが村人達は素性も分からない余所者の俺に随分と良くしてくれた。

 そうして村で過ごす内に、俺を助けてくれた女性と恋仲になった。

 だが、そろそろ結婚をって頃に俺を記憶を取り戻したんだ」


 一旦、話を区切ったランスロットさんは程よく火の通った串焼きを口に運び、水で流し込んでから続きを話し始めました。


「俺は全てを思い出した。

 自分の生まれも、盗賊に組していた事もな」


 ランスロットさんは自嘲気味に口角を上げました。


「愕然としたよ。

 自分が平民をどう扱っていたのかを、盗賊として犯した罪を、ある日突然思い出したんだ」


 食べ終えた串を火の中に放り込み、再びランスロットさんは話を続けます。


「俺は彼女に全てを話して村を出て行こうとした。

 だが、彼女は俺を引き止めてくれた。

『それでも一緒にいて欲しい』『罪を償えと言う人が現れたら自分が一緒に償う』と言ってくれたんだ。

 俺は救われた気がした……虫の良い話しだろ?」

「そうですね」

「ゆ、ユウ先生……」

「ユウ様、今良いところですから……」


 アルさんとコゼットさんからクレームが入りました。


 いやいやいや、なんか良い話風に聞こえますが、別に良い話では無いですよ?

 全て自業自得、本人も言っている様に虫の良い話なのです。


 これはアレですね。 

 不良がちょっと良い事をすると凄く良い奴に見えるアレです。

 わたしは騙されませんよ。


「アルベルト殿、コゼット嬢、漆黒の言う通りだぞ。ただの屑の話だ。

 俺は同情される様な人間じゃない。

 話を戻すが、結局俺は村に残り彼女と結婚した。

 しかし、そんな生活も長くは永くは続がなかった…………魔族の襲撃を受けたんだ」

「魔族⁉︎」

「王国内の村がですか?」

「ああ、国やギルドの上層部は知っているだろうが、おそらく箝口令が布かれているんだろう」

「何故箝口令を?」

「本当かどうかは解らないが、魔族の目的はどこかの村に匿われていた勇者を始末する事だったらしい。

 俺の村は通り掛かりに気まぐれで襲ったそうだ。

 村人は魔族を率いていた魔王コルダールの邪眼によって全員が石にされた」

「石に……殺された訳ではないのですか?」

「ああ、奴は妻を逃すために剣を取っていた俺を痛めつけた後、俺の目の前で妻を石に変えた。

 そして俺に言ったんだ。

『自分を殺せば呪いが解けるぞ』ってな」


 不可解ですね。

 ランスロットさんを含め目撃者は全て殺す方が理にかなっているはずです。

 今まで黙って話を聞いていたヴァルもそう疑問に感じたのでしょう。


「何故そんな事を?」


 短く尋ねました。


「本当の所は分からない。

 だが、奴は遊びだと言っていた。

 深い憎悪と僅かな希望を持って挑んでくる復讐者を嘲笑いながら返り討ちにするのが最高に楽しいらしい」

「歪んでいるな」


 ヴァルさんは言葉少なに評しました。


 1人、石像の村に取り残された瀕死のランスロットさんは、たまたま訪れた旅人に助けられ、実力者だったその旅人に師事し、現在の力を手に入れ、石化の呪いを解くべく旅に出たそうです。


 少し腑に落ちない点も有りますが、実力者には秘密主義な者も多いので深く追求する事は有りませんでした。





 わたし達一行は、ランスロットさんの身の上話を聞き終えた後、早めに休む事になりました。


 初めにわたしが火の番をしていると背後から足音が聞こえてきます。


「交代の時間ですか?」

「ああ」


 尋ねるとヴァルさんは言葉を返しながらわたしの隣に腰を下ろしました。


「ユウ、あの男……大丈夫なのか?」

「…………少なくとも嘘を吐いている様には見えませんでしたよ」

「そうじゃない。分かっているだろ?」

「…………そうですね。危ういです」

「ああ、奴の実力は少なく見てもAランク冒険者相当……一朝一夕で身につく物ではない」

「詳しくは教えてくれませんでしたけど『旅人』とやらはかなり無茶な方法を使ったのでしょうね。あの髪もその影響だと思います」


 ランスロットさんは押し殺しているつもりだった様ですが、話している最中でも度々かなりの殺気が漏れていました。

 原因は魔王への怨みか……それとも『旅人』が何かしたのか……。


「理由はさておき、今現在の奴は何かの拍子に箍が外れ、周囲の人間を無差別に殺して回る殺戮者になってもおかしく無い」


 ランスロットさんはそう言うギリギリのラインの上に立っている状態……ヴァルさんはそう言いたい様です。


 まぁ、取り敢えずは近くに置いて様子を見るとしましょう。

 もし、ダメな様なら……。


「もし、ダメな様なら……今度こそ、わたしが首を落とすとしましょう」


 それを覚悟する。

 それくらいは、あの時殺し損ねたわたしの責任なのでしょう。


「…………そうか。どうやら余計な気を回してしまった様だな」

「いえいえ、ありがとうございます。

 では、わたしも休ませて貰いますね」

「ああ」


 わたしはヴァルさんと交代して毛布に包まりました。


 街についたら市場で精神安定剤の類いの材料を探してみましょうかね?

_:(´ཀ`」 ∠):

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新をよろしくお願い致します。
[気になる点] ただのクズがちょっと目を離した間に達人のA級くらすになる? 地道な冒険者を馬鹿にしてますか? 間引くには物語に入ってきましたし、今更クズに感情移入できませんし、どう殺しますか?
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