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薬師のユウさん、大斧担いで自由に生きる  作者: はぐれメタボ
第二章《暗躍する魔族》
263/322

◆ユウさん、デバガメる気分

本日2話目です。

(`・ω・´)

前話を未読の方はお手数ですがお戻り下さい。

「駄目だ」

「何故ですか父上!」

「言葉にしなければ分からない訳ではないだろう?」

「それは…………ですがっ……」


 わたしの前でフレイド様とアルさんが睨み合っています。

 何故こんな事に……。



 雪豹族の女の子の喉を治す薬を調合して辺境伯邸に届けた2日後の事です。


 アルさんに来て欲しいと頼まれて辺境伯邸に赴いたわたしなのですが、何故かフレイド様とアルさんの言い争いを見せられているのです。


 私の右手側にはアルさんと雪豹族のコゼットさん。

 左手側にはフレイド様とミッシェル様が座り、テーブルを挟んで向かい合っています。


 何故かお誕生日席に配置されたわたしを挟んだ親子は熱い火花を散らし、コゼットさんはアルさんの隣でオロオロ、ミッシェル様はフレイド様の隣でアラアラしています。


「確かにコゼット嬢の身に起こった不幸には同情の念を禁じ得ない。

 私も出来る事なら支援したい」

「ならっ!」

「しかし!事は他国の権力闘争だ。

 無実とは言え、国家への反逆の咎で幽閉されている彼女のご家族を救おうと言うなら、必ずゼラブル王国と対立する事になる。

 お前はミルミット王国の貴族だ。

 そうなれば事は外交問題に発展するだろう。

 アルベルト。我々貴族には国を、民を守る義務がある。

 一時の感情でそれらを危険に晒す事は出来ない」

「………………」

「アルベルト様…………」


 ピシャリと言い切ったフレイド様に対してアルさんは奥歯を噛み締めて俯いてしまいました。


 確かにフレイド様の言葉は正しいでしょう。

 民の血税で生きている貴族は民を守る義務がある。

 当然の事です。

 まぁ、アルさんの気持ちも分かりますけどね。


「…………なら……なら、僕が貴族でなくなればゼラブル王国に行く事を認めて頂けますか?」

「アルベルト様⁉︎いけません、そんな事……」

「父上!」


 驚くコゼットさんを他所にアルさんはフレイド様に視線を注ぎます。


「アルベルト……そんな屁理屈が通ると思っているのか?」

「……思っていません。僕が今日まで生きてこれたのは民のお陰です。

 その僕が貴族としての義務を投げ出すのは民への裏切りでしょう。

 ですがそれでも、例え裏切り者と罵られたとしても、僕は彼女を助けたいと思っています」


 う〜む、アルさんはもっと飄々としたタイプだと思っていたのですが、意外と熱いですね。

 と言うか、これはアレですか?

 アレなんですか?

 こう……ラブ的な感じなんでしょうか?

 アルさんに婚約者だとかの話は聞いた事が有りませんし……なんだか面白くなって来ました。


「貴方の決意は分かりました」


「ミッシェル」

「母上」


 アルさんの貴族やめる発言に渋い顔をして黙り込んでいたフレイド様の代わりに言葉を発したのはミッシェル様でした。


 ミッシェル様はニコニコした顔のまま、フレイド様を宥める様に背中をさすっています。


「フレイド様、アルの決意は硬い様です。

 認めてあげても良いのでは有りませんか?」

「しかし、貴族として……」

「あら、でも今のアルの台詞は昔のフレイド様のお言葉とそっくりだったでは有りませんか?」

「なっ!」


 お?

 ミッシェル様がなんだか面白い事を言いました。


「小人族の有力者の娘とは言え、貴族でもないわたしの為に随分と無茶をしてくれたでは有りませんか。

『ミッシェルと共に居られないのなら貴族などクソ食らえだ!』と言って義父様と大喧嘩を……」

「ミ、ミッシェル!何を⁉︎

 ユ、ユウ殿も居るのだぞ!」

「ふふふ、懐かしいですわ」


 おお!

 色恋沙汰の熱量高めなのは親譲りでしたか。

 なんだか恋愛物の映画を観ている気分です。

 嫌いでは有りませんよ?


「……っ、分かった。認めよう」

「本当ですか父上⁉︎」

「ああ、だが条件がある。

 まず、貴族の身分を隠す事。

 そして護衛としてユウ殿を雇う事」

「はい、ユウ先生にはゼラブル王国への移動の件もあり、お願いしようと思っていました。

 その為、今日この場に来て貰ったのです」

「ああ、わかっている。

 ただしユウ殿への報酬は全額自分で支払う事」

「……分かりました」


 アルさんは立ち上がるとわたしの方を向き深く頭を下げました。

 コゼットさんも同じく頭を下げます。


「ユウ先生、Aランク冒険者への報酬を僕個人が直ぐに用意する事は出来ません。

 しかし、必ずお支払いします。

 どうか力を貸して頂けないでしょうか」

「ユウ殿、別に断ってやっても……」

「良いですよ」


 小声でそっと囁くフレイド様の言葉を聞かなかったフリをして了承を告げます。


「本当ですか⁉︎」

「はい、出世払いという事で」

「ありがとうございます!」

「あ、あの、ありがとうございます」


 アルさんとコゼットさんは2人して感謝を告げました。

 視界の端ではフレイド様が溜息を吐き出し、ミッシェル様がニコニコしながらフレイド様の頭を撫でていました。


 ふむ。

 これでアルさんの愛の大冒険が確定しました。

『貴族の地位を捨ててでも愛する人の為に』

 うん、面白くなって来ましたね。

 結末如何では誰かに頼んで舞台化して貰いましょうか?


 他国のドロドロした権力闘争にはあまり関わりたく有りませんが、まぁ最悪2人を連れて逃げ出す事くらいは出来るでしょうから……大丈夫ですよね。

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[一言] 特等席へのチケットが取れてやん!やるなー
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