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薬師のユウさん、大斧担いで自由に生きる  作者: はぐれメタボ
第二章《暗躍する魔族》
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◆盗賊の抵抗

 

 わたしが盗賊の飛空船に接近すると、甲板から数発の魔法が放たれました。


「オリオン」

「キュッ!」


 オリオンはスピードを落とす事なく【ファイアーボール】を躱し、グングンと飛空船に接近します。


 それにしても飛空船を保有し、複数の魔法使いを抱えた盗賊団ですか。

 頭目の懸賞金も金貨650枚と高額ですし、かなりの規模と戦力を持っているようですね。


「よっと!」


 そうこうしている内に甲板に到着です。


 甲板の中央に降り立ったわたしを取り囲む様に盗賊達が距離を開けて武器を手にしています。


「たくっ……ついてねぇ、なんてもんじゃねぇな。

 折角の大口の取引の帰りだってのに『漆黒』に遭遇するなんてよぉ」


 苦虫を噛み潰したかの様な顔でそう吐き捨てたのは例の賞金首です。


「お前らは退がってろ!高ランク冒険者が相手じゃ雑魚が何人居ても意味はねぇ」


 頭目は剣を抜きながら前に出ると、配下を退がらせ、1人の男を呼びました。


「ヴァルジャン!来い!

 命令だ『刺し違えてでもを殺せ』」


 ヴァルジャンと呼ばれた男は大柄で筋肉質ですがよく絞られた身体をしています。


 狼人族らしい彼は、ボロボロのマントを羽織り無精髭に覆われた顔に浮かべた嫌悪の感情を隠そうともしていませんでした。


 ヴァルジャンは頭目に射殺さんばかりの殺気を込めた視線を向けながら頭目の横に並び立つと、その大きな身の丈に身合う大剣を抜き放ちます。


「…………戦闘奴隷ですか」

「…………」


 ヴァルジャンは首に嵌められた隷属の首輪に視線をやったわたしの言葉に答える事は有りませんでした。

 おそらく自由な発言すら禁じられているのでしょう。


 わたしが背中のピリオドに手をかけた瞬間、ヴァルジャンの姿が掻き消えます。


「⁉︎」


 咄嗟に身を引いたわたしを頭上から振り下ろされた大剣が掠めました。


 空を切ったヴァルジャンの大剣は甲板に叩きつけられる寸前でピタリと止まり、跳ね上げる様に追い討ちを掛けます。


「【鱗盾】」


 わたしの眼前に作り出した凝縮して魔力で作られた盾はヴァルジャンの大剣を受け止めましたが、一瞬の間の後に砕け散ってしまいます。


 しかし、そのわずかな時間で距離を空け、ピリオドに手を伸ばしたわたしですが、視界の端に飛来するナイフを捉え、身を投げ出す様に回避に切り替えざるを得ませんでした。


「おいおい、今のを避けんのかよ。

 完璧に決まるタイミングだろぉが」


 ため息を吐く様な口調での言葉に反して、わたしの死角を突くように鋭く踏み込み、武器を手に取る隙を与えない様に連続で突きを繰り出す所を見ると、頭目もその懸賞金に納得する手練れのようです。


「このっ!」


 2枚の【光鱗】を重ねて拳を放ちます。


 ガッ!

「危ねぇな、素手でもこれかよ」


 わたしの拳は横から差し込まれた大剣の腹に阻まれ、頭目には届きません。

 それでもヴァルジャンが手にした大剣には大きなヒビが入り、そう長くは保ちそうに有りません。


「ちっ!おい!」


 頭目が声を掛けると、わたしを囲んでいた弓持ちの配下が一斉に矢を射って来ました。


「オリオン!」

「ギュ!」


 わたしに応えて上空に待機させていたオリオンが急降下し、飛空船の上で大きく羽ばたきました。


 その翼から生み出された突風で矢はあらぬ方向へと飛んで行き、更にオリオンのサンダーブレスで盗賊の配下の一部が黒コゲになります。


「オリオン、あまり飛空船に傷を付けないで下さいね」

「キュー」


 折角の船ですからね。

 勿論頂くつもりです。

 わたしにはオリオンが居ますからフレイド様にでも売り付けようかと思います。


 さて、オリオンの乱入で騒然とした甲板ですが、雑魚(頭目談)はともかく、頭目とヴァルジャンには隙らしい隙は有りませんでした。


 ですがオリオンがくれた時間のお陰で現在わたしの手にはピリオドが握られています。


 漆黒に輝く刃と柄に金と銀、そして赤の線が走る大斧を構えたわたしは、甲板を蹴りつける様に走り出すのでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] ピリオドって名前がかっこいいね。終わりとか厨二病に火がつくよ
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