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薬師のユウさん、大斧担いで自由に生きる  作者: はぐれメタボ
第二章《暗躍する魔族》
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◆支店

 店番をリリに任せ、調合室で作り置き用の薬を調合している時でした。


「師匠、師匠にお客さんです」

「お客さんですか?」


 私はやりかけの調薬を手短に片付けてお店に出ました。


「あ、ミーナさん!」


 お客さんと言うのはガナの街で最近はお菓子屋として有名になって来た宿屋《ロック鳥のさえずり亭》の娘さんでした。


「こんにちはユウさん、ギルドでここだって聞いて来たんです」

「そうでしたか。それでどうしてガスタに?

 わたしを訪ねて来たって事は誰かが病気にでもなったのですか?」

「いえいえ。用事があってガスタに来たのでユウさんも挨拶を、と思いまして」

「そうでしたか」


 わたしがミーナさんを応接テーブルに案内するとリリがお茶を出してくれました。


 最近作った薬草茶です。

 結構売れてます。


「それでどんな用事だったんですか?」


 手紙や言伝ではなくわざわざミーナさんがやって来たと言う事はそれなりに重要な事なんでしょう。


「実はユウさんに教わったレシピのおかげでウチの宿はとても繁盛してまして、そこでこのガスタの街にお菓子屋として支店を出す事になったんです。

 それで、私が店長兼料理人を任される事になって、それで店舗とかを決めるためにこうしてガスタの街にやって来たんです」

「おお!それは良いですね」


 この街に支店を出してくれればいつでもお菓子を買う事が出来ます。


「もう店舗は決めたのですか?」

「いえ、さっき着いたばかりでして」


 どうやらまだの様ですね。


「では、わたしが商業ギルドに案内しますよ」

「本当ですか?

 それはとても心強いです」

「リリ、少し商業ギルドに行って来ます」

「はい、行ってらっしゃい」


 リリに見送られ、わたしとミーナさんはガストの街の商業ギルドに向かいました。




「おや、ユウ様。お久しぶりです」

「こんにちは、メイさん」

「本日はどう言ったご用件でしょうか?」

「実はこちらのミーナさんがこの街で新しくお菓子屋さんを開きたいそうなのです。

 その為の店舗や道具などの相談に乗って欲しいのです」

「お菓子屋……ですか」


 メイさんは値踏みする様な視線でミーナさんを舐め回す様に見つめます。

 もし、メイさんが男だったら通報案件でした。


「彼女はガナの街の《ロック鳥のさえずり亭》の娘さんですよ」

「おお、あの最近話題のお店ですか。

 成る程、なら問題はありません。

 店舗に関する希望などは有りますか?」


 流石、メイさんはロック鳥のさえずり亭を知っていた様ですね。


 メイさんとミーナさんは細かい話を詰めて行きます。


 その後、何軒か見て回り、わたしのお店に近い場所に小さめですが良さげな店舗を見つけました。

 ミーナさんはここに決めた様です。


「では、土地代と店舗の代金でこのくらいでいかがでしょう?」


 商業ギルドの応接室に戻り、契約の交渉が始まります。


 わたしはメイさんがミーナさんに見せた契約書をスルリと抜き取ると、自分のペンで値段を書き換えます。


「このくらいではないですか?」

「いやいや、流石にそれは……せめてこのくらいですね」


 メイさんはわたしが書き換えた数字に線を引き、更に新しい値段を書き込みました。


「いいえ、このくらいは行ける筈です」


 わたしはメイさんの数字を塗り潰し新しい値段を書き込みます。


「う~ん、いくらユウ様のご紹介でもこの物件でここまでの割引は……」


 もう一押しです!


「ところでメイさん、わたしがお店を出す時、格安で王都まで届け物をしましたよね」

「そ、そうですね」

「結構な量が有りましたから商業ギルドとしてはかなり利益が出たのではないですか?

 それにメイさん…………随分と儲けたのでは?」


 常に真顔を崩さず冷静なメイさんのこめかみから汗がながれます。


 商業ギルドの職員は皆、商人です。


 商業ギルドの仕事以外にも自分の商売を持っている人も多く居ます。


 そして、わたしはあの時の荷物の中にメイさんの商会の荷物がさり気なく混ざっていた事を知っているのです。


 メイさんの名誉の為に言いますが、別に違法では有りませんよ?

 ただ、わたしの弱味に付け込んだと取れなくもない事柄です。


「わ、分かりました。このお値段で構いません」


 ふふふ……勝った。

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