◆日常への帰還
お久しぶりです。
_(┐「ε:)_
更新が遅くなり申し訳有りません。
「では、魔族はすでに水のオーブと風のオーブを手に入れていると言う事ですか」
アルさんの言葉に少し補足を入れます。
「はい、あくまでもわたしが知っている限りですが……オーブが有るのが人間の領域だけとは限りません、もともと魔族の領域にもオーブが有るかも知れませんし、わたしが知らない内に奪われたオーブも有るかも知れません」
「確かに…………報告ご苦労だった。
この件は私から国王陛下にお伝えしておこう」
「お願いします。フレイド様、アルさん」
わたしはユーリア様とサチ様の様子を見た後、フレイド様とアルさんにヤナバル王国での出来事を報告しました。
後のことはフレイド様にお任せです。
「では、そろそろわたしはお暇しますね」
「ああ、わざわざ済まなかったな。
今度は夕食でも食べに来てくれ、弟子も一緒に」
「はい、ありがとうございます。
ミッシェル様とユーリア様にお伝え下さい」
わたしは辺境伯邸から出ると自分の店に向けて歩き始めました。
大通りから外れ、裏道に入って数分歩くとわたしのお店である《雷鳥の止まり木》に帰って来ました。
昨日は帰ってすぐ休んでしまいましたし、今日は朝から辺境伯家に出向いていた。
しばらくは店でゆっくりしたいですね。
「ただいま帰りました~」
「あ、師匠!お帰りなさい」
「おうユウ、帰ったか」
わたしがお店に入るとカウンターに座ったリリに対面する様にジャギさんが立っていました。
「ジャギさん、お久し振りですね」
「ああ、久し振りだな」
「如何されたのですか?
ポーションなら備蓄分が有るはずですが?」
「いや、今回は薬の調合を依頼したいんだ」
おや、珍しいですね。
ジャギさん程の凄腕なら大抵の市販薬は商業ギルドで購入できるでしょうし、そもそも彼は解毒の魔法を使える筈です。
わざわざ、わたしの帰りを待っていたと言うことは難しい薬なのかも知れません。
「実はガナの街の近くの村でポイズンアントが大量発生したらしくてな。
その討伐依頼を受けたんだ。
俺だけなら問題ないんだが、今回は偶に面倒をみている奴等を連れて行くからな。
Dランクに上がったばかりの奴等だし、村人にもポイズンアントの毒を受けている者も居るかも知れねぇ。
ポイズンアントはこの辺りにはあまり出ないから商業ギルドにも解毒薬の在庫が少なくてな、それで調合を頼みに来たんだ」
「なるほど」
おそらく彼はその面倒を見ている後輩に薬を用意しておけとか言ってないのでしょうね。
でもそれは意地悪では有りません。
相手がポイズンアントだとわかっているのだから薬を準備しておくのは当然です。
もし後輩が毒を受けたら薬を渡し、そう教えるつもりなのでしょう。
それに村人の薬を用意するのは依頼の範疇外ですが、相変わらず面倒見が良い様です。
「わかりました。
明日までに調合しておきます」
「よろしく頼むぜ」
ジャギさんを見送ったあと、わたしはリリに話しかけます。
「ではリリ、ポイズンアントの解毒剤の調合の準備をしましょう」
「はい」
わたしとリリは調合室で依頼の薬を作り始めるのでした。
「いらっしゃいませ」
ドアベルを鳴らし1人の老婆がお店にやって来ました。
「ディアナお婆ちゃん、腰の調子は如何ですか?」
「あらユウちゃん。
前に調合して貰った湿布薬のおかげで最近、調子が良いんだよ」
「それは良かったです。
今日は何か入り用ですか?」
「ああ、また湿布薬の追加と手荒れ用の軟膏を貰えるかい?」
「はい、準備しますので座って待っていて下さい」
わたしは棚から軟膏と湿布薬を取り出しディアナお婆ちゃんから受け取った籠の中に入れます。
するともう1度ドアベルの音が聞こえました。
「ただいまー」
「おかえり、リリちゃん」
「あ、ディアナお婆ちゃん、いらっしゃいませ」
「おかえりなさい、リリ」
「はい、ただいまです」
お使いから戻ったリリから籠を受け取ります。
中身は空です。
リリには孤児院に常備薬を届けに行って貰っていました。
「はい、どうぞ」
リリから受け取った籠はカウンターに置き、ディアナお婆ちゃんに薬を入れた籠を手渡します。
「ありがとうね」
「いえいえ、全部で小銀貨1枚と銅貨5です」
「はい、じゃあこれね」
ディアナお婆ちゃんから小銀貨と銅貨を丁度受け取りました。
「ありがとうございます」
お店の外までディアナお婆ちゃんを見送り、またカウンターに戻ります。
もう少ししたらリリと風切羽でお昼を食べましょう。
今日は午後からはリリに蒸留器を使った精油の取り方を教えましょうか?
わたしは、この後の予定を立てつつお昼まで店番を続けるのでした。




