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薬師のユウさん、大斧担いで自由に生きる  作者: はぐれメタボ
第二章《暗躍する魔族》
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◆報告会

「なるほど」


 わたしの話を聞き終えたフレイド様は、『ふぅー』と息を吐き紅茶を口にします。


「しかし、信じられませんね。

 ユウ先生が一方的に負けるなんて……」

「アルさん、世の中にはわたしより強い人なんて沢山居ますよ」


 アルさんに一言釘を刺しておきます。


「冒険者ギルドとしてはどう見る?」


 フレイド様がギルドマスターのフューイさんに見解を求めます。

 フューイさん、ギルドマスターになりました。

 昇進した、と言うか押し付けられたと言うのが正しいです。


 リゼさんは少し前にフラリと旅に出てしまったのです。

 フューイさんが言うにはリゼさんは元々、いつでも自由に辞められると言う条件でギルドマスターをやっていたそうですから仕方ないですね。


「そうですね。

 魔族の目的はリュウガ王国に対する破壊工作ではなく『水のオーブ』でした。

 ならば、似た様なアイテムが狙われる可能性も十分にあります。

 そして、膨大な魔力を秘めたオーブを狙ったと言うことは、その魔力を何かに使うつもりなのでしょう」

「何か、とは?」


 わたしの質問にフューイさんは軽く首を振りながら「分かりません」と答え、少しの沈黙の後、最悪の予想を口に出しました。


「……………邪神の復活…………とか……」

「「……………………」」

「それだけは絶対防がねばならん。

 各国に連絡を入れ、オーブやそれに準じるアイテムを探し守らなければならないな」


 フレイド様が強く宣言しました。


「ユウ殿、この件は王都には?」

「シアさん……シンシア・フォン・レブリック様が伝えているはずです」

「そうか……わたしも近いうちに王都に赴くとしよう」


 フレイド様の話が途切れた所でフューイさんが独り言の様に口を開く。


「しかし、魔王リセルシアですか。聞かない名前ですね」

「まだ少女でしたから最近魔王になったのではないのですか?」


 わたしの意見はフレイド様によって否定されます。


「いや、呪い使いのコルダールや魔導王シャルト、それに武人グレーズと言った有名所程ではないが、リセルシアという名も聞いた事がある」

「20年前から少女のままなんですか?」

「いや、私も自身が見たわけではないが、魔王リセルシアは二本の剣を手にした20歳くらいの女剣士だと聞いた。

 もしかしたら魔王リセルシアは世襲制なのかも知らないな」

「二代目……と言うことですか」

「何代目かは、分からんがな」

「兎に角、この街は魔境に面していますからね。

 特に警戒を強くする必要があるでしょう」


 こうして、数時間続いた話し合いは、フューイさんがそう締めくくりました。





「はぁん、そんで手も足もでずボコボコにされたって事か?」

「まぁ、そう言えなくもないですね」


 わたしは雑談まじりにリュミナスさんに頼まれていたポーションを手渡します。


「ユウも人間だったって事だな」

「なんですかそれは、わたしは人間ですよ」


 ポーションの代金を受け取り、リュミナスさんを見送ります。


 さて、午後からはギルドで何か依頼でも受けましょうかね?


 私はまだまだ強くなる必要が有ります。

 出来ればAランクの魔物とでも戦いたいところです。


 わたしは、リリに留守を頼み、雷鳥の止まり木を出るのでした。

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