表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/322

襲撃とわたし

 襲撃予定日です。

  現在は前線基地となる拠点を設営しています。

  まぁ、拠点と言っても今回の作戦中使うだけです。

  怪我人を手当てする場所を確保し、水瓶に魔法で水を出しておきましょう。


  今朝のミーティングで決まった配置はリサーナさんが率いるチームが東側、クルツさん率いるチームが西側から同時に攻め込みゴブリンの戦力を東西に分断し、手薄になった北側からアルザックさん達《妖精の耳飾》を《青き翼》が援護して、一気に屋敷のゴブリンキングを討伐すると言う作戦です。


  そして、襲撃の混乱に乗じて女性冒険者を中心に編成された救出班が捕らわれている人達を助けに向かいます。

  この救出班にはティナさんの従魔も同行して、先導する事になっています。

  わたしは拠点で指揮を取るギルドマスターと一緒に怪我人が運ばれて来るまで待機です。


 明け方、空に打ち上がったファイアーボールを合図に東西から冒険者が攻め込みます。

  ゴブリンは完全に不意をつかれたようで混乱しているところを次々と討伐されているそうです。


「報告!東西からの奇襲に成功!ゴブリンは東西に分かれて防戦しています」

「よし!《妖精の耳飾》に30分後に作戦開始だと伝えろ!」

「了解」


  伝令役の身軽な冒険者が第一報を伝えて来ました。まずは奇襲が成功したようですね。


  それから10分程したから次々と怪我人が運ばれて来ました。

 怪我人をアリーさんとティナさんに任せて、わたしは毒を受けた人達を治療していきましょう。


「がぁ……たす……け…」


  あ~彼は麻痺毒ですね。わたしは痺れて動けない冒険者の口に飴状の薬を捻じ込みます。


「!?……ん!!……があぁあ!」


 何やら苦しんでいますが問題有りません。

  麻痺しているから速攻性のあるポーションを飲ませられないのです。

 しかし、この薬は10分程舐めるだけで身体の痺れが治ります。

  値段も安価で効果も高い、素晴らしい薬です。

 味以外は何の問題も有りません、味以外は。


「はい、次の方どうぞ」


 わたしはどんどん治療して行きました。

  時折、逃げてきたゴブリンが現れますが拠点を防衛している冒険者に討ち取られていきます。


  わたしが怪我人の口に薬を捻じ込んでいると、ティナさんの従魔が帰って来ました。

  ティナさんの従魔の足には青い布が巻かれています。

 これは事前に決めていた「救出成功」の印です。

  ティナさんの報告にギルドマスターも安堵します。

  救出班はこのまま助けた女性達を護衛しながらガナの街に帰還する予定です。


「報告!《妖精の耳飾》、《青き翼》戦闘開始しました。現在、屋敷を守るゴブリンジェネラル、ゴブリンナイトと交戦中です」

「ご苦労!戦況に変化が有ったらすぐに知らせろ」

「了解!」


 アルザックさん達が戦闘を始めた様です。

  まぁゴブリンキングはCランク、Bランクパーティのアルザックさん達がそう簡単にやられるとは思いません。

  それにアルザックさんの剣は雷を放つ効果を持つマジックアイテムだそうです。……羨ましいです。

  やはり、マジックアイテムの武器はあこがれますよね。


「誰か!頼む!マークを助けてくれ!」


 グッタリとした冒険者が運ばれて来ました。わたしとアリーさんが駆け寄ります。


「頼む!マークを!」


 仲間の冒険者が涙を流しながら嘆願します。しかしこれはもう……。


「マークはもう死んでいる。済まない。私たちにはもう治せない。……済まない」

「うあぁぁあ!」


 アリーさんがマークさんが既に死んでいる事を告げます。

  やはり、犠牲者無しで終わらせるのは無理でしたか。いえ、そんな事は皆んな分かっています。

  この依頼を受ける事を決めた時点で覚悟していた筈です。

  冒険者は自己責任なのです。


 わたしは治療に戻ります。

 マークさんの仲間の冒険者はマークさんの亡骸に敵討ちを誓って戦場に駆けていきました。

 しばらくして、治療を受けに来る怪我人も少しづつ増えて来たとき、報告がはいりました。


「報告!《妖精の耳飾》が屋敷の前でゴブリンキングと交戦、討伐に成功しました!」

「よし!後は雑魚どもの掃除だ!最後まで気を抜くな!」

「はい!」


 どうやらもう直ぐ終わりそうですね。

 それから20分程経ち、新しくやって来る怪我人も減って来ました。


 わたし達もそろそろ撤収の用意を始めようかと言う空気になった時でした。

 前方の藪から伝令の冒険者が全身から血を流しながら飛び出して来たのです。


「どうした!」


 ギルドマスターが立ち上がり、冒険者に駆け寄ります。


「屋敷から……ゴブリンロードとゴブリンキングが2匹出現、《妖精の耳飾》と《青き翼》は……全滅しました!」

「なんだと!?」


 伝令の冒険者はそれだけ伝えると気を失ってしまいました。


「くそ!最悪だ!ゴブリンロードだと!直ぐに伝令をだせ!撤退だ!ガナの街に籠城して援軍を待つ!」


 ギルドマスターが指示を出している時、わたしの視界に驚くべきものが飛び込んで来ました。


「ギルドマスター、不味いです」

「どうした!」

「わたし達は奇襲を受けています」


 伝令の冒険者が出て来た前方の藪から2匹のゴブリンナイトと2匹のゴブリンキング、そしてアルザックさんの剣を手にしたゴブリンロードが姿を現したのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ